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#5「幸福」の上限

友人と鍋を囲んでいるなか、
「そういえば仕事でメンタルやられていると聞いたけど、その様子だと復調したのかしら?」
私はコロっと元気そうな友人に話を振る。

「なんとかなったわ。人間強くできているよ」

その中身についても私は平然と土足で踏み込む。
聞くに、一番の要因は「頑張る理由がなくなったから」とのことだった。

30代前後で迎える独身エリートたちの幸福上限

ブランド品の綺麗な身だしなみに、栄養管理とトレーニングでボディメイク、休日は値段を気にせずコーヒーをテイクアウトして、トレンドのサングラスを身につけたエリートたち。

そんな彼、彼女たちもある水準で満足してしまう。

「ここから何したいだろう」

そして自分の幸せを見失ってしまう。
私の大学の友人やこうした優等生が多く、特に男性で結婚をしていない人にこの傾向がよく見られる。

引用:幸福の資本論

この現象の根本的原因は、幸福の柱が一本に依存しているからだと考えている。今回の彼は「孤独なお金持ち」に属した悩みが顕在化したケースであり、「ソロ充」の場合は怪我や趣味のレベル限界値、「プア充」の場合は仲間の離脱、顕在化するタイミングやトリガーは異なれど、その発生頻度の中央値は30代前後に集中していると思われる。

「孤独なお金持ち」にフォーカスしてみる。
彼は資産も多く、物件も車も家庭も所有している。しかし子供はいない。

高給取りの一例として、コンサル業界におけるシニアマネージャー(課長〜部長クラスだがコンサルの場合はチーム数にシニアマネージャー枠がリンクするため、通常の企業の部長枠に比べると採用枠が多い)以上の役職に就くと、給与の1.5~2倍の著しい向上が見られるが、責任と心理的負担が増加することで、ワークライフバランスの調整が難しくなる。

一方で、その給与水準でないと「できない」ことが極めて少ないように思える。例えば、プレイヤーレベルの高水準は1000万円前後の給与レンジで、1400-1800万円がコンサル界隈でのシニアマネージャークラスの水準となる。私の知る界隈をソースにすると(サンプルとして有限だけれど)、1400万円以上の男性役職者は常勤で働いていない女性と生活を共にするケースが多い。

これは、働くリソースを集中させないと普段の生活が回せないからだと思われる。すると。
1000万円 58万円/月(手取り)
1400万円 81万円/月(手取り)
この400万円の差分に対して、働いていない女性と一緒になること、400万円前後の女性と共働きをすることに、そこまで大きな生活水準の差分が出なくなる。

30代前後のエリート層のうち、単純に「働くこと」その会社で果たせる「社会的意義」が強い場合はその限りではないだろう。

しかし、このエリート何していいかわからんくなる病は、さらなるスキルアップや昇進が実現された時の報酬とコストパフォーマンスの悪さを原因に、今の若手層には魅力的でなくなりつつある。

子供を持つ選択肢割合が逓減する社会問題は、
メディアから趣味の増加と誘導されるものの、

1. 同年代結婚割合の都心部シェアが減っていないこと
例:世代構成人数に占める30代の結婚組数は1980年前後と今とで大きな変化がない)

2. 特殊出生人数の低下が数字上現れていること
例:結婚しても子供を持たない家庭、1人までしか持たない家庭が増加している

以上から、「子供を持つ」選択肢を取れないでいる若者が増加したと1つ仮説を持つことができる。論理的に、可処分と生活負担費の増加が人口減少に繋がることは不自然ではないだろう。

子供を持たずに結婚だけしている若者たち(私含めた友人たち)は、自分の生活だけを考えてきた末に、いつしか幸福上限を迎えて、生きる意味を見失いがちである。

こうした人生設計の欠陥ともいえる現象が散見されると、

30前後で子供を持つ、のは翻って、合理的な選択肢なのかもしれない・・・

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