見出し画像

小松菜

この春、随分と小松菜を買った。
スーパーの生鮮売り場へ行くと、日によるもののほうれん草は150円程度、小松菜は100円で買うことができる。
育ち盛りでよく食べるようになった子どもたちの栄養と量を考え、結果食費がぐんと上がった我が家に小松菜は強い味方だ。

実は私は小松菜が得意ではなかった。
どちかかを選ぶのならほうれん草を手に取る。
しかし先述の通り、食費を考えると1.5倍も違う値段を前に、自身の好みとは裏腹に小松菜を選んでしまう自分がいた。
小松菜の独特の苦味というか、えぐみのある味と、あのなかなか噛みきれない繊維の多さが苦手としている理由だ。
唯一美味しいと思える料理は、小松菜と油あげの煮物だけ。
それ以外の小松菜料理も、小松菜が入った料理も、我慢して食べるのが常だった。

子どもには、どうしても嫌いなものは無理してたべなくていい。
食べたことがないものは、一口でいいから挑戦してみよう。
月日が経って食べられるようになることもあるから、数年に一度くらいは食べてみよう。
そんなことを日頃から伝えている。
私の小松菜への想いは「好きではない」程度の軽度のマイナス感情なため、食べられないわけではない。
数年間隔どころではなく毎年挑戦しているのだが、子どもの頃から何十年もこの気持ちは変わることはなかった。

今年も小松菜への態度は変わらず、頑固なまでに油揚げと一緒に煮物にしていた。
そこまで覚悟をしないと食べられないのなら、小松菜くらい食べなくても大丈夫と思うかもしれないが、
日々のレパートリーの中で子どもが美味しいと食べるものがあるのなら、私は子どもの好みを優先したい。
しかしある日、うっかりしたことに油あげを切らしてしまったことがあった。
カット済みの冷凍の油揚げで、料理にそのまま入れればオーケーという大変便利な品物だ。
どうしようかと考え、他の煮物に入れて小松菜味の煮物が出来上がるよりも、小松菜単体と戦ったほうがいいと思い、初めて小松菜のお浸しを作ることにした。

作り方は至ってシンプル。
小松菜をひと袋丁寧に洗い、包丁で根本を切り落とす。
それをホットクックに入れて「ほうれん草・小松菜(ゆで)」のメニューをセットしてスタートボタンを押す。
待つこと10分で完成。
なんて簡単。なんて便利。
そして口にした小松菜のお浸しは、とても美味しかった。

それから繰り返しお浸しを作るようになり、近頃は週に2、3袋は買うようになった。
栄養価も高く、簡単に作れて安く、家計の味方となる存在になった。

小松菜が美味しいと感じられるようになったのは、年のせいか、ホットクックのおかげか、それとも気持ちの変化なのか全くわからないが、
大根と小松菜と鶏肉を和風の味付けで煮込んだ料理もとても美味しいし、決まりきった買い物のルーティーンに変化が生まれて楽しみが増えた。
こうやってかつて苦手だったものが一転好きになると、小さなことではあるけど生活の幅が広がるように思う。
世の価格という自分では変えられないが、流れに任せてしまうのもいいものだなと感じた出来事だった。

よろしければサポートお願い致します。 製作の励みになります。