クラシルのCTO、譲りました。
このたび2021年9月1日付で、dely CTOを【前VPoE・井上崇嗣さん】に交代しました。突然の発表ではありますが、今回の意思決定の経緯、今後についてnoteに書かせていただこうと思います。
↓Podcastも収録しています!
↓新CTO・井上崇嗣さんのnoteもぜひ!
はじめに
以前、「クラシルのCTO、譲ります」のタイトルでnoteを書きました。少しだけ話題になったので、覚えている方もいるかもしれません。
CTO交代の目的は、一言で言うと以下の2つでした。
・新規事業のコマース事業立ち上げにフルコミットするため
・新CTOにより「データとAI」で戦う企業へのシフトを実現するため
記事を公開してから多くの方にご連絡をいただき、カジュアルなものまで含めると数ヶ月で20人以上と会ってお話させていただきましたが、結果としてはCTO交代には至りませんでした。
そのため、社内的にはCTO交代は一旦先送りにして、技術的な意思決定については私を含め、開発チームの関係者を巻き込み複数人で話し合って決めていく体制を取っていました。
それから2年半経って、冒頭で申し上げた通り、【前VPoE・井上崇嗣さん】さんが2021年9月1日付で新CTOに就任しました。
井上さんとは何者か?
この人が井上さんです!
井上さんは2018年5月、SREとしてdelyに入社してもらいました。当時はクラシルがTVCMを積極的に放送していて、クラシルのユーザー数も爆発的に増えていた時期だったので、とにかくサービスの安定性を高める必要がありました。井上さんには、SREのスペシャリストとしての活躍を大きく期待していました。
井上さんを口説いて入社してもらうのは、相当大変でした。笑
当時のdelyはクラシルの知名度が少しずつ上っていたものの、まだまだ初期のスタートアップで、本当にこの会社に入って良いのか?と心配されることも多いフェーズでした。入社する心理的ハードルは結構高かったと思います。実際井上さんも、内定を出してからしばらく回答を悩んでいるようでした。
ただ、面接をして絶対にこの人を採用したいと思ったので、井上さんの職場があった新宿に何回も通って、とある天ぷら屋さんでdelyのビジョンや今後取り組んでいくチャレンジについて繰り返し繰り返し伝えました。井上さんは当時「なんでこの人何回も新宿に来て、何回も同じ話をするんだろう」と不思議に思っていたようですが。笑
必死に思いを伝えた結果、なんとか入社を決意してくれました。
↓井上さんと何回も行った天ぷら屋さん
その後は、SREとしてだけでなく、エンジニア組織のマネジメント、開発部の部長、VPoEとしてどんどん難易度の高いポジションに就任し、実力を発揮して行ってくれました。
本人は「自分はマネジメントに向いていない」といつも言っていますが、プレイヤーとしての実力の高さ、人の考えをしっかり受け止めて聞く力、意思決定が必要なときははっきり決める力など、私から見ると非常にマネジメント適正は高いと考えています。結果としてこれまで採用した方の中でもトップクラスの活躍を見せてくれています。あの時苦労して新宿に通った甲斐がありました。笑
新CTO就任の理由、今後のチャレンジ
クラシルはアプリをリリースしてから5年半も経っています。これだけの時間が経つと、大小様々な技術的負債が出てくるので、システムやアーキテクチャを刷新する必要が出てきます。井上さん側のnoteから参照すると、具体的には以下のようなプロジェクトです。
・技術的課題への取り組み
・データ基盤の刷新
・クライアント-サーバ間など横断的な箇所に関する技術的な取り決め
・自社基盤開発の検討
・社内ツールの開発や改善をミッションとする組織の検討
・技術トレンドのリサーチ、先行投資
・新規プログラミング言語やフレームワークの取り入れ、インフラのアーキテクチャなど、ライフサイクルの長い箇所に対する技術選定
CTOとして50人以上の開発組織を率いて、これらの技術的課題にチャレンジしていってもらいます。
さらに、クラシルのさらなる非連続な成長を作るため、実は今社内では大規模なプロジェクトを進めています。
クラシルは累計3,000万ダウンロードを超えるアプリに成長し、大量のユーザー行動ログを集められていますが、十分に活用できていない現状があります。具体的には、アプリ内での閲覧、検索、お気に入り等の行動をベースに、趣味趣向にあったパーソナライズをしていきたいのですが、そこにまだ取り組めていません。
これまでは万人受けしやすい「時短」や「節約」などのジャンルを重点的にコンテンツ強化してきました。なぜなら、特定の層にだけ人気のあるジャンルでコンテンツを作ってしまうと、その他大勢の人にはノイズになってしまうからです。
しかし、食の趣味趣向に応じたパーソナライズが可能になれば、一部の人には深く刺さるコンテンツをロングテールに用意することも可能になります。これまでは"ヘッド"の部分しか対応できませんでしたが、ロングテールに対応できるプラットフォームにしていけると考えています。
そのために、データパイプラインを整備して堅牢なデータ基盤を作っていく必要があります。これまでと比較しても、テクノロジーの深い部分までちゃんと見れて方針を示すリーダーが必要になります。
元々SREとして入社して、インフラ周りやデータ周りの技術について高いスペシャリティがある井上さんはその点で適任です。新CTOとして井上さんになってもらった大きな理由の一つがこれです。
さらに、井上さんはエンジニアリングだけではなくて、50人以上の開発部のピープルマネジメントまで請け負っている実績もあります。
仮にスキル的には要件を満たす人を急に連れてきたとしても、結局はチームメンバーからの信頼がないと、難しいプロジェクトの推進はできないと思っています。この人が言うならついて行こうと思える人である必要がある。その点において、井上さんはスキルと信頼の両方を既に得ている最適な人でした。決して技術力だけを見てお願いした訳ではありません。
delyでは役職に付く人には、バリューを体現できていること、私利私欲よりもチームの勝利を優先させられることを求めます。自分のキャリアではなく、イシューに向き合い続けている人が抜擢される文化です。
もっと詳しく知りたい方は、井上さんが書いたnoteもぜひご覧ください。
自分はこれから何をするか?
さて、CTOも交代し、私は完全に新規事業にフォーカスしていくことになります。その話も少し書かせてください。
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クラシルはローンチから5年間でアプリダウンロード数累計3,000万を突破し、順調に成長を続けています。レシピアプリとしては国内最大級、C向けサービス全般で見ても非常に速いスピードで成長していると言えると思います。
私は代表の堀江さんと2014年にdelyを共同創業してから7年間、まさにゼロの状態からクラシルを作ってきました。クラシルをローンチする時は自分しかエンジニアがいなかったこともあり、1人で全てのコードを書いてアプリをリリースし、その後はCTOとしてエンジニアリングやプロダクトマネジメントに尽力してきました。
当然ながら私一人で作ってきたという気は全くなく、いやむしろほとんどの部分は、delyやクラシルの可能性を信じてリスクを取って入社してきてくれたメンバーが作り上げたものだと思っています。ただ、クラシルの"立ち上げ"という点においては、一定の成果を上げられたのではと思います。
一方で、新規事業の立ち上げでは試行錯誤の日々を経験しました。
2018年に、delyとしてレシピ動画事業を超えて更に大きな規模を目指すため、食品EC市場に参入することを発表しました。それからはエンジニアとしてではなく、新規事業を担当するコマース事業部の責任者としてフルコミットしました。
↓2018年当時、食品EC事業参入を発表した際の記事
しかし、発表時点で事業モデルが固まっていた訳ではなかったので、とにかく食品ECというマーケットに参入する最適な方法を模索しました。3年間ありとあらゆる事業モデルを試しては壊しを繰り返し、4回ものピボットを経験しています。
↓とある野菜宅配サービスを準備していたときの様子
事業を作る難しさを改めて認識しました。ことごとく上手く行かないので、自分には事業を作る才能がないのかと思ったこともあります。その一方でレシピ事業の方は順調に伸びていて、そのギャップにも苦しみました。毎回全体会議で上手く行っていない新規事業の進捗を共有しなければならず、非常に悔しい思いをしました。
そのような中でも常に意識していたのは、撤退、ピボット、方針転換を躊躇せず、とにかく素早く意思決定してトライアンドエラーを繰り返すことです。
思い返せば、レシピ動画のクラシル自体もdelyにとって3個目のサービスです。創業の事業は"dely"というフードデリバリー事業、その後はWebメディア事業を運営した後に生まれたのがクラシルです。事業撤退からクラシルを生み出すまでの2年間は、あーでもないこーでもないと数え切れないほどのピボットや撤退を繰り返しました。当時は非常に辛い時期でしたが、結果的にはあの時にとにかく素早くトライアンドエラーを繰り返すことを愚直にやったことでクラシルを生み出せたと思っています。
初心に帰って、「国内外問わない幅広い情報収集」と「一次情報へのアクセス」をとにかく実行しました。
食品ECに関わる情報は、全世界ありとあらゆるものまで調べ尽くし、誰よりも詳しいと自信を持って言える状態にしました。さらに、食品をオンラインで買っている方々へのN1インタビューを累計100件近く実施し、自社サービスに限らずインサイト集めを行いました。リアルな声を聞くことで、ただリサーチするだけでは得られない顧客の生の声、ペインへの解像度を高めていきました。
その過程を経て2020年後半ごろ、今後大きく投資するに値する事業モデルをやっと見つけられました。この事業であれば、世の中を大きく変えるチャレンジができると信じています。
まだステルスで運営しているので詳しくはここに書けないのが残念ですが、日経電子版にて少しだけ取り上げられています。事業の概要は掴めるのではと思います。
去年から一気に注目度が高まった食品ECのマーケット。この巨大マーケットで大胆なチャレンジをしていきます。数年後に「このサービスが無い時代を思い出せない」と言われるような事業を作っていこうと思います。
↓現在ステルス運営中のサービス、ローンチ時の様子
事業の詳細について興味ある方は、Meetyでご連絡ください。私から直接説明させていただきます。
※すべてにご返信できない可能性があります。予めご了承ください。
最後に
今後のdelyのチャレンジに興味ある方はぜひご連絡ください!
「いきなり応募は…」という方!Meetyでお待ちしています!
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