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「再確認」と「再出発」の旅〜阿久根職業体験型ワーケーションプログラムに参加して〜

旅のはじまり

スケジュールには無かった1時間の待ち時間ができた。電車の乗り換えに失敗したのだ。どうやら、他所からくる人にとっては結構あることらしい。
これは、そんな感じでバタバタと始まった僕のとある1週間の記録。舞台は、鹿児島県は「阿久根市」だ。
※ちなみに僕は鹿児島県在住だし、数年前にも同じルートで阿久根に向かったことがあるから、乗り換えに失敗したのは僕がただただおっちょこちょいなのと、確認不足のせいである。。。

1時間の待ち時間を経て、阿久根に向かう「肥薩おれんじ鉄道」に乗車することができた。ここで、この記事で僕と初めましての方向けに少し自己紹介をしたいと思う。

名前:西海晴(Nishi Kaisei)
生年月日:2002.01.19
出身地:鹿児島県南九州市川辺町
<プロフィール>
2023年現在、鹿児島大学水産学部4年で、休学中。
水産系スタートアップのインターン、自主企画イベントの開催、LPデザイン作成、Z世代マーケ・SNSマーケのインターン等、多種多様な業務経験を積み、今にいたる。物心ついた時から生き物好きで、特に魚が大好きだった。そして今なおその熱は止まず、写真等の自身の趣味を活かした魚の発信を行なっている。また、大学生になってから生物としてだけではなく、食材としての魚の魅力にも取り憑かれ、250種類以上もの魚を食べて記録に残し、未利用魚や深海魚等の魚食普及活動にも取り組んでいる。

要するに僕は、色々している魚オタクの大学生だ。
そしてそんな僕が今回、阿久根に向かったのは、「阿久根職場体験型ワーケーションプログラム」に参加するためだ。アテンドしてくださるのは、地域おこし協力隊の方々。魚オタクの僕のために、今回のプログラムでは特別に「魚づくし」のスケジュールを組んでくださっていた。

※「阿久根職場体験型ワーケーションプログラム」については以下の記事をご確認ください。↓↓

さて、「肥薩おれんじ鉄道」から、ようやく冬めいてきた北薩の海を眺めているうちにあっという間に阿久根に到着。
ここからは、この1週間の体験の中でも特に印象に残っていることをかいつまんで綴っていこうと思う。

3時起床。船酔い。それでも楽しい。

1週間のうち半分以上は午前3時起きのスケジュールだった。
漁師の朝は早い。漁師に限らず、魚の仕事をする人々の朝はとにかく早い。そんなのはわかりきっていたこと。覚悟はしていたが、どちらかというと普段は夜型の僕にとって、その生活習慣は体になかなか応えた。
さらに時化ている日の漁船での作業では、ちゃんと船酔いした(笑)
改めて、漁師のたくましさを身にに沁みて感じた瞬間だった。

それでも元気で楽しくいれたのは、僕の大好きな魚を職場体験中ずーっと見ていれたからだ。そして、何より他所者の僕を快く受け入れてくださった阿久根の方々の懐の広さのおかげだ。
突然だが・・・読者の皆さんは、漁師などの水産の現場で働いている方ってどんなイメージがあるだろうか?
なんとなく、「いかつい」「ごつい」・・・。
そんなイメージがあるのではないだろうか?
僕も水産の現場にちょこちょこと足を運ぶようになる前までは、そんなイメージだった。しかし、案外そんなこともない。もちろんそんな感じの見た目の方もいるにはいるが、大抵の場合は優しくて、すぐに話しかけてくれて、人懐っこい。どこか愛らしい、そんな人が多いのだ。
今回のワーケーション中も、ありがたいことにそんな方ばかりで、とても幸せな時間を過ごすことができた。

また、阿久根で食べた魚は全部美味しかった。本当に全部だ。
朝早くから魚を獲りに漁に出て、獲れた魚を一尾一尾丁寧に処理する漁師。
そうして漁師が水揚げした魚を目利きし仕立て、いち早く消費者の元へ送る魚屋。
1匹の魚が丁寧にバトンパスされながら、僕ら消費者の口に辿り着く一部始終を直接この目で見ることができたわけだが、普段旨い魚が食べられることって当たり前じゃないよなと、より魚に対する愛と感謝の念が増したのであった。

ほど良さ。

阿久根のまちは「ほど良かった」。一見するとなんだか悪くも聞こえるが、このほど良さが、暮らしをしていくにはすごく大切なのではないかと、この1週間を通して感じた。

まず、人と人との距離感。
遠すぎず、近すぎず。お互いの領域の円(縁)が程よい具合に重なっていたと思う。居心地が良すぎて変化が起こらない距離感ではなく、何か新しいものも生まれる距離感かつ助け合える距離感。ワクワクと安心が共存していた。
そして、暮らしと自然の距離感。
耳をすませば、暮らしの音の中にも波や風の自然の音が感じられる。
20代という若いうちは、どんどん動きまくって、たくさんのインプットをしたいと考えてはいるが、たまには深呼吸することの重要性も学んだ。
本当に、阿久根は程よい町だった。

「再確認」と「再出発」

全てのことが印象的かつ感動的だった今回の阿久根滞在だったが、その中でも「ハイライトは何か?」と聞かれたら、僕はこの経験を挙げる。
子供たち、そしてその親御さん、さらには近所のおばあちゃんと阿久根で水揚げされた深海魚を囲みながら談笑をした時間だ。

実はこの体験は偶発的に生まれたものだった。
ワーケーションプログラム中のとある日。職場体験を終えて宿に帰り着くと、一本の連絡が。
「タカエビ漁船が港に戻ってきて水揚げをするから、深海魚が見られるかも。」
正直ヘトヘトではあったが、これは行くしかない。そう思い、宿から自転車を爆速で漕ぎ、近くの漁港に向かった。
辿り着くとそこには、スーパーなどでは見たことがないほど真っ赤でキラキラと輝くタカエビ(ヒゲナガエビ)と、魅力的な深海魚の山々。僕の疲れは一瞬にして吹き飛んだ。漁港のおっちゃんに了承を得て、深海魚の山を手探りする。まるで宝探しでもしているかのような気分だった。

ちなみに、山積みの深海魚は食用ではなく養殖魚の飼料の原料などに使われる。水揚げされたばかりでまだ新鮮なので、食べようと思えば食べられるとは思うが、今回は標本用に何匹か頂戴した。
そして持ち帰った深海魚たちを宿の前で仕分けていると、先述した通り、子供たちやその親御さん、そして近所のおばあちゃんたちが集まってきたというわけだ。そりゃそうだろう、、、普段見ることのない色や形をした魚を道端に広げているなんて怪しすぎる(笑)
そうして、突如として三世代にわたる深海魚鑑賞会、名付けるならば「路上水族館ワークショップ」とでもいったようなミニイベントが始まったのだった。生の深海魚にしどろもどろしていた子供たちも、時間が経つにつれて自ら手を伸ばして触るようになった。さらに興味を持った子供たちは、次から次に「この魚は何?」と、僕に目を輝かせながら矢継ぎ早に質問をしてくれる。それを見た親世代も、子供たちと同じ目線まで屈んで深海魚に触れる。

「ああ、こういうのだよ。こういうのがしたいんだよ。」

僕は、そう思った。形はワークショップであれなんであれ構わない。自分の活動をきっかけに、こうして人々が魚に興味関心を寄せてくれることが僕にとっては何よりも幸せな時間なのだ。
下の写真を見てほしい。

こんなに魚をまじまじと見つめながら、掴んでは感触を確かめる子供たち。こういう機会・光景って、現代においてはなかなか無いと思う。これから先どういう形であれ、子供たちに対してこうした機会を創っていきたいと強く感じた。そして、これこそが僕のしたいことの一つなんだと「再確認」できた時間だった。

さて、話は少し変わるが・・・
僕はこれまでの経験を活かして、新たな挑戦をしようとしている。
「3ヶ月で鮨屋を開く大学生」という企画だ。
※企画に関しては以下の記事をご確認ください↓↓

そして、阿久根滞在中にこの企画のSNSを開設。記念すべき1投稿目はショート動画をアップした。ありがたいことに1本目にして、2023年12月5日現在70万回以上再生していただき、かなりの反響があった。その一方で、企画の内容が内容なだけに厳しい意見も多数寄せられ、中には少し悲しい言葉もいくつか寄せられた。
そういった状況の中での今回の偶発的な体験。子供たちやその親御さん、近所のおばあちゃん、みんな喜んでくれていたが、何より一番元気をパワーをもらえたのは僕の方だった。僕が一番嬉しかった。だからこそ、この経験は僕の「再確認」と同時に「再出発」の経験ともなった。これから先も、どんなことがあろうとも、“自分の好きに真っ直ぐに生きていいんだよ”という想いを持って活動を続けていき、こうした方へ少しでも恩返しできたらと思う。

ありがとう、阿久根。また来るね。

これで、僕の阿久根滞在記はおわり。
一人一人に感謝の言葉を伝えたいが・・・
これから先も長くお付き合いさせていただけそうなご縁もたくさんいただいたことだし、また次回以降阿久根にお邪魔する際に直接伝えることにしようと思う。
ありがとう、阿久根。また来るね。

読者の皆様。ここまで拙い文章を読んでくださりありがとうございました。
ぜひ、あなたも一緒に阿久根に行きませんか?
魚のことでしたら、たくさん案内できると思います(笑)
いつでもご連絡ください。

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