安全歩行を
雨が降る中
徒歩で子を習い事まで送ってきた。
こんな天気の日は
夕方の早い時間であっても
辺りは真っ暗に近い。
寒いからと早歩きで進んでいると
前方にゆっくりと歩いているお嬢さんが見えた。
私はすぐに追いつき
真後ろを歩く形になった。
さっさと追い抜きたいのだが、
この方ゆっくり歩きつつ
右へふらふら
左へふらふらと
安定しないため
なかなか追い抜くことができない。
薄暗く、雨が降り、道幅は狭い。
斜め後ろからなんとはなしに
様子をうかがえば、
ずっとスマホをいじりながら歩いていた。
——だから遅いし真っ直ぐ歩けないのか
内心ため息をつく。
そういえばつい最近も
いきなり背後から女性に抱きついて
逮捕された人がいたな。
ふと思い出した。
犯人になったつもりで
抱きつくことをイメージする。
そっと忍び寄る必要なんてない。
必要なのは思い切りなんじゃないだろうか。
後ろからがばっと…
——だめだ、簡単だ
——簡単に抱きつける
悪いことをするひとが悪い。
でも身を守れるのは自分自身なのだから
あまり無防備なのはどうかなと
心の中で問いかけながら
私は隙を見て追い抜いた。
世の中安全であってほしいと
もちろん願っている。
でもどうか自身を大切にしてほしいと
それ以上に感じた出来事だった。
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