監獄浪人記: 一番厳しい予備校の、一番過酷な寮での1年

割引あり

はじめに

こんにちは、オオタガオです。この名前でインターネットをやるのは、かなり久しぶりになります。

今年度の大学受験シーズンもほぼ終わりに近づいていますが、今も私は北九州予備校が運営する大志寮という寮に収監されています。
後期試験に向けた小論文対策の授業が終わるまでは、もうしばらくこの監獄と呼ばれるヘンテコな寮に残る予定です。

本来であれば「浪人体験記」というのは、現役時の後悔であったり、浪人中の学習方法であったり、使用した教材であったりを、これから浪人生活に突入する若者のために共有する…というのがセオリーでしょう。
しかし、あいにく私は(少なくとも“浪人界隈”と称される界隈の人々に対して)堂々と自慢できるような合格実績を未だ得ていません。
そこでこの記事では、私が1年間を過ごした大志寮でのリアルな生活を公開した上で、果たして「北予備の寮に入る」という選択が正しかったのかどうかを論じていきたいと思います。

ところで、どうしてこんな、本命受験校である国立大学の合格も確定していないような時期に有料記事を公開するのか、疑問に思う人もいるかもしれません。
答えは単純で、サブスクの年会費払いを解除するのを忘れてしまい、昨日の決済で全財産が500円になってしまったからです。

このままでは残り1週間ほどを昼食抜きで過ごさなければならなくなってしまいます。資金に余裕がある方はどうかこの記事を購入して、私にセブンのスティックパンを二袋恵んでください。

なお、この記事の有料部分に記載する内容は、今後YouTubeなどの他媒体で無料公開する可能性があります。購入前に予めご理解ください。

北予備寮での生活

基本的情報

まず、北九州予備校とは何なのかについて軽く説明する必要があるでしょう。
もちろん、事情に詳しい方は読み飛ばしていただいて構いません。

北予備はその名の通り、九州地区の北部を中心に展開している予備校です。九州のみならず、山口や東京にも校舎や寮を展開しています。
「努力は実る」のスローガンが示す通り、校舎内の壁には努力を奨励する内容の格言や大谷翔平のマンダラチャートが貼り散らかされており、時には生徒のモチベーションを高め、時には冷笑対象として生徒のストレス発散に貢献する役割を果たしています。
その一方で、独自ドメインを利用したGoogleアカウントを発行したり、VODシステムを構築したり、AI教材のアタマプラスを導入したり、機能制限をかけたChromebookを6万円強で販売したりと、良くも悪くもGIGAスクール構想に取り組む公立高校のようにデジタル化へ取り組んでいる様子が窺えます。

ここで一点注記しておきたいのは、北予備自体は他予備校と比べて極端に厳しいわけではないということです。
名刺サイズの「出席カード」により授業への出席が管理され、不自然に授業をサボった場合は容赦なく親に連絡が行くようにはなっていますが、その程度です。河合にも駿台にも同様のシステムはあるでしょうし、結局親が子供に対し甘々であれば意味を成しません。

北予備が「監獄」と呼ばれるのには、寮という存在が大きく影響しています。
そして、「監獄性」を期待した上で数ある予備校の中から北予備を選ぶのであれば、寮に入らないという手はないでしょう。

北予備は、一部校舎の徒歩圏内に寮を設けています。
ビジネスホテルを買い上げて改修したり、生徒の収容と指導に特化した設計で1から建築したりと、建物自体の出自はそれぞれ異なります。

  • 他室訪問禁止

  • 門限絶対遵守

  • 夜自習は毎日、休日は午前自習も実施

  • スマホ利用は許可制で夜間は回収

といった、他予備校の寮より数段厳しいルールがどの寮でも共通して制定されているのが最大の特徴です。
特にスマホの利用が強く制限されることから、寮生たちは強制的なデジタルデトックスへと突入し、外界からの情報に飢える「囚人」として周囲から見られることになります。

1日のスケジュール

それぞれの寮により細かな時間は異なりますが、私がいる大志寮での平日用スケジュール(共テ終了後、国公立二次直前期)を参考資料として書き出してみます。

06:00 自習用スペースとして食堂開放
06:45 起床放送、朝食提供開始
(朝食後、徒歩25分程度かけて予備校校舎へ登校)
08:30 ホームルーム
08:55〜12:15 午前中授業2コマ(1コマ90分)
12:15〜12:50 昼休み
12:55〜16:15 午後授業2コマ
(4コマ目が終わった段階で寮生は帰寮可能、残って自習してもOK)
17:00 大浴場開放
17:30 夕食提供開始
18:00 門限
(19:10までにスマホは1階のカウンターへ預ける)
19:10〜22:40 食堂にて一斉夜自習
23:00 消灯放送

どうでしょうか。学生目線からすると明らかに厳しいスケジュールだと言いたくなりますが、おそらく保護者が理想とする「浪人生」像というのはこんなものでしょう。

宅浪していたら確実にニートへと変貌し、予備校に宅通するだけでは確実にサボり魔へと堕天してしまうような浪人生を収容する矯正施設が、大志寮をはじめとする北予備寮なのです。

大志寮はなぜ「一番過酷な寮」なのか

私が現在収監されている大志寮は、数ある北予備寮の中で1,2を争うほど過酷な環境だと言えるでしょう。
大志寮は予備校寮としての役割を果たすために1から設計・建築されたため、必要最低限の居住設備以外はかなりオミットされています。

  • エアコンがなく、ウインドウファンのみである

  • 刑務所並みに部屋が狭い

  • 部屋の内側から鍵をかけられない

  • 断熱・防音性能が終わっている

  • 個室内に浴室、トイレ、水道が存在しない

上記の要素が、大志寮の住環境が過酷たる理由として挙げられます。
ただ、風呂やトイレが共用であることだけは、掃除の手間を省けるという点でメリットと捉えることもできるかもしれません。

いかにして「模範囚」になり損ねたか

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