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自転車お母さん

かつて子どもがまだ小さかった頃、
どこへ行くにも自転車だった。

後ろに上の子、
前に下の子を乗せて、
街をひた走る。

買い物へ行けば買ったものが増え、
習いごとがあればその荷物がある。
そうなればそれらも自転車に積んで走らせる。

サーカスで自転車に乗るクマの曲芸のようだと
いつも思っていた。

だから今日、自転車に乗った親子を見て、
久しぶりに曲芸という文字が浮かんだ。
おんぶされるには少し体の大きい子が、
車輪が回るのが見たいのか
大きく左に体を傾けている。

バランスを取るべく
子どもをおんぶしたお母さんは、
自転車をこぎながら
大きく右に体を傾けざるを得ない。

自転車ってこんなに幅を取る
乗り物だったかという状態で、
向こうへと走り去っていった。

バランスを崩して転ばないといいなぁと思いながらも、
曲芸は自転車お母さんが通る道なのだと
どこか懐かしさを覚えた。

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