夏の鳴き声
蝉が鳴いた。
1匹の鳴き声が聞こえて、
耳をすませていたら
もう2、3匹の鳴き声も聞こえてきた。
——夏が来る
いよいよだ。
連日続いた雨が止み
久しぶりに明るい光の元で
木の葉の緑色を見た。
鮮やかなその色は、
夏の色そのものだ。
夏の最中には
気にならないが、
始めと終わりに
毎年気になっていることがある。
一番最初の蝉と
一番最後の蝉は
孤独ではないのか?
パートナーは見つかるのか?
タイミングって大事で
早すぎても遅すぎてもいけない。
長年土の中で暮らしていて
ようやく外界へ出てきたのに
数日で命尽きてしまう彼らにとってみたら
なおさらと推測する。
今日もちょっと
はらはらして聞いていた。
——早すぎたんじゃない?
——大丈夫?
夏の終わりには
——まだ大丈夫、まだ大丈夫
と心の中で励まし、
いよいよという時には
——急げ急げ
と援護する。
夏の間、
昼夜問わず大騒ぎして
婚活に励む彼らの生命力は力強く、
そしてあっけなくも終わってしまう。
運命のパートナーに巡り合い、
短い夏をぜひ満喫してほしい。
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