【レポート】 DesignShip 2020
先週の土日、オンラインで行われたデザインのイベント☝️に参加してきました✏️
備忘録&感想ベースに、いくつかセッションを紹介します。
参加した背景
去年、初めて参加したのですが、デザインのHow to的な内容ではなく、各業界・各領域のデザイナー視点をギュギュっと凝縮して、体験(したような気分)ができたことがきっかけです。
今年も、学生の頃から憧れているデザイナーさんが何名か登壇されていたので楽しみにしていました!
また、去年とても共感度の高かったこのステートメントが、今年一年も自分の周囲では色々実感することがありました。
デジタル・グラフィック・プロダクトにおける「デザイン」の知識や経験は、それぞれの業界を超えて共有できるものが多いにも関わらず、デザインコミュニティは業界内で閉じている傾向にあります。
デザインシップは、そんな分断されたデザイナーたちが壁を越えて一同に会し、学び、鼓舞し合うような機会を提供し、もって国⺠の創造性向上に寄与することを目的としたカンファレンスです。
「またとないをたのしむ」/色部義昭
クライアントの担当者や決済者も、対象となる場所や背景となる素材も、メディアや目的も期間や予算も、毎度「またとない」条件の中で進めていくのがデザインの仕事。(概要より抜粋)
一つひとつ、ご紹介されていた事例はどれもわかりやすく、美しく、コンパクトでプレゼン自体も素敵だったのですが、特に面白かったのが「大阪メトロ」の紹介でした。(↓の記事に詳しく載っています)
・海外から来た人にとっても、すぐに地下鉄だとわからないといけないからネーミングは「Osaka Metro」
・世界の地下鉄を調査し、世界で最も使われている「M(Metro)」のシンボルで、地図上でも、遠くから見てもわかりやすく
・地下鉄が走り出すようなイメージで回転するスパイラルは、横から見ると「O(Osaka)」で大阪を内包し、大阪ならではのオリジナリティを表現
・条件調査 / 類似事例分析で、機能性をしっかり担保
・サイネージメディアでの展開(条件・環境)を活用
・ステークホルダへのエンパシー・配慮
などなど、デザイナーとして達成すべきポイントが明確になりました。
今でもデザインはスタイリング要素を強くイメージされる方が多く、特にグラフィックはつい見た目の話をしてしまいがちですが、文脈をこうやって聞けると、もし自分がクライアントだったらぐっと心を掴まれちゃうな、と思う内容でした👏
「デザインの速さ」/廣村正彰
人がデザインに触れ、それがどのように作用するのかを、情報の認識速度の話と共にお伝えしたいと思います。(概要より抜粋)
デザインとは
・機能的である
・美的である
・今までにない発見がある
・未来の提案がある
・生活に変化がある
この5つの要素とともに、「デザイン」には「速さ」という切り口が存在するのでは?というお話でした。単に「早い」=「良い」という話ではなく、「条件や環境下でどうあるべきかが異なる」という視点を、廣村さんのお仕事の多くを占めるサインデザインを軸に紹介してくれました。
はやい:空港/駅/道路
情報伝達速度が速くなくてはいけない場所。ぱっと見てすぐ役割をはたすことが重要
はやくて ゆっくり:病院/ホテル
早くそこの役割・機能を果たしたいという人もいる一方で、別の人にとってはゆっくりしたい場所でもある
ゆっくり:美術館/公園
ゆっくりと、そこを堪能していただく過ごしてもらうということが重要
「はやくてゆっくり」という両立は、今まであまり考えたことがなく、新鮮な分類でした。
また、余談ですが、「はやい」で紹介されていたガムテープ文字「修悦体」は、わたしもお気に入り書体の一つです。廣村さんのセッションで聞けるとは思っておらず、嬉しかったです😂抜群のオリジナリティが高いのはもちろん、ちゃんと機能的・美的のデザイン性があるところが素敵です。
私は小林章さんの欧文書体の本を学生時代に読んだのをきっかけに、FrutigerやDINなどに出会い、海外の道路・交通のサイン(標識)を見るのが好きになりました。そこにはやはり「情報伝達速度」の視点や、その国の文化だったりの解釈がふんだんに溢れています。(例えば数年前まで、日本にもお祈り室のサインなどなかったのです)是非、海外旅行に行ける日が戻ってきたら、コレクションすることをオススメします!💪
廣村さんといえば、オリンピックの動くピクトグラム、大好きなお仕事です。サインデザインはピクトグラムなどを見ていると、アプリデザインにおいては、サービスという建築の中を歩くためのアイコンという意味で、同じ役割を果たしているような気がしました。業界が違っても、バーチャルとフィジカルの違いはあるものの、近しい体験をしているものはあるのでは?と感じるセッションでした。
社内で取り組んでいるブランディングのプロジェクトにもこの視点を生かしていければと感じています。
「レンガから考える」/中村勇吾
(レンガ??ってどんなことを話されるのだろう、と思いつつ、こういったイベントにYugopこと中村さんが出られることが本当に新鮮...!)
中村さんが大学の時に研究していた「構造デザイン」から、一つの大きな石垣を構成する「石」という「単位」に着目するというお話に繋がりました。
つまりは、「別の単位から、捉え直す」という切り口。
事例として最初に見せてくれた「雨音」の映像(ザーっという雨音の音は人一つの「ポツっ」という衝撃音の集合体というお話)は、見ていた人みんなが刺さった熱量がオンラインでも伝わってきました。面白い。
「別の単位から、捉え直す」という切り口そのものも面白かったのですが、何より、そういった自分の物事を見る視点について、中村さんが自分のセンス(≒視点の偏り)と表現していて、なるほど感がありました。
「センスいいね!」って、=「美的感覚いいね !」と言う風に使いがちなイメージなのですが、確かに周囲のデザイン・アート系の友人と話す時、視点が他の人と違ったり、視点をずらして視れる人との会話からは得られるものが多く、魅力的だなあと思います。それこそセンスなのか、と感じました。
また、私はついつい「機能性」や「使い勝手」に関して、真正面な答えを出しがちだったのですが、中村さんの「視点の偏り」解釈で視たときは、それも確かに一つの「機能性」だなと思うワークがあり(例:佐藤可士和さんのサイトでは、可士和さんがプレゼン時にこのサイトを見せるだけで、可士和さんを表す屏風のような機能を為す)、自分自身の視点の狭まりを自覚してハッとしました。オリジナリティという個性は、視覚的な部分だけでなく、「ちょっとずらして見る視点」から生まれるのを実感しました。
またまた余談ですが、「別の単位から、捉え直す」という文脈で紹介されていた東北震災時のビートたけしさんのコメントがとても良かったので、最後に抜粋して紹介します。この想像力はこの先大事にしていきたいです。
…こういう大変な時に一番大事なのは「想像力」じゃないかって思う。今回の震災の死者は1万人、もしかしたら2万人を超えてしまうかもしれない。テレビや新聞でも、見出しになるのは死者と行方不明者の数ばっかりだ。だけど、この震災を「2万人が死んだ一つの事件」と考えると、被害者のことをまったく理解できないんだよ。(中略)
人の命は、2万分の1でも8万分の1でもない。そうじゃなくて、そこには「1人が死んだ事件が2万件あった」ってことなんだよ。
- ビートたけし
DesignShip参加を経て
デジタル系の業界は「オープンイノベーション」という考え方が根付いて久しく、今年は特に、日本は東京都のCOVID-19対策サイトが話題になったり、シビックテック元年とも言われています。
すでに先人が調査・検討・改善を繰り返しているアイデア・ノウハウ・デザインやデータなどの資産をオープン・フリーにしながら世の中全体を効率的に良くしていくシステム、とても素晴らしい!と思っている一方で、
そこに過剰に頼って、システマチックに「普段のデザイン業務」に向き合う時間も、増えてきているような気もしています。(これは私自身の体感で、個人差はあると思います)
その分空いた余白が別のアイディエーション・クリエイションの時間に費やすことができるという風に捉えることもできるので、それ自体は悪いことではないのかもしれないのですが…
ただ、時々こうやって、私が「デザイン」というもののどんな部分を「楽しい」と思って志したのか、デザイナーとしての信念ってなんだっけ?を振り返るきっかけとして、同じように信念を持って日々デザインに取り組んでいる方の話を聞く機会は、ありがたいなと思いました。
未来像を描くことに拘ること
多様な条件や環境を楽しむこと
ユーザーや生活者への傾聴・想像力・エンパシー力
「私」という触媒で付加できるオリジナリティ
この辺りに意識を戻して、日々を見つめてみようと思います💪