デジタル社会に警鐘日弁連シンポ プライバシー権危機〜すべてがNになる〜
2022年9月25日【2面】
日本弁護士連合会は24日、神戸市内で、「デジタル社会と人権」と題したシンポジウムを開き、慶応義塾大学大学院の山本龍彦教授がオンラインで講演しました。同会が29日に北海道旭川市で開催予定の人権擁護大会のプレ企画です。
山本氏は、高度に発達した資本主義社会では、資本家がこれ以上「物質世界」で収奪できる領域を見いだせなくなったため、収奪の対象を個人の「精神世界」や「認知領域」に広げていると指摘しました。その上で、グーグルなど巨大プラットフォーム企業が、人々のさまざまな情報を収集し、人工知能(AI)を活用して行っているプロファイリング(人物像の推定)は、憲法に保障された内心の自由やプライバシー権を危機にさらしていると強調。これらの企業は「アテンション(関心)・エコノミー」というビジネスモデルを採用していると述べました。
山本氏は、これは情報の優劣や中身、信頼性よりも人々の「関心」を引くことに重きを置き、ユーザーの閲覧履歴などから趣味嗜好(しこう)や心の中身をAIで細かく予測し、その嗜好に合わせた情報をユーザーに大量「投下」するもので、「関心」を得るために刺激的で扇情的な内容となり、これらの情報を見続けていると自己洗脳のような状態に陥り、情報を自己決定できなくなると警鐘を鳴らしました。
その上で、欧州連合(EU)ではGDPR(一般データ保護規則)で、自己情報コントロール権が確立されているが、日本ではデータの保護は基本的人権として認識されておらず、個人情報の自己決定権も基本的人権として確立されていないと指摘。AIのような技術からの保護を目的とした、権利章典を考える必要があると訴えました。