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カフェで過ごせば

久しぶりに来たこのカフェで、いつもと同じくホットのカフェラテを注文する。
最後に来た頃はこれ程まで暑くなる前で、私は長袖を普通に着ていたし、ホットで頼んでも汗が噴き出るような季節ではなかったと記憶している。

以前別のカフェで、ホットドリンクを頼んで後悔したことがある。
その日は猛暑で、既に熱くなっていた体に、更に熱い液体を注ぎ込んでしまった。
そうすれば体がより熱くなるのは当然のことで、体は冷まそうと汗を流し始めるのだが、体の正しい反応に対して私は残念な気持ちになってしまった。
私はただ、温かいドリンクをほっと一息つきながら楽しみたいだけなのだ。
それなのにどうして汗で服ははりつき、メイクは崩れ放題になるのだろうか。
暑い暑いと汗をかきながら飲んだそれは、ちっとも楽しくも美味しくもなかった。

今日の気温は比較的低く、きっと先日のようにはならないだろう。
半袖姿の私は、街で銀行やドラッグストアや文房具店での用事を済ませて、小腹が空いたところでこのカフェへとやってきた。
自転車で家を出た途端に小雨が降り出し、体は濡れ、体は少し冷えてもいる。
私は早く温まりたかった。

ソファ席の一角に私は座り、マスクを外してカフェラテを一口すする。
まだモーニングをぎりぎり食べられるこの時間帯の店内はとても空いていて、日中のような忙しなさがなく、時間が流れ方が違うようだ。
穏やかな流れの中、見渡せば誰もが思い思いに過ごしているのが見える。
本を読んだり、勉強をしたり、寝ている人もいる。
座り方も自由気ままで、きちんと膝を揃える人、足を組んでいる人、片方の靴を脱いでお尻の下に足を敷いている人すらいる。

ゆったりとした時間の流れに呼応するかのように、私の髪は揺らめき、手を拭いたウェットティッシュと、それが入っていたプラスチックの袋が小さなテーブルの上を横に移動していく。
冷たい風は私の顔に当たり、冷えた体は更に冷えていく。
——クーラーの真下だったか…
見上げれば、高い天井にむき出しの梁がすっと通っていて、そのすぐ脇にどんと大きなエアコンが設置されている。
四方向に付いた吹き出し口の一つが、正に私の方へと向いて冷たい空気を吐き出していた。
——我慢比べだ
席を移動せず、つい意地になる。
無情なまでに風は私へと向かって吹き続け、私は戦いに臨んでからほんの数分で惨敗することとなる。

肌が露出した両腕が寒い。
顔面も首も冷たい。
温かさを求めてカフェラテをがぶりと飲んでばかりで、長く楽しめるようにとラージサイズを選んだのに、瞬く間に中身は空になってしまった。
しかもクーラーのせいか冷めるのも早かったようで、ちっとも体は温まらない。
指先すら冷え切った私の目の前には、風などものともせずに大きなマグカップが鎮座しているだけだ。

あぁ、私はこの時間帯のこのカフェの様子を、いつもと違ったわくわくするこの気持ちを書きたくてペンを取ったのに、ただクーラーへの恨み言しか浮かんでこない。
これ以上ここにいては風邪をひいてしまいそうだ。
頭痛すらしてきた。
まだこの後スーパーと八百屋さんへ行かなくてはならない。
残念だけど、温かい外の世界へと私は戻ることにした。

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大須絵里子
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