Aマッソ滑稽 ネタバレ感想
Aマッソさんの単独ライブ「滑稽」の感想ですが構成からなにからネタバレしながら感想を書いていきます。備忘録。めっちゃ長いです。あとうろ覚え箇所が多いです。
3月13日、Aマッソの単独ライブに単独で乗り込んだ。恥ずかしながらお笑いに疎く、Aマッソ自体もこの機会を得るまで知らなかった。好きなwebライターさんが取り上げていたので興味本位でチケットをとったのである。
本編は、「破顔様」を信仰する「Affirmation」という組織のドキュメンタリー風ムービーと、Aマッソのコントが交互に展開される構成だった。このムービーがめちゃくちゃ怖くてしかたなかった。ホラーとオモロの交互浴で情緒がぐちゃぐちゃにされてしまった。
入場まで
会場のスタッフさんが、笑った口元の写真がプリントされたマスクをしていたので「お笑いライブってスタッフさんもユニークやな~」と思っていたらおそろいのマスクをいただいた。いらね~。
その後唐突に棒を突き付けられたので検温かと思い慌てて腕を出したけど、明らかに体温計ではなかった。勘違いした恥ずかしさに背中を押されて入場。あれなんやったんやろと思ったけど特に気に留めることもなく。(なにせ恥ずかしかった)(あとお笑いライブの常識とかわからないので全部が「そういうもん」というふうに思えた)
着席してマスク着用のアナウンスが流れたけど、お笑い新参者の私はなんとなくためらって周囲の様子をうかがった。みなさんいそいそとマスクを着用しているので、「マスクを着用してもお客さんはちゃんと笑ってるよって舞台の人に見てもらえるような演出なんかな!」と解釈し、いっちょ会場と一体感を感じたろか!と着用。会場全体がこのマスクをつけてるの・・・滑稽やな・・・ふふ・・・。とかのんきなこと思ってました。
目の前にハットかぶったメンズがいたので舞台の下手3分の1が見えないまま開演。屋内の舞台では脱ごうよ。
OP映像
「え、お笑いライブやんな?」と言いたくなるようなOPが流れてきてすでに不穏。前情報は雰囲気ネタバレだけだったので普通にビビった。ノイズが多く不鮮明な映像。古のゲームSIRENを彷彿とさせる儀式的なカットもあった。一瞬だけ挿し込まれた「MENTAL BREAKDOWM」という文字に幸先の悪さを覚えた。
宗教団体のPRみたいなムービーも流れました。最初は笑いがもたらすメリットの科学的根拠の紹介だったので、平和そうな内容に安心。
宗教集団の日常が描かれていくことによって段々胡散臭さが増していく・・・。不自然に笑顔を張り付けながら、やたらと「笑い」を強調してくる。役者さんの笑顔みんな気持ち悪すぎたので「表情の演技すご・・・」と感動してしまった。芯から笑っているように見えるのにめちゃくちゃ不安にさせてくる。
コント 交通事故のネタ
不謹慎な笑いがあると聞いていたので、事故という不幸な出来事を笑いにするのかという無駄な深読みをしてしまった。(全然そういうのじゃなかった)車とバイクの接触事故の話なんですけど、事故を起こされた側の女性が無知すぎて車のドライバーの方がツッコミ入れる話。はちゃめちゃに面白かった。来てよかった。
ムービー
雰囲気が一転して例の宗教団体の話。
信者たちが同じ家で集団生活を送っている設定のようで、「死役所」のアレみたいだなと思った。
このムービーは主人公、市子が覚醒するまでをドキュメンタリー風に撮っているものかな?市子は「誘い笑い」(たぶん拠り所を探しているようなひと?)として男性(俊哉)をつれてくる。
彼は信者に囲まれ、教祖っぽい男性の前に座っている。以下会話(超うろ覚え)
「つらいことがあった?」
「いじめられて、変なあだ名をつけられました。便所コオロギって」
「君はその時どう思った?」
「僕はコオロギじゃないって・・・」
ここで教祖っぽい男性が大笑い。周りの信者も爆笑。
「今は配慮の時代だから、君がやめてくれと言うと、その子たちは君のことを名前で呼ぶだろう。仲良く遊んでくれるかもしれない。でも、彼らの中の優位性は失われない。君の中の劣等感もね。・・・君は笑われていると思うだろう。でもカメラをひいて見てごらん。君は笑われているんじゃない。笑わせているんだよ。君のことはここでもコオロギと呼ばせてもらうよ」
教祖、大笑い。周囲、大爆笑。俊哉、周囲をおどおどと見まわして、合わせるように笑う。
えぐ~~~~~~~!!!!!!
明らかな強者と弱者の構図にヒヤっとしました。確かに笑うって、その対象に比べて自分は優位に立っているという余裕があるからできることなのかもしれない。カースト上位がいつも笑って楽しそうなのは、彼らにとって、彼らより劣る者の方が圧倒的に多いからだ。めちゃくちゃストレートにぶちかましてくるじゃん。
あと、笑われているんじゃなくて、笑わせているんだよって、すごく肯定的なように思えるけど、強者側が言っていいセリフじゃねんだわ。成功者に逆境の対処の仕方言われたって嫌味にしか聞こえねんだわ。そしておめーが言ったらその言葉の価値がどうであれそれがマジョリティの意見になっちゃうんだわ。苦しい~~!!俊哉の笑いって、同調圧力みたいなのに強制されたものだよね。しんど。
あと配慮の時代とか言うな。鎖骨いたなったわ。
ビラ配りしている市子が例のほほえみマスクをしていたんだけど、これを着用するってことは信者ってことなんですね・・・。
察しの悪い私は「ヤダ~!おそろじゃ~ん!」と思っていた。旧友か。
コント 受験に落ちた中学生のネタ
ムービーのえぐさに圧倒されたあとにコント。「このままコント見て何食わぬ顔で笑っちゃうのって道徳的に無理かもしれん・・・」て思ったけどめっちゃ笑った。村上さんの演技の幅すごい~!
国語教師の顔写真を広げたときに会場にどよっとした笑いが起こったんだけど察しの悪い私は写真に写った女性を「Aマッソと仲良しのお笑い芸人なのかな~」って思った。
ムービー
なんか市子が信者に囲まれて泣きそうな笑いそうな変な顔で変なポーズしてる。なんかの罰かな?と思ったけど、市子昇格?の儀式のようなものらしい。
死んだ弟の写真を床に投げ捨てられ、「弟の死に顔を見たか?」「普通、死に顔は笑顔だ」「穢れた者の死に顔は笑顔ではない」など。周囲の信者は始終にこにこ。追い詰められて市子は笑うんだけど、この笑いっていったいどんな価値があるんだよ・・・。
コント 抽象
演劇のセミナーが舞台?生徒役の加納さんのテンションが振り切れてて正直少し怖かった。ていうかムービーで情緒かき乱されたあとにこれで笑うのはちょっと無理よ。
「なにか晒さないといけないことがあるんじゃないの?」「夜中に一人でみだらな行為に耽っていたんじゃないの?」のセリフの浮き具合に居心地の悪さを覚える。
ムービー
センシティブな内容だから、と女性信者のみ集められ、そこに俊哉が登場。市子が教祖と男女の仲なのではないかと疑う。ここの話は本当に記憶があいまいなんだけど、俊哉に当てられていた棒って、入場時のアレじゃん・・・?!とか、俊哉がみだらな行為に耽っていたって・・さっきのコントのセリフじゃん・・・?!?!とか、やっぱ宗教って性をタブー視してるんだね・・・とかいろいろ思うことはあった。でも、俊哉が逃げて、それを市子に追わせようと信者の女性が手にペンを突き立てた瞬間斜め前の女性が爆笑したのがびっくりしすぎて全部飛んだ。
仕込みおる・・・!!!!!!!!
(私の)心臓がバクバクでもう気が気じゃない。怖い。笑うところじゃない。道徳観がやばすぎる。敷地を出る俊哉、俊哉の手をにぎる市子、その瞬間、ものすごい勢いで走ってきた車は、俊哉の腕だけを残して彼を轢き殺す。「お・・・・・・お笑いライブってこんなことしていいの・・・???」彼の死体を見て笑う信者。笑いが起こる会場。
写真deトークのコーナー
あまりにも普通に出てくるAマッソの二人に泣きそうになりながら恐怖感と怒りを覚えた。斜め前の信者が怖い・・・なんかもう笑い方も怖く見えてきたね・・・。じっとして・・・。
これ普通に進むの?今このコーナーで面白いこと言われたら私笑っちゃうの?人が吹っ飛ばされた映像を見た直後に私笑っちゃうの?幸せな人がいない映像を見て私は笑えるの?笑っていいの?ここで笑っちゃったら倫理観やばくない?Aマッソトークうますぎワロタ・・・。村上さんのめっちゃ腹立つ顔見てわろてもうたでオイ・・・。
笑うことへの恐怖を感じたのは初めてかもしれない。今笑ってしまったら、自分がものすごく悪い奴になってしまう気がした。
ムービー
情緒がめちゃくちゃな市子の顔からは笑いが消えていた。そりゃそうよ。俊哉の顔写真を顔に張り付けた信者に迫られる市子。破顔様の人形を投げる市子。何かにおびえるように足をあげる市子。怖すぎてここからスクリーンを直視できなくなった私。足が折れる音。会場から笑いが起こる。
俊哉の死亡シーンを繰り返し見せられている市子。綻び様への覚醒。
エンドロール。察しの悪い私は「フィクションだった~~~~!!!」とめちゃくちゃ安心してスタッフロールを見ていたんだけど、ロケ地に「Affirmation九十九里支部」の文字が見えた瞬間血の気がひいた。最後、メガネの女性が映り、「綻び様 市子様に捧ぐ」・・・あの国語教師じゃん・・・。
コント 教育ママ
椅子に座る村上さんとママ役の加納さん。「いっちゃ~ん!爪噛むな!勉強しい!」と呼び掛けている。市子と母じゃん・・・。内容が全然笑えないんだけど加納さんのテンションとギャグが面白すぎる・・・でももうさすがに笑えなかった・・・。息子をなくし拠り所のなくなった母、新しい拠り所を娘にした母、息子が亡くなったのは誰のせいでもない、息子自身のせい。しんどすぎる・・・ほほえみのつどいに入信するまでの市子親子を嘲笑するという構図・・・。市子は入信前から嘲笑の対象だったということ?
ムービー
例のムービーのメイキング映像。市子役の女の子めっちゃかわいいね。
「笑顔を消すことには、演技といえど抵抗はありました。笑顔を消すと、市子様みたいに正気を失うのではないかと思いました。」
外野から見ると、四六時中笑っているこの団体こそ正気の沙汰ではないのだけど、内部の者にとっては笑顔でいることが正気であることなんですね・・・。閉じたコミュニティーって、「そう」なんだろうね。
監督?の嘲笑っぷりがちょうど不快で最悪だった・・・。
黄色いワンピースを着せられた本当の市子様は、白い車に乗せられていきました。出荷みたいだな?
スクリーンには「引き続きご協力おねがいいたします」の文字。察しの悪い私は「仕込みに念押ししてお願いしてるんかな~」と思っていました。
最後のコント
もう笑うに笑えなくなってたんだけど、ちょっと笑っちゃった・・・。
ただ、コント内で不可解なセリフが頻出してきて、アレ?と思った。多分Affirmation内で使用されている単語だ。だから二人の言っていることがどんどん笑えなくなっていく。
でも会場は笑っている。
仕込みの人が笑っているのか?
でも仕込みにしては笑い声が多すぎる気がする。
口がゆがむ。おそろしいくらい孤独を感じた。他人の笑い声めっちゃ怖い。
村上「おい!ええ加減にせえよ!綻び様やぞ今は!」
やめて~~~~~~~~~~
ED
Aマッソの二人が捌けると、スクリーンに客席の映像が映し出される。たぶん今日の客席。あのマスクをした観客が一様に笑っている。明らかに仕込みの人もいたが、多くは純粋な観客のはず。あれだけ楽しかった空間が、めちゃくちゃいびつなものに思える。仕込まれた笑いと、純粋に起こった笑いの区別がつかなくなっている今、スクリーンに映し出されるのは、めちゃくちゃ不愉快な嘲笑。あのマスクのおかげで、同質の笑顔が並ぶ映像。
スクリーンが上がり、後ろにあった祭壇が現れる。その上部には、磔にされた市子様。会場から起こる笑い。市子様の笑い。・・・。
市子様から見たら、マスクのおかげで皆一様に笑顔に見えたことだろう。私は笑っていないという言い訳は無意味だ。彼女から見たらそんなことは証明しようもないからだ。私は信者の一員で、市子様を追い詰めていた一人である。自分の加害から逃げられない。このライブ、今までの笑いはすべて市子様にむけられた嘲笑だったという構成だったということ?
趣味悪ぃ~~~~~~!!!!!(拍手喝采)
帰り道
お通夜か?という雰囲気の会場をあとにして強風ふきすさぶ中真っ暗な道を歩くさみしさや。(会場出口の上部のアレ、許さねえ)
会場から出るときなんか配ってたから「フライヤーかな」と思って見たら完全メシだった。馬鹿にしてんのか。
自宅最寄り駅に着いて笑い声が聞こえたときにめちゃくちゃ心臓がバクバクした。しっかり笑い声がトラウマになっていた。
先述したが、「笑うことの優位性、加害性」が魂の根っこの方から無遠慮にズルっと抜き出されるような舞台だった。人を傷つけることって極力避けたくて、罪悪感が一番いやなんだけど、今日はそれを感じずにはいられなかった。自分は加害者であるという構図に不快感を抱くのは、どこか自覚があるからだ。不謹慎なタイミングで笑ってしまうことはもちろんだけど、「自分より劣った存在である」ということを理由に笑ってしまうことを、言語化せざるを得ない脚本がきつい。
思えばコントもそうだった。交通事故、折れた足、受験に失敗する、など、Affirmationのムービーに共通する要素はもちろんなんだけど、笑いの対象が「無知な弱者」であることに気づいたときの絶望と自己嫌悪。日常でうっすら気づいていたことを「おいちゃんと見ろよこれがお前のきたねえ部分だぜ」と首根っこをつかまれている感じがした。
かえって一人でぼんやりとしていたんだけど、とりあえずほほえみマスクは怖いので捨てた。そして恐怖を抱いたまま寝てストレートに悪夢を見た。
総じて今回の「滑稽」はめちゃくちゃよかった。きれいな言葉の裏のグロテスクな部分を見させてもらいました。表現してくれてありがとうございました。
はじめての投稿なので何か問題等ありましたらご指摘いただけると助かります。