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アルーレンの今~モダンホライゾン2を越えて~
こんにちは、otabaです。現在のレガシーはモダンホライゾン2の影響で環境が大きく動いています。既存のデッキが様々な形で変化を余儀なくされており、それはアルーレンも例外ではありません。
今回はいちアルーレンユーザーが、新環境にどのように対応していったのかを書いていきます。
MH2環境に振り回されて
新環境が始まって2週間。環境を定義しているのは次の2枚だ。
現在のレガシーは「敏捷なこそ泥、ラガバン」が、「目くらまし」や「Force of Will」に守られながら1ターン目から登場するのがお約束となっている。一度攻撃を通してしまえばマナ差が付き、より攻撃を防ぐのが難しくなる。また、ライブラリートップを奪う効果で稼ぐアドバンテージもすさまじく、自分のカードで殺される不快感まで与えてくるという現環境の禁止候補筆頭だ。レガシー民は聞きなれないであろう「疾駆」というキーワード能力も噛み合い、ソーサリータイミングで除去できない神出鬼没の怪盗となっている。
環境を定義するもう1枚の禁止候補が「ウルザの物語」である。土地・エンチャントという意味不明なカードタイプにより、カウンターも許さず戦場に出てくる。そこから生まれるトークンのサイズは、専用デッキならば容易に「自然の怒りのタイタン、ウーロ」を越える。それを2体も生成し、最後には1マナ以下のアーティファクトを残して去っていくという最後まで、頭のねじが外れているとしか思えない効果をしている。
これらのカードに、何らかの形で対応できなければ現環境で生き残るのは難しいと言える。「敏捷なこそ泥、ラガバン」が流行っているのは分かり切っているので、まずはUR デルバーに勝てるようになることを第一の目標として設定した。そうして試したのが次の形である。
結論から言うと、このデッキは全く勝てなかった。かなりURデルバーを意識して、メインから対策している形なのだが、対策の仕方が悪かったらしい。押し寄せる1マナクリーチャー軍に、2マナの肉壁を置いて1体1体対処していたのでは間に合うはずもない。軽い除去も有効に見えて、後半の探査生物には何もできずに蹂躙されるという無残な結果に終わった。
また、除去を増量した結果、本来勝てるはずの対ミッドレンジやコントロール戦で手札に腐り、負けるというのも痛かった。
忍耐買いたくないけど買うかー
— otb (@otb33291187) June 6, 2021
UR相手に使ってくださいと言わんばかりの性能だし…
既存の形ではどうこねくり回しても勝てなかったので、新カードの力を借りることを決断。ショーケースチャレンジ直前の「忍耐」が最も高いタイミングで、歯を食いしばりながら4枚購入に踏み切った。プレイヤーにも忍耐を強いる名前に恥じないカードである。
ついでに1枚だけ試して微妙だった「飢餓の潮流、グリスト」もダメ元で4枚揃えて試してみることに。ちなみに1枚だけ試していた時の「飢餓の潮流、グリスト」に対する評価は以下の通り。ものすごく微妙なカードだと思っていたのだが…
グリストの−2は場にクリーチャーを残したいアルーレンにとってあまり嬉しくない。
— otb (@otb33291187) June 5, 2021
接死生物を並べて盤面を止めるから、それで止まっていないor破壊したいクリーチャーがいる時は大抵場に余裕がない。
ピンポイントでサーチするより、マナクリから2ターン目に叩きつける構成にすれば働きそう。
MH2でアルーレンが得たもの
以上のような経緯で「忍耐」と「飢餓の潮流、グリスト」を試してみることになったわけだが、この2枚のカードはアルーレンにとって今までにない部分を補う非常に有用なカードだった。以下にその理由を書いていく。
「忍耐」
既にバントコントロールで4枚採用されて結果を残していた「忍耐」だったが、使ってみるとその強さは疑いようのないものだった。「忍耐」のアルーレンにおける強さを大きく2つに分けて説明をする。
① メインから採用可能な墓地対策
「忍耐」は3マナ3/4の到達・瞬足という、基本水準以上のスペックを持ちながら墓地対策も兼ねることができるクリーチャーである。今まで「自然の怒りのタイタン、ウーロ」を使うデッキとの対戦は不毛であり、相手のウーロを追放できない分、BUGアルーレンは白い相手に不利であった。そのウーロをメインボードから墓地ごと吹き飛ばすことができるようになったのは非常に大きい。
またその墓地対策効果も、単純な追放ではないのがこのカードの強さを押し上げている。例えばDoom's day(最後の審判)とのマッチアップでは、相手が満を持して唱えてきた「タッサの信託者」に対して、唱えることで、ライブラリーを修復して、勝利できなくさせることができる。今までの対策困難だった相手にメインボードから対応可能なのだ。
また、自分に対しても使えることも忘れてはならない。ペインターとのマッチアップでは、自分のライブラリーを修復して、命をつなぐことができる。また、消耗戦になった際に自分のライブラリーを修復することもできる。こちらは「自然の怒りのタイタン、ウーロ」で余計な土地は追放しているので非常に密度の高いライブラリーが出来上がるという寸法だ。
この効果をピッチスペルとして使うことが出来るのだから、採用しない理由がない。そのコストとなる緑のカードは、アルーレンにおいて困ることはないだろう。
② 3/4という恵まれたサイズ
前述した3マナ3/4到達・瞬足というスタッツが絶妙である。タフネスが4あるので「稲妻」1枚では落ちず、URデルバーに採用される1マナパワー3の飛行クリーチャーを一方的に討ち取ることができる。このカードを越えるために、URデルバー側は2枚以上のカードを使うことを強いられる。おまけに探査の妨害までしてくるのだから悪夢のようなカードだろう。またパワーが3あるので、「自然の怒りのタイタン、ウーロ」を「外科的摘出」で追放されても、攻め手がいなくならないのも大きい。
「飢餓の潮流、グリスト」
このカードは現在のレガシー環境で頻繁に見るカードではない。4枚積みしてひたすらリーグに突撃しているのは私くらいのものだろう。おそらく世界で一番「飢餓の潮流、グリスト」を使い倒している身から言えば、このカードはBUG系のデッキが求めていたものを全て持っているといっても過言ではない。その強さを3つに分けて書いていく。
① 環境に刺さる+1能力
「飢餓の潮流、グリスト」の+1能力は、1/1トークンを生み出しながらライブラリートップを1枚削る地味な能力である。
しかし、今の環境ではこれがなかなか強い。疾駆で顔面目掛けて突撃してくる「敏捷なこそ泥、ラガバン」を止めるには盤面に常にクリーチャーを置いておく必要がある。このカードは毎ターン肉壁を生み出して猿が走ることができない盤面を整えてくれる。空は「忍耐」が。地上は蟲が埋め尽くし、攻撃を通すのを許さない。また、一度起動すれば忠誠値は4となり「稲妻」圏外に抜けることが出来る。見た目よりずっと堅いプレインズウォーカーなのだ。
またライブラリートップを1枚削る能力も地味だが有用だ。「渦まく知識」や「思案」で積んだ不要なカードを弾いたり、「自然の怒りのタイタン、ウーロ」を落としてそのまま脱出させたりできる。余った「飢餓の潮流、グリスト」を積めば、二重起動も可能だ。「忍耐」で互いの墓地を吹き飛ばし合った後でも、このカードが延々と墓地を肥やし続けるのでロングゲームは徐々に有利に傾いていく。
派手さは無いが、細かいアドバンテージを積み重ねで確実に勝利に近づけてくれるのだ。
② 痒いところに手が届く-2能力。
アルーレンがもつ昔からの弱点として、打点が低く、一度着地したプレインズウォーカーを落とせないというものがあった。「飢餓の潮流、グリスト」はその弱点を補ってくれる。-2能力は範囲が広く、「突然の衰微」で触ることができないカードに対処することができるのだ。先に着地しさえすれば、盤面に干渉し続けて、相手の逆転を許さない制圧力をもっているのがこのカードの強みだ。逆に言えば、1枚で盤面を返す力はないため、この能力を生かすには早い段階で着地させることが重要になる。使うならば2~3枚以上は採用されることになるだろう。
③ 地味にアルーレンと噛み合う常在能力
「飢餓の潮流、グリスト」が他のプレインズウォーカーと一線を画す点は、戦場以外では1/1のクリーチャーであることだろう。アルーレンにとってはこの特徴は非常に大きい。「護衛募集員」でサーチできたり「魔の魅惑」からコストを支払わずに出すことができる。
またこの能力は、このカードの対処のしにくさにもつながっている。スタック上でもクリーチャーであるため「否定の力」で打ち消すことを許さない。そのため、序盤に連打するだけでコントロールは対処に手を焼くことになる。今は亡き「王冠泥棒、オーコ」と違い、青くないので「Pyroblast」などで対処されないのもアルーレンが求める条件に合致する。
総じて非常に高いレベルでアルーレンの需要と噛み合ったカードと言える。奥義も極稀に勝負を決めるので頭の片隅には置いておくとよいだろう。
BUGアルーレンの今
現在5-0できたアルーレンは次のようなリストになっている。
このリストの動きについては以前に上げた動画を参照していただきたい。
実はこのリストにはいくつか気になる点がある。
一つ目は、「洞窟のハーピー」と噛み合うクリーチャーの少なさだ。自分が組むBUGアルーレンは、コンボで勝ちたい相手に確実に決めるために「洞窟のハーピー」と「魔の魅惑」を3枚ずつ採用している。そのため結構な頻度で手札に「魔の魅惑」と「洞窟のハーピー」が揃うのだが、肝心のドロー要員が場に残っていないことがある。
これは「魔の魅惑」なしで「洞窟のハーピー」とループを形成できるカードが「氷牙のコアトル」しかいないためである。「自然の怒りのタイタン、ウーロ」は積極的に墓地に落とすことが多く、「氷牙のコアトル」は壁として消えるため、場持ちの良いドロー要員クリーチャーがいなくなってしまうのだ。コンボの時以外は「洞窟のハーピー」が手札でこちらをずっと見ているというのは珍しくない光景なため、もう2枚、欲を言えばもっとドロー要員が必要だ。
二つ目がフェッチランドの多さによる土地の少なさだ。フェッチランドを多く採用することで、シャッフル回数を稼ぐとともに、序盤の安定性を上げているのだが、ロングゲームの際に土地が枯渇しやすい。もう少し土地を増やす必要がある。
三つ目は「ウルザの物語」対策だ。「敏捷なこそ泥、ラガバン」の方には対処することができるようになったが、「ウルザの物語」は依然脅威である。盤面で大きく押される上に、第三章のサーチで「真髄の針」などを持ってこられると目も当てられない。
これらを少しでも改善しようとしたリストが直近で5-0した以下のリストである。
目を引くのは「とぐろ巻きの巫女」の採用だろうか。
「とぐろ巻きの巫女」は一つ目の問題への回答である。このカードは「悪意の大梟」や「断片無き工作員」と枠を争うカードだ。カード自体の強さでは「悪意の大梟」が、場持ちのよさでは「断片無き工作員」がそれぞれ上回っている。しかし今回は「洞窟のハーピー」とのループのしやすさや、序盤の出しやすさを重視した。「忍耐」の関係もあり、序盤に島+沼という土地の出し方を避ける意味もある。
二つ目の土地枯渇問題は「新緑の地下墓地」を1枚「冠雪の森」にすることで対応した。
最後のアーティファクト対策は「活性の力」で妥協している。正直アーティファクトデッキを対策するにはこの程度では焼け石に水のため、もっとクリティカルな対策カードを取ってもよいかもしれない。しかし、対策する範囲が狭くなってしまいかねないので、メタを読んで変えていく必要があるだろう。
おまけ
URデルバーをメタったデッキにも関わらず、動画に対URデルバーがないため、サイドボーディングだけ紹介しておく。
URデルバーのようなテンポデッキに対しては、「洞窟のハーピー」のだぶつきや「魔の魅惑」が腐ることが致命的になりかねない。そのため、アルーレン要素を全て抜き去って、完全にBUGミッドレンジに切り替えることで対処している。
4Cアルーレンの今
4Cアルーレンも、モダンホライゾンの影響を強く受けている。特にBUGと大きな差別化ができるようになった点は、「剣を鍬に」と「虹色の終焉」の除去8枚体制だろう。こちらも最近5-0できたのでリストを紹介する。
4Cアルーレンは今まで必須だった「突然の衰微」を取る必要がなくなったことが大きい。序盤に除去のために平地を置かなければいけないという点で歪な展開を強いられることはあるものの、事故要素となっていた沼と平地の共存を避けることが出来るようになっている。一応マナクリーチャーを多めに採用し、できるだけ島と森だけで動けるようにしているものの、やはりマナ基盤の安定感はBUGに劣るだろう。
マナ基盤の歪さは「ニッサの誓い」や「豊かな成長」をもう少し増量することで若干改善できるだろう。また「空を放浪する者、ヨ―リオン」のバリューを上げることもできる。今後細かい枚数調整は課題となりそうだ。
BUGアルーレンに比べ若干安定感は劣るものの、「空を放浪するもの、ヨ―リオン」による消耗戦への強さと、除去能力の高さ、コンボの決めやすさでもぎ取れる試合も多い。前環境は対応力の高さなどもあり、4Cアルーレンの方が強かった。実際レガシーチャレンジで優勝(仮)できたのも4Cアルーレンの方だった。しかし現在は使っていてもどちらがよいか明確にならなかったため、好みとメタの問題になるだろう。
(動画を上げたらここにリンクを貼る)
最後に
アルーレンにはつらい環境になると思われましたが、コンボ以外の面で噛み合ってデッキの地力を底上げされる結果となりました。モダンホライゾン2が発売して2週間。まだまだ環境は動いていますので、自分のものを踏み台に、様々な構築を試していただければと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。また機会があったらお会いしましょう。それでは!