上野動物園へ行ってきた
子どもたちにパンダの双子を見せてあげたくて、休日に合わせて抽選を申し込んでいたが一向に当たらない。
意地になって平日ひとりでも観に行ってやると抽選を申し込み続け、ようやく当選したので本当にひとりで上野動物園へ行ってきた。
子どもがいる不自由さや、コロナ禍の窮屈さを身をもって経験して、ひとり遊びはすっかりと板についてはいるものの、動物園に大人ひとり行くのはどうなのかと少し不安だった。
中に入れば親子の他、旅行者や外国籍の方、友人同士、色んな関係性の人たちがいて、そして私のように一人で来ている人も多く見かけることができた。
そのほとんどは立派なカメラを首から下げているのが特徴だっただけに、私のような身軽な格好で歩いているのは少し浮いていたかもしれない。
園に入ってすぐの昔からあるパンダ舎にはシャンシャンがいて、こちらは予約不要のため多くの人が並んでいた。
私は双子もこのパンダ舎で観られるものだと思っていたのだが、今いる東園の反対側、西園に新たにできた「パンダのもり」へ行く必要があるようだ。
最後にこの動物園に来たのはいつだっただろうか。
園内の様子も随分と様変わりしている。
移動時間を含むと予約時間の少し前に着くことができそうだ。
私は東園で象を観て、猿山の前を通り、西園へと向かった。
ひとり軽快に歩いていると、かつてのモノレールの駅やレールが視界に入ってくる。
当時大人150円、子ども50円だっただろうか。
乗りたがる子どもと列に並んだことが懐かしい。
再開計画中とのことだから、いつかまた乗れる日が来るのだろう。
その時、子どもは果たして一緒だろうか。
私はひとりで乗っているのだろうか。
西園ではペンギン、フラミンゴ、ハシビロコウを始めに観た。
思いの外自分が鳥好きであったことを発見した。
それからキリン舎の前のベンチに座り、園の入り口すぐそばにあるスタバで買っておいたコーヒーを飲み一息つく。
持参タンブラーに熱いコーヒーを淹れてもらった。
外は湿度が高く、気温は30度。
太陽は真上の時間帯に汗だくになりながらコーヒーを飲む自分。
キリンが観たくて座ったベンチは日差しを避けようと試みた結果、実は隣のサイの展示スペースの方がよく見えて、ドスドスと巨体を揺らして限られた場所を行き来するサイの姿を眺めることになった。
子どもがいたらこんなヘマはしなかっただろう。
大人ひとりだからできるこんな大雑把が楽しい。
そろそろパンダの時間だと、観覧の列に並ぶ。
QRコードや身分証明を見せ、中へと進んでいく。
10名程度のグループに分けられて観覧するのだが、グループごとに同じ注意事項を声高に説明する警備員さんの顔には、明らかな疲れの色が見て取れて気の毒だった。
パンダは確かにいた。
床の上には背中を向けて眠る大人のパンダ(おそらくシンシン)と、
そのすぐ側の木の上で眠る緑のラインが入れられた背中を受けるシャオシャオ、
少し離れた木の上で顔をこちらに向けているものの、枝に阻まれてよく見えない寝姿のレイレイ。
一回レイレイがあくびして寝返りを打っただけで、微動だにしないパンダ親子を写真を撮るも、きれいに磨かれたガラスに人間が映り込んでしまう始末だ。
正直テンションはそこまで上がらず、観覧制限時間の2分は一瞬で過ぎ去った。
双子のパンダを観たぞという事実だけ作って移動すると、パンダのもり出口近くにいるレッサーパンダに人だかりができていた。
活発に動き回り、枝の先に刺さったフルーツを手で外して食べる姿に、可愛いかわいいと、歓声が上がっていた。
その後ハシビロコウとペンギンをもう一度観てから、蓮池に沿って設置されたベンチに座り、再度熱いコーヒーを飲んだ。
——熱い
——外からも中からも熱い
園内ですれ違う人はみな、髪が汗で額に張り付き、薄着姿にハンディ扇風機を持っている人もいる。
曇ってはいるものの、まだ夏の暑さに慣れない体には堪える日だ。
汗を流しながら東園へと戻り、シロクマだけを観てから動物園を後にした。
子どもがいると全ての動物を隈なく見せてあげたいと意気込むが、自分ひとりだけだと好きな動物だけを観ることができて何と楽しいことか。
暑い中、ひとり動物園を大満喫した午後だった。