SDGs x ビジネス - 利用レポート編 ① -
前回は、中国企業のSDGsへの取り組みを紹介しましたが、日本の企業の取り組み状況を説明している資料も紹介したいと思います。
今回紹介するのは、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)と地球環境戦略研究機関(IGES)が2016年度より毎年発行しているSDGs調査レポートで、資料内のタイトルは「ESG時代におけるSDGsとビジネス ~日本における企業・団体の取組み現場から~」となっています。
同資料の構成は以下の通りになっています。
1.はじめに
2.SDGsの国内外の動向
3.ESG投融資の基礎情報と国内外の動向
4.国内の金融機関によるESG取組み
5.SDGs取組みの経年変化
6.国内の企業によるESG・SDGs取組み
7.おわりに
付録:ESG・SDGsインタビュー&事例集
付録においては16企業、1団体の事例やインタビューが掲載されており、実に45ページのボリュームになっています。
事例の中には今回の資料タイトルが「ESG時代におけるSDGs...」となっている通り、日本でESG投資が注目されるきっかけにもなった年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の掲載もあります。
全て紹介していると、かなりのボリュームになってしまうので、今回は「5.SDGs取組みの経年変化」に絞って紹介したいと思います。
こちらはアンケート形式で調査が行われており、対象はGCNJ正会員(計335企業/団体2)で、回答は186件得られたようです。
最初の質問内容はSDGsの認知度です。
認知度が高いのはCSR担当と経営陣ですが、CSR担当は従来から認知度が高かったですが、経営陣の認知度が上がってきているのは特筆すべき点かもしれません。また、その半分以下の認知度ではありますが、中間管理職も前年比15%増(経営陣は18%増)と認知が広がりつつあるようです。
続いては自社内でSDGsの認知度を上げるためにどのような取り組みをしているか?という質問です。
最多は「トップメッセージ」で、「社報等(紙媒体)」、「WEB」などでの周知、「研修」と続きます。
SDGsは全社で取り組むべきことであるため、トップダウンが多くなるのもうなずけるのですが、やはり1人1人当事者意識を持ってもらわないと、絵に描いた餅になりかねないので、その点で見ると「SDGsバッジ等のグッズの社員への配布」が急伸しているのは、非常に良い兆候に思えました。
続いては、以前こちらでも紹介した「SDG Compass」で定義されているステップにおける進捗度に関する質問です。
SDGsの理解は既に済んでいるところが多いためか、年ごとに減少しています。ステップ2の「優先課題を決定する」が横ばいで、ステップ3以降が増えてきているのは、確実にSDGsが浸透、進行していっている証拠ではないかと思います。
続いては、そのSDGsの取り組みが進展した原因です。
「世間の認知度の高まり」と「トップの意識の変化」が割合も伸び率も多い結果になっています。やはり、内側からだけ、外側からだけ、という片側からの影響だけでなく、「やろう」と「やらなくてはならない(やる必要がある)」という、双方から影響を受けていくのが推進の原動力になるのかもしれません。
続いては、SDGsをどの部門が主体となって推進しているか、という質問です。
SDGsの性格上、CSR部門が主体となっている率が高いですが、私自身は以前にも述べた通り、CSRとSDGsは似て非なるものと考えています。SDGsは経営と密接に絡むもの、というよりはむしろ「経営そのもの」といっても過言ではないと思っているので、「経営企画部門」の割合が増えてきているのは良い兆候と捉えています。
また、まだまだ割合も伸び率も少ないですが、「事業部門」が主体になって推進されていくことにも期待したいです。
続いてはSDGsについて、どのステークホルダーと連携しているか、という質問です。
やはり、はじめは内側から、ということかと思いますが、「従業員」との連携が最多という結果になっています。ただ、顧客や取引先、地方自治体など外部のステークホルダーとの連携が着実に増えてきているのは注目すべきポイントと思います。内側での推進に一区切りがつき、準備が整い、外部との連携も増えてきているのでしょう。
続いては、SDGsの取り組みをどのように外部公開しているか、という質問です。
最多なのは「トップメッセージなどの課題認識表明」で、「重要課題・方針への反映」、「事業との紐づけ」と続きます。「新プロジェクトの立ち上げ発表」が伸び悩んでいるようにも思いますが、SDGsに関しては、以前にも述べた通り、無理して新しいことをするのではなく、既存の事業との結びつけ、マッピングが重要と思っているので、悲観する内容ではないかと思います。
最後は、今後の取り組みについてです。
「社内啓発を強化する」が最多で、「自社の戦略・経営計画に反映する」が肉薄する結果になっています。社内啓発の強化は、2017年と比較しても大きな変化はないですが、戦略や経営計画に反映する、というのは右肩上がりが続いています。また、「評価の仕組み・指標を検討する」など、自社の取り組みを評価していくという比率も増えているので、戦略・経営計画への反映が増えている結果とあわせ、各企業でのSDGsへの取り組みが本格化してきているといえるかもしれません。
さて、駆け足で「5.SDGs取組みの経年変化」の内容を紹介してきましたが、その他のパートにも非常に有用な情報が掲載されていますし、冒頭に申し上げた通り45ページとそれなりのボリュームではありますが、興味のある方は一読されてはいかがでしょう。
ただ、GCNJのサイトをみますと、最新版となる「SDGs調査レポート2020」が近々公開されるようで、3/25(木)13:00からはオンラインでローンチイベントも行われるようです。
「コロナ禍を克服するSDGsとビジネス」というパネルディスカッションなども行われるようですし、面白そうなので、私は参加してみようと思っています。