白いワンピースと半生の棚卸し〜『今日もコレカラ』に寄せて
なかなか捨てられない。思い切って断捨離して、超ミニマムに暮らす。とても憧れるけど、捨てられないタチの人間には、届きそうでつかめない暮らしだ。
捨てられないモノのナンバーワンは洋服だ。
季節ごとに整理して、ボロボロになったものを探し出してなんとか捨てる。ごめんねとありがとうを言って。
何回も季節を共に過ごし、家や暮らし方が変わっても、捨てられずずっとそばにいたのが20代の時に買った(正確に言うと買ってくれた)ワンピース。
白地で金と銀の糸が織り込まれて、グラデーションを描いているのが珍しくて好きだった。
20年前の体型に合わせたものなので、もう着るのも辛い、着ている自分を見るのも辛いものなのだが、どうしても捨てられずずっと私について来てくれていた。
でもとうとう手放そうと決めた。しかし、汗染みがあるし、流行の型でもないので人にあげることもできない。
そうだ。リメイクしよう。
クラッチバッグに作り替えてはどうだろう?
幸いWEBにもいろいろ作り方が載っている。
そんなわけで、このところ夜な夜なワンピースを解体している。
断ち切りバサミでザクザクとやれば、一瞬でバラバラにはなるのだけど、細かく縫い合わされた部分を糸切りバサミやリッパーという手芸器具でちまちまと。できるだけ大好きな生地を傷つけないように。
生地をほどいていると、いろいろなことを思い出す。
・丈が長くて裾を詰めたこと(おかげで超ミニだ。今、着られるわけがない)
・この服で、初めて友達の結婚式に出たこと(なんで白を着ていくんだよ・・・)。
・カーディガンを羽織ってお見合いに行ったこと(不機嫌顔だったから、うまくいかなかった。自業自得)。
そして、この20年の間にたくさん仕事をして来たこともいっぱい思い出した。
26歳でライターとなり、会社に雇われつつも、いろいろな仕事をした。
たくさん取材して記事をいっぱい書いた。撮影のディレクションもした。企画も考えた。キャッチコピーも100本ノックのようにいっぱい書いた。書いた書いた書いた!!!
褒められたこともあるし、感謝もしてもらった気がする。
でも、たくさん怒られたし、怒鳴られた。土下座したこともある。
私って何をしてきたのかな、誰かのためになれているのかな…。
糸をプツプツと切るたびに込み上げてきた。
そして何もできていないんじゃないかなって、少し悲しくもなった。
*
つい、マイナスな方向に考えが行ってしまったのは、わけがある。
この冬、少し厳しいクライアントに出会い、かなりきつめのお叱りを受けたり、胸をえぐるようなお言葉をいただくことがあった。
たった20数年のライター歴では全然だめなのかな、いや歴じゃなくて、私自身があかんのだろうな…。
大抵のことはスルッと流せるのだけど、かなりダメージを受けて、ぐるぐると考え続けて、もともとなかった自信がドンガラガッシャーンと潰れて消えた。
1ヶ月以上経つけど、あの痛みはまだ消えていない。
これからも、私、ライター続けていけるんだろうか。
プツプツ、ザザザッ。糸を切り、布を裂くたびに、考えてしまう。
*
と、落ち込んでいたのだけど、このところ、少しずつ元気が増えている。
『今日もコレカラ』を毎日読んでいるからだ。
ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんが毎朝更新されているエッセイ。
昨年から書いていらっしゃって、できるだけ毎日読んでいるけれど、最近ののテーマはかなりじわじわと栄養剤のように私のココロに効いている。
1日で消えてしまうから、振り返って読んでもらえないのは残念だけど。
ちょっと書き留めている内容を一部。
「辞めるは逃げるじゃない」「自信なんてもともとない」「プリンセスごっこで視界を広げる」「私なんかのメンタルブロック」
一つひとつが面白くて、じわじわ沁みて、泣くことさえある。
エッセイって人を泣かせられるんだなあ。
毎日読んでいたら、少しずつ、ああこんな私でもこれからも書いていっていいんだな。仕事してもいいよなって、やっとまた自分の定位置に戻ってこれた気がするのだ。
*
さとゆみさんは、ライターとしての大先輩であり、4年前に学んだ『上阪徹のブックライター塾』の先輩でもある。素敵な方で、大阪で講演をされるときはできるだけ参加している。
さとゆみさんの『書く仕事がしたい』は秀逸で何度も読みかえした私のバイブル。少しでも書く仕事をしたり憧れたりしている人に寄り添って応援してくれる本だ。
そしてこの春、シリーズ的に出たのが『本を出したい』。
著者になるための本なのだが、これ、ライターの私にもズガンズガンと響いている。
(ちなみに両方の本にサインをいただいている。宝物でありお守りだ)
さとゆみさんの本を読むと、書きたくなる。
だから久しぶりにnoteを書いた。
私もう書けないなって落ち込んでいたけど、書けるやん(涙)。
ワンピースの話からだいぶ飛躍したけど、このところの自分のこと。
ああ、書いてスッキリした。
また明日からも書いて生きていく。
● 『今日もコレカラ』
●『書く仕事がしたい』
●『本を出したい』
ありがとうございます。