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【洋書多読】1984 [Penguin Readers](172冊目)
ジョージ・オーウェル原作の『1984』を、Penguin Readersで読み終わりました。
ジョージ・オーウェルの『1984』は、言わずと知れたイギリス近代文学の傑作です。
全体主義国家に暮らすウィンストン・スミスという男性が主人公の物語で、監視社会、共産主義、言論統制などといったテーマを深遠に取り扱う本作は、刊行が第二次大戦後の1949年であったことから「予言の書」として読まれてしまうくらい、20世紀後半〜21世紀の社会のある一面を、的確に映し出しています。
僕が今回読んだのは、ジョージ・オーウェル原作のそれではなく、Penguin Readersシリーズとして刊行されているものです。長さは原作の3分の1程度、使用されている語句なども、英語学習者向けに制限されています。
巻末には単語のリストや「After Reading Question」などといったExercisesも用意されていて、外国語として英語を学ぶ人々が英米文学を教材にしながら英語力を高めていけるように設計されているようです。
レベル6のRewrite版『1984』はなかなか良くできた作品だったけど…
英語学習者向けに文字数が制限されている、ペンギンリーダーズの『1984』ですが、今回僕が手にとったのは「レベル6」にカテゴライズされている『1984』でした。
出版社によると、本書の英語レベルはCEFR標準でB2となっていました。英検だと準一級クラスということになります。
使用語彙を制限されたグレーテッドリーダーズなので、文章の好みは分かれると思います。個人的には原作のストーリー展開を忠実に再現し、それなりに難解な語句などを用いながら書かれていて、よくできていると思いました。
『1984』の独特の世界観と、淡々としていて抑揚に乏しい(つまり学習者にとっては読みやすい)英語がなんだか絶妙にマッチしていて、それほど強い違和感は感じない作品になっていました。
原作のハラハラさせる感じや、本書のなんとも救いのない感じなども十分伝わってきましたし、作品の完成度としては、高いといっていいんじゃないかなと思いました。
が、やっぱりオーウェルの1984の世界観の全てを映し出すには、2万数千語というのは若干物足りないのも事実です。
Penguin Readers(ペンギンリーダーズ)とは?
Penguin Readersは上述のように、英語学習者向けに使用する語彙や文法の難易度を学習者の習熟度に応じて制限して書かれた読み物のことで「Grated Readers(グレーテッドリーダーズ)」なんて言われたりしています。海外の出版社から何種類か発売されています。
その中でも最も有名なもののひとつがこの『Penguin Readersシリーズ』です。
レベルはPenguin Readersが「Starter」から「Level 7」までの8段階、先日ご紹介した「Oxford Bookworms」シリーズは同じく「Starter」から「Stage 6」までの7段階になっています。
レベル感は大体どのGrated Readersも似たりよったりで、CEFR A1〜B2−C1まで幅広く用意されています。どのグレーテッドリーダーズにするかは、読みたいタイトルがあるか?そのタイトルは自分の英語レベルに応じているか?など、好みで選ぶのがいいと思います。
例えばオーウェルの『1984』は、Penguin Readersでは最高レベルのLevel7で用意されていますが、Oxford Bookwormsシリーズでは「Stage 4」のものが販売されているので、レベル感に応じて選ぶなどです。
まとめー語彙力や文法知識だけで、人は英語を読むのではないのかもしれない。
というわけで、Penguin Readersの『1984』をご紹介してみました。
上述のとおり、本書も十分『1984』の世界観を堪能できる内容になっていました。
が、一方で「ネイティブがネイティブに向けて書いた児童書」を読み慣れている僕には、若干不自然な英文だなぁ、という印象が拭えなかったのもまた事実です。全体主義国家に暮らす主人公を始め、登場人物の心の動きや機微などの文学的な表現はカットされている印象でした。
これらのグレーテッドリーダーズは、「毎日読むこと」が大切な多読において、読むものがないときなんかに手にとるようするのがいいのかな。基本的には、ネイティブ児童向けのイキイキした表現のあふれる英文になれていくほうが、英語の語感とかリズム感といったものが早く身について、長い目で見ると学習効果は高いと思います。
英語って、英単語の数とか英文法の知識を量的に拡大することだけで読めるようになるものではないのかもしれない。というのが最近僕が多読について考えていることです。
生き生きした生の英語にできる限り触れていく中で、僕たちの言語とは、文法も発生の仕方も、何もかもが違う「英語」という他者に少しずつ身体に馴染ませていくという作業が、最終的には英語習得への近道になるのではないだろうか?そんな感じがした『1984』でした。
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