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子には綺麗なものを触れさせたい

漢字ドリルで「シんだ」を漢字に直す問題が出た。
我が子は書くことができず私はバツをつけた。

この夏休みの期間
子は課題として漢字ドリルを毎日解いていて
間違いがあれば私は躊躇なくバツをつけてきた。
しかし今回は間違ったことに
私はどこか安心する気持ちがあった。

子が幼稚園に入ったくらいの頃だったか
テレビニュースをつけたら
トップニュースは他国の戦争のことで
ミサイルが大量に発射されたり
兵が銃を撃っている映像だった。

別の日には残虐な殺人事件が
国内で起きたことを事細かに説明し
犯人の凶悪そうな顔写真も写されていた。

キャスターも仕事だ。
ニュース、情報を得ることは大切だ。
しかしこんな年端もいかぬ子に必要なのか?

私は非常に迷った。
——こんなに小さいのに汚れた情報はまだ必要ない
——綺麗なものだけ目にも耳にも入れていればいい
そう結論づけてテレビニュースを
見せることはやめてしまった。

この先生きていれば嫌でも汚れたものを
見聞きする場面はあることだろう。
今くらいはそんなことを知らずに過ごしてほしい。
親のエゴでしかないかもしれないが
私は本気でそう考えていた。

日光東照宮
三猿
幼少期は悪いことを見たり、聞いたり、話したりせず、
素直なまま育ってほしいという親の思い

私はこの教えは親の本意だと信じている。
幼少期にあえて汚れたものなど感じさせる必要はなく
ただただ真っ直ぐに育って欲しいと願った。

誰しもが通る「死」という終点に
どうたどり着くのか。
自然なのか、外的要因なのか…
好奇心旺盛な子はなんでどうしてと
聞いてくることだろう。
身を守るためにも知るべきことだが
もう少し先であってほしい。
そう思ったのが数年前のこと。

年月は流れ
我が子も随分と成長した。
死という意味を理解し、
また人だけでなく生物というものは
いずれ死に至るのだと理解するまでに育った。

あれだけ綺麗なものをと願っていた私だが
今は「死んだ」という漢字を
ノートで練習するように伝える。
矛盾を感じなくもないが
子は成長するのだ。
その成長にあわせて親も変わる必要がある。
なぜなら世の中綺麗なだけではないのだから。

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大須絵里子
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