乗り越えた先の景色を求めて! ~スノーボード Team ELUの挑戦~
■暖冬雪不足と能登半島地震
2023年12月、チームは暖冬の中で2023-2024シーズンを迎えていた。雪不足で大会が延期されたり会場が変更される事態も発生。選手たちは積雪を期待しながら2024新年を迎えた。そんな中で発生した能登半島地震。所属選手の中には家の損傷や能登に住む祖父母が被災するなど厳しい環境となった。チームとして何ができるのか。考える日々が始まった。
■スケートパークにも影響
「スケートパークELU(かほく市)」は地震で屋外のボウル表面などにいくつか小さな亀裂が入り一旦使用をストップした。その後、安全確認がとれて使用を再開。現在は屋外・屋内ともに練習環境は維持・継続できている。
■大会出場を決断!
チームは雪不足の中、練習の場を求めて週末は県外遠征する日々。地震もあり練習を続けることすら難しい状況でチームとして何ができるのか? どう行動すべきか? 模索する日々が続いた。
大会出場を断念する気持ちを抱いた時期もあったが、競技者として大会に出場することで応援してくれている家族や仲間に感じてもらえることがあると信じてチームは大会への出場を決めた。
三ツ井代表は「地震後、スケートパークの損傷もある中で選手の被災状況を心配をする日々で大会参加を考える余裕はなかったが、シーズン目標を定めて取り組んできた選手の気持ちを考慮して最終的には大会出場を決断した」と地震発生からの数日間を振り返った。
■第42回全日本スノーボード選手権(中部地区大会)
チームELUは2月11日に長野県で開催された「全日本スノーボード選手権【中部地区大会】」にエントリー。暖冬による練習不足を感じながらも大会に出場した。
【中部地区大会の成績】
・チーム優勝(2年連続)
・大塚菜結 優勝(SX U-15女子)
・三ツ井勇介 準優勝(SXオープン男子)
[SX:スノーボードクロス]
これ以外においてもチームに所属する選手5人が10位以内に入る成果をあげた。
■シーズン目標達成に向けて!
中部地区大会を終え、チームは3月の「第42回 JSBA全日本スノーボード選手権大会[SX]」に向けた強化をスタート。
[JSBA:日本スケートボード協会]
選手は個々に目標を設定してシーズンに臨んでいた。今シーズン、三ツ井代表はアドバイスはするものの、日々のトレーニング内容は選手の自主性に任せることにした。「雪不足や地震など多くの壁はあったが後悔がないように出来ることはすべてやり、たとえどんな結果になろうと受け入れてあきらめずに次につなげることが大切」との考えだ。
選手たちは年間を通してスケートパークELUでスケートボードを使った練習を続けながら、自主的にウエイトトレーニングやランニングなど多様なトレーニングを積んだ。
三ツ井代表自身も全日本選手権大会の結果やシーズンポイントランキングで獲得できる「プロライセンス取得」を目標に置いていた。そして目標達成に必要なトレーニングを日々積み上げて全日本スノーボード選手権大会に挑んだ。
■第42回 JSBA全日本スノーボード選手権大会[SX]
全日本スノーボード選手権大会
迎えた3月1日「第42回 JSBA全日本スノーボード選手権大会[SX]」が開催された。選手はそれぞれの目標達成を目指して大会に挑んだ。
そして「大塚菜結(オオツカ ナユ)選手がSX U-15女子で第3位」に入った。2年連続での全日本選手権の表彰台。本人は優勝を目指した大会だったと思うが3位で2年連続の表彰台は高く評価できる結果だ。そのほか所属する4人の選手が10位以内に入る成果をあげた。
■2023-2024シーズンを終えて
三ツ井代表は「チーム全体として好成績をあげることができた。前年を越える目標を達成できなかった結果もあるが、諦めない限り今後につながる大きな一年になったと思う。雪不足や地震など困難もあったが、そんな時こそ後悔しないよう精一杯やろうというスタンスで前向きに取り組むことができた」と冷静に話してくれた。既に来シーズンを視野に入れている様子が印象的だった。
■プロライセンスを取得!
嬉しい知らせが届いた。全日本選手権を含めた上位3大会のポイントランキング最終結果が発表され、三ツ井代表が「プロライセンス取得基準」を満たした。競技者としても大会に出場してきた三ツ井代表は今シーズンの「SX男子ランキング2位」に入りプロライセンスを獲得。41歳でのプロライセンス取得は快挙。来シーズンはプロスノーボーダーとして活動することになる。チームにとっても来シーズンに向けた励みになる成果だ。
■乗り越えた先の景色・・・
最後に三ツ井代表に聞くと「競技としてのスノーボードは怪我のリスクも高く恐怖心と戦う強いメンタルが求められます。そんな中で目の前の目標を達成して成功体験を積み上げる。これが強い人間を作り上げ、スノーボード以外の場面でも発揮できると考えています。結果や資格は過程の中で付いてくるものでありチームが大切にしているのは人間性を育てることです」と熱く語ってくれた。