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SDGs目標設定五原則

先日、SDGsに取り組もうとした時の「準備」について書きましたが、色々と見たり聞いたりしていると自分たちが何をしていて、それがどの目標と合致しているのか、というマッピングまではできているが、その先をどう進めて良いのかわからないという事が少なくないように感じています。

マッピングが終わって自社の事業とSDGsが関連付けられたら、それを公開して終わり、ではなく今後の進むべき道を決め、目標、ゴールを決めていくことが大事です。

今回はそのSDGsへの取り組み目標を決めるにあたり、大事になる五原則を自分なりにまとめましたので紹介したいと思います。

1. バックキャスティング(Backcasting)
こちらSDGs関連ではよく目・耳にする言葉ですが、要は現時点から目標を決めていくのではなく、「あるべき」もしくは「ありたい」未来を創造し、そこから逆算していく手法です。

これは超長期目標になることも多いと思うのですが、自身が経営者だった場合、自身が経営者である間に達成する目標ではなく、次世代もしくはその次の世代に達成してもらう目標でも良いと思っています。

そもそも、政府が掲げる「2050年に二酸化炭素実質排出量」ゼロという目標も、それが達成される頃には、様々な関係者が代変わりしているでしょうし、今すぐには不可能だが、ぜひとも達成したい目標を掲げ、そこから逆算し、中間目標などを立てていくのも良いと思います。

2. アウトサイド・イン・アプローチ(Outside in approach)
こちらは、先日紹介したSDG Compassでも紹介されていますが、世界的、社会的な視点では何が必要とされているのか、から目標設定を行う手法です。

対義語として、インサイド・アウト・アプローチがありますが、こちらは自社でできることは何か?つまり過去の延長線上の目標設定です。事業戦略というと、このインサイド・アウト・アプローチの手法が多いように思いますが、ことSDGsの目標設定ではアウトサイト・イン・アプローチでの目標設定が有効に思えます。

このアウトサイド・イン・アプローチとインサイド・アウト・アプローチの関係は、企業マーケティングで言うところの「マーケットイン」と「プロダクトアウト」の関係にも似ている気がします。

3.トレードオン(Trade-on)
こちらはPeter David Pederson氏の造語とのことで、以下のように定義されています。

「社会価値の創造に貢献すればするほど、企業価値も向上する。あるいは、良い企業が発展すればするほど、社会・自然環境の健全な営みが促される」

企業価値や利益を上げるがために、環境や社会に悪影響を与えてしまったり、その逆に環境や社会に好影響をあげるために、企業利益を犠牲にする「トレードオフ」の関係ではなく、双方が良くなるような取り組みを行っていくべき、ということです。

この辺がSDGsとCSRの大きな違いと思っています。企業の経営が傾けば、「社会貢献どころではない」とまず真っ先にCSRなどの貢献活動が停止されそうですが、SDGsのように本業を軸に社会貢献・課題解決を行っていれば、そのようなことは起きえません。

SDGsがサステイナブルな活動であるように、それを支える企業や個人もサステイナブル、つまり持続していけることが大事です。そのためには本業からかけ離れない、「トレードオン」の目標を設定すべきです。

4. 全員参加(Full-participation)
前々回の「SDGs x ビジネス - 利用レポート編 ①」で、企業におけるSDGs推進活動主体にはCSR部門や経営企画部が多かったですが、ここに経営者を加えても、その他内部関係者は、上の方がもしくは何か特別な部署が勝手にやっていること、と「笛吹けど踊らず」、「他人事」になりかねません。

企業であれば社員全員の日々の活動がSDGsに関連してくるような目標設定をし、そこに属する全員が「自分ごと」と思えるような目標設定が必要と思います。

中小企業のSDGs推進事例として有名な「大川印刷」さんも最初の頃は、社員の方々が「他人事」で推進に苦労されたようですが、作業場内にSDGsの達成すべき目標を看板として貼り付けたり、社内横断的なSDGsを推進するプロジェクトチームを設けたりしながら、社内に「自分ごと」を根付いていかれたようです。

SDGsの概念にも「誰一人取り残さない」とうたわれていますが、それは恩恵を受ける側だけでなく、実施する側にも適用できる概念ではないでしょうか。

5. パートナーシップ(Partnership)
こちらは目標17にも掲げられていますが、そもそもSDGsは17個の目標と169個のターゲットがあり、とても1人や1社で実現していけるものではないので、様々なステークホルダーとの連携が必要なのですが、これに限らず1つの目標を達成していくにも自身、自社だけでは達成しづらいことも多いです。

例えば、サステイナブルな洋服を生産しようとしたときに、自社で素材作りからお客様の元に完成品を届ける「ラストワンマイル」までを一気通貫で行っていれば、自身・自社だけで話しは完結するかもしれませんが、そういったところは非常に少ない、というか私の知る限りはありません。

そういった場合、素材づくりをしている取引先や最近はやりのファブレスであれば外部工場、輸送を行うパートナーなどにも一緒になって取り組んでもらう必要があります。

そういう意味では、SDGsという共通言語は共通理解の手助けになります。

もちろん、SDGsへの取り組みが十分ではない、または取り組む気もないというビジネスパートナーもいることでしょう。そういった観点でもパートナーの取捨選択というのは、今後ますます大事になってきます。

これらを5つの原則をベースに、数値化(KPI)とスケジューリングを行って、自社の目標を決めていきますが、もちろん3番でも触れたとおり、本業からかけ離れた目標にしない、ということも非常に重要です。

また、先にも触れたとおり、超長期の目標になることが多いので、マイルストーンを設け、月・四半期・年ごとに小目標・中目標を設定していくのが良いでしょう。

さて、今回は目標設定の原則について私論をご紹介しましたが、次回以降では、その立てた目標の評価方法、指標の設定についても考えていきたいと思います。

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