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卵を割る、豚汁を作る
毎朝玉子焼きを作る。
小さな丸いフライパンに
溶き卵を何回かに分けながら流し入れて
折りたたむように巻いていく。
子が小さな頃、
玉子焼き特有の
中が柔らかいのが嫌だと言うから
溶き卵を一気にフライパンへ入れて
片面を焼き、
ひっくり返してもう片面を焼き、
分厚いクレープみたいな玉子焼きを作っていた。
月日が経ち、子は育ち、いつしか
——どうしてうちの玉子焼きは丸まっていないの?
と聞かれることになった。
——あなたの希望通りだからだよ
そう思いつつも
成長とともに好みも変わるだろうと
それからは巻いて作るようになった。
このまま玉子焼きに関する
心温まるエピソードを
伝えられたならいいのだけど、
今日は悲しいかな、老化のはなし。
ここ最近卵をお皿に割り入れる時に
ゴミ入れに卵の中身を入れて、
殻を皿に入れそうになる。
実際やってしまったことも2回くらい。
はっと思いとどまって
慌てて正しい動作に戻す。
一回くらいなら笑い話になるけど
頻度が増えてくるとただ恐怖でしかない。
そして今日、
豚汁を作っていたのに
なぜか醤油で味付けしてしまった。
なぜ…
なぜ……
脳と体が一致していないからだと
家族に言われる始末。
頭の中では豚汁、
口の中でも豚汁をイメージしていた。
しかし私に迷いはなかった。
煮込んでいる間に
洗濯物でも畳んでおこうと
てきぱき動いている最中に
——しまった
——醤油入れちゃった
ようやく気付けたほど
自然な流れで醤油を入れていた。
どうしたというんだろう。
子は成長して食べられるものが増えた。
私はもう体の成長はしないが
精神は成長できるはず。
この数年で家事スキルもアップしているはず。
そうか、心の成長に体が追いつかなくなり、
だから脳と体との間に乖離が生まれたのか。
ということはこれは老化現象ではなくて
心が成長しているという大変前向きな話。
それならば体も追いつけるように
最近さぼっている運動でも再開しようかな。
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