AI vs うちの子供
少子化時代の個人的生存戦略(前記事をご覧ください)を押し進めるうえで、ぜひうちの子供にはAIに勝ってもらいたいと思いつつも、それってけっこう難しいのではと思い始めているオッサンパパです。
1BIT量子化とかローカルでも動きそうな小型AIでも、オッサンパパより物知りだし。
子供がAIに負けないためにどうすりゃいいの?
それがわからないから、困っている。
そこで早速、そのものズバリの本を買いました。
その名も、AIに負けない子供を育てるです。
400円くらいの中古ですが。
AIに負けないためには、読解力があればよい?
2019年に発行されたこの本の冒頭で「誰もが、誰かをねたんでいる」と「誰もが、誰かからねたまれている」は同じか? という問いが最初に出ていました。これがAI読み(形態素解析などでぶつ切りにして文を読む読み方)をするAIには判断が難しいとありましたが、技術は進歩している筈です。本当にAIには難しいのか2024年のAIであるChatGPTさんに説明してもらう。
正しい説明ができているようです。集合論的に説明してというと、チャットGPTは数式も沢山だしてくれます。
AI読みでも、2024年現在のAIだと普通に正答できてしまうようです。
本の内容は、AI読みだからAIに読解力はない。従って人間がAIに負けないためには読解力をつければよいと言うロジックだと思いますが、もしかして、読解力があってもAIに負けない人材になるのは難しいのかも?
AIに負けない子供を育てるは結構厚い本なのですが、その半分程度が著者の方が開発したRSTという読解力試験の説明になっています。このRSTを受験して自分の読解力をテストし、弱点部分を訓練などで上げる事がAIに負けない人材になるために推奨されているわけです。
本にはRSTのサンプル問題が掲載されていましたので、チャットGPTに幾つかやらせてみたら、ほとんど正解でした。一問だけ引用しておきます。ひねくれたオッサンパパが幕府と答えて間違えたやつ。児童手当もらっても、政府ではなく国民が払っているだけですからと、すぐに思ってしまうタイプなのです。
現在のAIを相手にしたとき、読解力だけではAIに負けない人材になるのは難しそうです。
読解力を身に着けても足りない
論理国語など論理的に読み解く読解力において、残念ながら人間の優位性はAIに対してどんどん失われていくのではないでしょうか。むしろ、契約書やら特許の文章を正確に読むだけの読解力はAIの得意分野になりそうです。
逆に、思い込みやポカミスで適当に読んでしまうことこそ、AIには出来ない人間の得意分野なのかもしれません(仕事だとメリットになりませんが)。
論理的に読めるように人間を訓練することは、人間読みを現代のAI読みに近づける行為なのかもしれません。
この本には、2040年代に社会に出る、うちの子供がAIに負けないために必要な事が書かれてはいないような感じがしました。AGIが数年以内に実用化されると言われている今、AIの進化に対する見積もりが甘すぎると思います。
AIの発展と普及で起こることは、今まで稀少だった論理力(人間は訓練しないとできないので)の大量供給、投げ売り状態なので、大幅に価値が下がってしまうわけです。
AIに負けないためには、創造力があればよい?
論理力が投げ売り状態なら、AIに負けないためには創造力を延ばす必要があると言う話もよく聞きます。
しかし、最近は生成AIが小説やらマンガやらを書いてしまうようですし、逆に人間が書く小説でも、異世界ものとかテンプレートに沿ったものが沢山あるようです。
創造力は、読解力より定義が難しそうです。
こんな駄文を書いていても、創造力と言い張ればそうとも言えるし、いいや、こんな誰も見てないような文章は存在していないのと同じだから、創造力があるとは言えず、あくまで見てくれた人が評価して、創造力があると評価するものだとか。
定義すら曖昧なのに、創造力って、何かして伸びたりするものなのでしょうか。仮になにかが伸びたとしても、それが市場にマッチングして、子供が食えるようになるのかは極めて難しい問題です。
創造力等という訳の分からないものを高めるより、さっきの論理的に文章を読めるようになる方がゴールがハッキリしているので何倍も簡単でしょう。
例えば弁護士と売れっ子Youtuber、どちらもなるのは極めて難しいのですが、少なくても弁護士にはある程度勝ちパターンがあるはずです。不人気の法科大学院ですが試験には3割程度は合格しているようです。要は司法試験に合格すれば明確に弁護士になれるわけです。しかし、売れっ子Youtuberになる方法は全くわかりません。
運の要素も強いし勝ちパターンが無い以上、事実上訓練できません。訓練っぽいものを掲げたセミナーとかはあるのでしょうけど、勝率が悪いから、より勝ちパターンがハッキリとしたルート、例えば大学受験して有名大学に進学し有名な大企業に就職するなどに比べて主流にはなりえていないわけです。
月並みの国と果ての国
創造力? そんなもの訓練でどうにかなるはずもなく。
昔読んだこの本に出てくる、月並みの国と果ての国の話を思い出した。
月並みの国というのは外れ値が少ないが、果ての国はとんでもない外れ値があるというもの。
つまり、月並みの国ではそこそこ暮らせるが、果ての国は時にとんでもない金持ちが誕生するが、ほとんどは失敗するという勝者総取りの世界だ。
おっさんパパの適当な区分けだと、月並みの国の職業は、弁護士、医者、公認会計士からサラリーマンまでが含まれ、果ての国の職業は芸能人、スポーツ選手、作家、YouTuber、起業家などが含まれる。
手堅く行くか、一攫千金狙いかという感じで別れているのだけど、どちらを選ぶのかは個人の自由だし、今まではそれでかまわなかった。
しかし、月並みの国がAIに侵略されて滅亡した場合、おっさんパパも含め大多数の月並みの国で稼いでいた人々は一体どうすりゃいいの? マジで果ての国に放り出されるのという話になる。中間層滅亡に繋がる話だ。
果ての国で重要視される創造力に攻略法は存在しない。手堅く勝つという戦略が取りにくくなり、AIが普及した世界では、誰もが果ての国の一攫千金ギャンブルに巻き込まれる可能性が高まるわけだ。
つまり、創造力の攻略法は存在しないのに、それを使う戦いには強制的に巻き込まれる。
果てに国に放り出される、月並みの国の民
出前やタクシーに評価がされ国レベルで序列が付けられるとか、昭和時代にはあり得ない話だったが、今は普通になっている。
序列が付けられている以上、分布としては、一握りの頂点と、多数の普通の人に分かれている。出前やタクシーは場所という参入障壁がある(どんなに優秀な人手も日本全国は対応できない)から、勝者総取りとはなっていないが、それでもわざわざ評価が低い人に頼まないのではないだろうか。
今は、顧客の人がアプリを見て適当にきめているから揺らぎがあるだろうけど、将来は評価に沿ってAIがアプリから自動選択する可能性も高く、より評価の低い人に仕事が回る可能性は低下するのに違いない。確実に月並みの国は縮小していく。
更に、自動運転や自動配達ができたら、仕事そのものが消滅することになるわけで、さらに月並みの国が縮むことになる。
弁護者や会計士などの職業も、出前やタクシーのように場所という物理的な参入障壁が無いために、論理的に考えることに長けたAIに浸食されてしまうのにちがいない。
こうして、月並みの国から人が次々に放り出されていく。
もちろん、月並みの国から果ての国に放り出されても、その環境に適応し、勝てる人は出てくるだろうけど、当然、負ける人の方が圧倒的に多い。
早期教育から始めて手堅く有名大学までいったけど、月並みの国の高収入職業が軒並みAIに侵略されて良い就職先がなく、まるで投資を回収できなかったという事になる可能性は、将来かなりの確率で起こり得る事だろう。
果ての国の成功した住人なら大丈夫か?
AIの侵攻は月並みの国にとどまらず、果ての国にも達するのではないだろうか。
果ての国では、一握りの勝ち組(外れ値)と数多くの負け組が存在するので、つまり、数うちゃ当たるともいえる。ただし、人間にはコンテンツ等を作れる限界があるので、1人で数を打つことは難しい。
しかし、AIならいくらでも数を作ることが可能である以上、月並みの国ですら安泰とは言えないのかもしれない。
AIが作ったと言うと、なんだと思うかもしれませんが、それが明かされていなければ、全く気にしないで多くの人がAIが作ったコンテンツを喜んで消費する可能性も否定できないわけで。
個人名がブランド化しているくらいの成功者でもない限り、残念ながら創造力がモノを言う果ての国すら安全地帯ではなく、AIに侵食されるのに違いない。
AIは強敵。AIに負けない子供を育てるのは難しい
それなりに稼げて、それなりにワークライフバランスを保てる中間層的な職業だと、AIに勝つのは難しい。
かといって、果ての国でのし上がろうと野望を持っても、そもそも難しいのに、AIが生み出す大量のコンテンツに邪魔をされて、のし上がりは非常に難しくなる。
なにか、夢も希望もない世界が広がっているのかもしれませんね。
1999年には可能だと思われた、AIに負けない子供というのは、なんだかもう無理っぽい。
AIに完敗の子供。それでもお金は下さい
どうにも分が悪いので白旗です。AIにうちの子は負けそうですが、それでも、それなりの給料が貰えれば、AIを人間のライバルとし見なす必要はないわけです。AIに負けても、お金さえ貰えればいいのです。
そして、そのような職業は、いくつか考えられます。
結果より過程に価値がある職業
例えば、将棋や囲碁は今でもAIのほうが強いですが、人間の勝負のほうが、人間が見て面白いわけで価値が高いわけです。野球やサッカーなどもAIxロボットが何れ人間の選手を追い抜くでしょうが人間の試合の価値は失われないでしょう。
つまり、AIに負けてもお金が貰えるわけです。
しかし、弁護士が契約書みたり、公認会計士が計算したり、医師が画像診断する過程を人間がやるから価値があると思えるでしょうか。相談部分で、今のところ人間のほうが優位ですが、ロジックの世界なので将来は何とも言えません。正確で費用が安ければ、将棋やスポーツなどの勝負と違って、その過程に感動を覚える人は少ないかと思います。
過程に価値がある仕事はあるにはありますが、皆が食べていけるほどの広がりはなさそうですし、ある種の個人ブランド化も必要ですので、これらの職業に育てる難度はとても高い。どちらかというと、果ての国の仕事っぽい感じですから。
人間で売り出す職業
AIのほうが高効率だとしても、受け側の人間がそんなものは嫌だと言う流れは確実にあるでしょう。近代工場で作られる工業製品よりハンドメイド品のほうが、なんかいい感じがするのと同じで。
人間が作った、人間がサービスしたというのが、AIやロボットより良いと言う場面はそれなりにあるだろう。
しかし、AIやロボットが作ったものの方が安いだろうから、人間製はそこまで売れないでしょうね。
人間の非論理性を活用する職業
今はまだ、論理力が希少だった時代の流れから、ロジカルシンキングだなんだというのが持てはやされていますが。
AI同士が人間では想像もできない高度な論理力を駆使して戦っているであろう、未来のビジネスや金融市場。
そこへ、思い込みやポカミスを最大限に発揮する人類が投入されたらどうなるのだろう。大きな影響がでるのにちがいない。そして、その歪みから金が稼げる可能性はある。
なにしろ、AIが全部同じロジックで動いていたら、市場は成立しないだろうから、何等かのランダム性は必要になるはずだ。
人間の非論理性は、AIにおける生体乱数生成器として活躍が期待できるかも。それがAIに個性をもたらし、なにかしらの金を稼げる可能性があるかもしれない。ただ、これもそんなには数が要らないでしょうね。
人間業
これぞAI時代の人間の究極の職業。
AIやロボットの方が人間より高効率になってしまったら、AI税やロボット税を創設して再分配をしてくれというもの。いわゆるベーシックインカム。
AIによって、人間が付加価値を生み出すことが難しくなったら、じゃあ、AIが稼いでくださいと言う話になる。
そして、職業人間で給料を貰えばよいのである。これなら、AIは人間ではないので、うちの子は絶対に負けないし、しっかりと給料をもらえる。
AIに負けてもお金が貰えるように育てるには?
AIに負けないように子供を育てる必要はなく、AIに負けてもお金が貰えるように育てる方がより適切ですが、たぶん、育て方の問題というよりは、単純にAIで儲けた人から分けてもらうしかなさそうです。
AI対策という意味では、単に育てればよい
AIに負けても、お金は貰えるだろうから育てれば問題ないと言う結論になります。なにしろ、究極的には人間であることが職業になるわけですから、育てるも何も人間でありさえすればよいのです。
AIが勝手に儲けて、人間様に分配してくださいと言う話です。
人間の格差は変わらない
例えAIが平等に分配したとしても、人間同士の交流で、恐らくは格差が出てくるのではと感じます。
例えば、以下のような理由です。極端な例をいくつか挙げてみます。
オレオレ詐欺師が居て、賢くて論理的なAIはそこに振り込んだらアカンと警告しているのにもかかわらず、気が動転して振り込んでしまうとか。
絶対もうかると言われて、AIは買うなと言っているのに、絶対いけると思って何かわけのわからん投資商品をかってしまうとか。
AIはダメと言っているのに、なぜかホストクラブで散財し、借金まみれになって転落してしまうとか。
AIはアカンと警告しているのに、なんとなくこの人はいい人だなとついていったら、金を取られて、ボコボコにされて埋められてしまったとか。
AIは止めろと言っているのに、金が欲しいので、特流型犯罪の下っ端に応募。
神を名乗る人とAIの言っていることが逆だけど、やっぱり信じられるのは神なので、神と名乗る人に多額のお布施をする。
いくらAIが進歩したとしても、人間の判断はあくまで人間の判断で、非合理なのは変わりません。こうなるとAIではどうこうなりません。そもそも、AIが警告しなくても、自分自身でもヤバイと思っていることが多かったりするわけです。
AIが平等に分配してくれたとしても、人間同士の関係で必然的に貧富の差は広がっていくでしょう。
だから、AIには勝てなくても、人間同士の関係で失点を防げれば、例えAI時代であっても、生きる上での問題は大きく減るのに違いありません。
人間の不合理に負けない子育てが必要
小さな部分では、タバコを吸う、酒を飲むとか、限定商品を購入したくなるとか、昭和の芸人植木等も歌っておりますが、わかっちゃいるけどやめられないというか。この程度であればまだよいのですが。
大きな部分だと、僅かな金で特流型犯罪の下っ端に応募とか、どうみても人間の不合理なので、AIに負けない前に自分に負けない教育が必要ではないでしょうか。
「わかっている」時点でAIを含めた論理的思考の出番は終わりなので、「やめられない」をどうにかしないと、意味がありません。
人間の不合理を教育でどうにかできる?
スーダラ節を聞いただけで、無理っぽい感じがします。おっさんパパが20代のころにスーダラ伝説が少しだけ流行っていました。
チャットGPTに聞いても、ダメそうです。
いや、だから、うすうす気づいていてもやっているんだって。それでは、気づく力があっても無意味だろうに。
どう抑制するか
アングリーマネジメントとかいろいろあるようです。深呼吸してくださいとか。3秒待ちましょうとか。
子供にはAIには負けてもいいから、せめて抑制力は身に着けてほしいものですが、わかっちゃいるけどやめられないなので、なかなか難しそうです。
AIに負けてもOK、自分の不合理には負けない
取り合えず、うちの教育方針はこれで行こうかと思います。結論としては、AIに負けても構いません。
お酒飲むとかそういう、わかっちゃいるけどやめられないはまだしも、どう見ても悪手という選択をする自分に負けないでというものでしょうか。
しかしながら、これやりゃOKという教育法は無いわけで、取り合えず、あんまり具体策はありません。
受験は遊びを我慢して勉強とか、そういう印象あるから抑制力強化に役立つのでしょうか?
抑制を養成する手っ取り早い方法が受験?
むかし、アメリカの有名大学に進学し、すごい学歴を持っている政治家の方の罵倒する音声が流出して話題になったことがあります。
そんなことすればどうなるか、少し考えれば分かる筈ですが、しかし学歴があってもできないわけですよね。
どうも人間の場合、論理的な思考能力と不合理に負けない能力は必ずしも一致していない場合もあるのではと、おっさんパパは50年以上生きてきましたが、今は、そんなふうに思っています。
だから、これはなんとも言えない。
子供の性格も千差万別だろうし、遺伝とかもあるかもしれないし、これでOKみたいな抑制力攻略法は、なかなか無いと思う。
そもそも、人間の行動は意識される前に決定されていて、意識はそれを認識するだけという話もありますし、意識的に抑制するなど無理なのかもしれません。
適当に、こども見ながらやっていくしかない
性格的に抑制できていて、特に何もしなくてもOKという子供もいるだろうし、逆の子供もいる。
親ガチャもあるけど、子ガチャも確実にあるということで、うちの子供を見て試行錯誤していくしかなさそうです。
取り合えず、AIうんぬんより伝統的な教育でいいかも。