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生活での手の使用状況をどう捉えるか
1.はじめに
僕たちは、毎日の生活で数多くの活動を営んでいます。
手は毎日の生活を送る上で、欠かせない存在です。
ですが、僕たちは一日でどれくらい手を使っているのでしょうか。
手が重要であることはわかっているのに、どれだけ手を使っているかはあまり知られていません。
本記事では、生活での手の使用状況に関する近年の研究動向をまとめ、現在行われている評価の問題点について論考していきたいと思います。
2.手を使うということ
手の歴史は、3億年前に遡ります。
生きた化石とも言われるシーラカンスの前びれが手の起源と言われています。これが爬虫類や両生類への進化の過程で、前足となり、鳥類では翼、ほ乳類では手へと変化してきたと言われています。
哺乳類の中でも、獲物を狩ることや木の実を割ったり、木の枝を持ったりと、手はその動物の生態や行動に大きく影響を受けています。これは進化論から言えば、生活環境に応じて手の形態や機能が変化していることを表しています。つまり、動物における手は、決められた生活環境の中で生存していくために欠かせないものであると考えられます。
人間における手の特徴は、手根骨と母指球の発達から手を様々なフォーム(形態)を取ることができるとともに、大脳皮質の発達から道具の使用や多様な巧緻動作の獲得がなされました。また、言語とともに字を書くことによって知識の保存と継承を成し遂げ、人類の文明は発展してきました。
手を使うことは、もとより生きるために必要なものです。しかし、人間にとって手は動くかどうかだけではなく、道具を使うことで生活を豊かにし、言語と文字を使うことで知的活動を行うことに繋がります。
大脳皮質の一次運動野を見ると、手が占める範囲が多いことは周知の通りです。手を使うことは、末梢の運動器官としての機能を維持するだけでなく、中枢の運動指令としての機能を維持することにも繋がると考えてよいでしょう。
手の正常な機能を維持するには、生活の中で適度に使用することが重要であると考えます。しかし、人によっては手を使う量や時間が異なるのも事実です。なので、厳密にどの程度動かせばよいのか、という議論にはまだ論拠が足りていないのが現状だと考えています。
3.手に必要なのは、機能か、使うことか
手が存在しなければ、手を動かすことは出来ないし、手を使うことはできません。つまり、手をケガによって失ったり、機能不全に陥れば、手を使うことは不可能に思えます。
だから、手の機能回復を図り、能力を改善すれば、手は勝手に使われるに違いない、と考えたのがICIDHであり、医学モデルでした。
しかし、一方で廃用症候群という用語があるように、disuse(使用していない)状態が続くと、能力は低下し、機能が失われるのです。
上記のように、手の機能と手の使用のどちらが有効かという問いには意味をなしません。どちらも単独で起こり、そして影響しあう問題なのです。
手の機能は、解剖学や運動学、生理学など基礎医学を基盤として多くの検証がなされ、今日に至ります。
しかし、手の使用についてはいかがでしょうか。
4.手の使用状況に関連した評価
リハビリテーションでは、手の使用状況を示す評価が使われています。
それらについて整理していきましょう。
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