「深謀遠慮」なプーチン大統領の戦略
ロシア軍のシリア撤収開始がはじまりました。
しかし、そこには、ロシアの虎視眈々とした戦略が隠れていると、苫米地博士は指摘します。一体どういうことでしょう?今回も、苫米地博士の発言の文字起こしです。(2016年3月17日 バラいろダンディより )
「新聞とか、ニュースがあまりにも浅いんで、ちょっと、しっかりと説明した方がいいと思ったんで。まず、ロシアのシリア撤退ってのは、単なる。そのシリア和平ってのは、ジュネーブでやってますけど、それをロシアが主導しようっていうことですよね。
まあ、そこのレベルであったりとか、あとは、経費を削減したいんじゃないのか、戦費かかってます。というレベルで見るのは、ちょっと甘いと私は思っています。
ですから、プーチンさんは、トランプさんを褒めるんですよ。そういったことも深く考える。あの、四字熟語ですけど「深謀遠慮」っていう言葉が、まさに今回はプーチンさんの政策そのものだと思うんですけども。
で、先に、米露の共通の前提を分かって欲しいんですけども、実はこれ、ソ連時代
だったんで日本ではあまり知られていないんですけども、ソ連時代はアフガニスタンで
長期駐留して凄い痛い目にあってんですよ。ソ連がね。今でいうロシアですから。
その時、CIAが対ソ連で育てた人たちがアルカイダで、それが逆にアメリカの時代になってひっくり返ってるみたいな歴史があるんで。
で、アメリカはアメリカでイラクの問題がありますよね。今でも起きている、実際の戦闘で死んだよりも、その後、警備行為で死んだほうが多いっていうね。そういったドロームナウ両方も経験しているんです。
それぞれの国内世論はだから、それ2度とやめてくれっていう前提をまず、理解した上で、その上で、シリアにおける米露の軍事行動の目的が大きく違うんです。
アメリカは単純に対テロなんで、イスラム国を「いなくなれ!」です。ロシアは違うんです。もうこれをシリアという地域。これは、シーア派を含むですよね、スンニー派、シーア派っていう関係がありますよね。シーア派は、もうまさに、イランで有名ですけど、それから、人口85%スンニー派。そういった、国際的な部分だけではなく、中東全体を見ての戦略だと思ってください。
そういった意味で実際、軍事行動でどう違うかというのを見ると、まず米は簡単にいうと
まあ、イギリス軍とかトルコ軍は戦闘機出してますけど、米に関していうと、いわゆるリーパーとかプレデターっていう3000フィートくらい、1kmくらいのところをこんな飛んでいって空爆する。
ミサイル、3,400km/hでファーンと飛んで行くんでそうすると10秒後くらいで当たるんですけど、1km先で飛んでいるもの下から見えないですから、どっかから来た分かんないでドカーンっみたいなのでとやっているのがあって。
それで、誤爆が90%までいっているって一時は批判されましたよね。で、そういった、その空爆しかやってないんですよ、本質的に。まあ、特殊部隊ちょっと、行ってますけど、いわゆる地上軍投入はしてない。
これは、オバマさんが出来ないわけですよ、もうアメリカの世論があるわけで。で、じゃあロシアはどうか?っていうとこれ、全然違うんですね。
あの、いわゆるスホーイ34っていう最新鋭からスホーイ24まで。あとは、攻撃ヘリまで入れて40機ぐらいまでがいて、4000人の地上軍
完全武装の現代の4000人の地上部隊っていえば、とてつもない数に相当しますから、
それが、実際に行って、そしてそのS400っていうこの後話をしますけど、地対空ミサイルを入れて、ものすごい本気でやって、5ヶ月間で簡単にいうと1年半かかってその間に実は、パリにまでテロが広がってって、イスラム国が封印出来なかったってのを世界は、アメリカを見ているわけですよ。
それを、ロシアに関してはたった半年ですよ、アメリカは2014年の夏ぐらい、で、こちらは2015年の夏からですよね、たった半年で事実上、今400の都市を解放したって言ってますよね。もちろんそれは、アサド政権の下に入れたわけです。
そして、大体まあ、キロ数でいうと7000平方キロメートルくらいを今ロシアが抑えてしまったというので、本気の戦争をやりましたっていうことです。
で、大きな差は、イスラム国と自由シリア軍との区別が無い、これは批判を受けてますよね。アメリカはイスラム国だけやっつけているのに、ロシアは自由シリア軍っていう逆に言うと、反アサドのアメリカがサポートしている方までどんどんやっているっていう。
いや、両方とも反体制の反政府軍じゃないかっていうのは、その区別がないってのが大きな差だと思ってください。
そういった中で、国際的な相関図を見ていただくと分かるんですけど、ロシアはシリアのアサド政権を支援しているわけです。その、イスラム国はもちろん敵対しています。
で、アメリカはその中のイスラム国と同じように、スンニー派の人たちである、元々は
アサド政権の将軍たちが別れて出来た人たちがいるわけです。
それが、自由シリア軍ですよね。そして、自由シリア軍も実は、政権と敵対しているわけです。あの、今日、安田さんの人質の話が出ましたけれど、ムスラも同じです。その、アルカイダ系なんです。
で、スンニー派ですね。で、それもちろん敵対です。イスラム国とも敵対、政府とも敵対。そんな、複雑な中でロシアはまとめて「反政府は全部やっつけろ」とやる。
で、アメリカだけは、イスラム国だけやる。これは、アメリカの矛盾で。
というのは、イスラム国は元々、(アサド)政権と敵対しているわけで、アメリカの敵は、
(アサド)政権ですから、そのイスラム国を叩くっていうことで、ものすごく自己矛盾をずっとやってきたのが1年半かかっても解決されなかったっていう問題です。
大きな転機が、ロシア軍をトルコ軍が、これスホーイ24ですけど、これありましたよね
領空侵犯したって、撃ち落としちゃった。その時に、ロシアは何をやったかというと、
S400を配備したんです。
S400ってのは地対空ミサイルなんですけど、その射程距離が400kmあるんですよ。
400kmっていうのは、アメリカの最新鋭のパトリオットは200kmしかないんで。その2倍。日本の自衛隊がもっているPAC3はあれ、射程距離20kmしかないんですよ。国際的な、もちろん攻撃行っちゃいけないんで。
400kmというと、今置いてあることろは、そのまさに見ていただくと分かりますけども、
シリアの西側の方においてありますよね。で、あれだけでもイスラエルまで飛びます。トルコに行きます。
そして、これ、実は可動型なんで、そうすると動かして、東の方にもっていけばイラクの中にまで飛んでいくんです。
今は、アメリカに遠慮してわざわざ、イラクぎりぎりのところまで位にしているんで、その気になれば、イラクの米軍機も落とせる空間、それを置いてある。
実は、今回撤退って言っても「S400は置いたまま」なんですよ。で、それが大きな差だと思ってください。
で、それを理解していただくと、今回のロシアの介入でどういうことが起きたかというと、
まずEUにおけるロシアの影響が増大。これ微妙なんですけども、よく批判されているのはロシアは、その本当に市街地をドカーンと爆撃しちゃう。
あれは、市街地をドカーンと爆撃することによって市民がびびって居なくなるってことを
狙っているわけです。で、居なくなったところに、地上軍がわーっと入ってくる。それで、400の都市を解放したんですよ。
ある意味、意図的なところもあるわけです。でも、おかげで難民がワーッと広がったっていうので、シリア難民はロシアの介入のせいだっていう話になっているわけです。
逆にいうと、ロシアがじゃあ居なくなりました。でも、何かあったら戻ります、っていうのは今は、難民問題でEUは分裂の危機ぐらいにいっているんで、そこまでいって、ロシアの影響力の下にいますよってことですよね。
さらに、もちろんそうですけども、アメリカはイスラム国に対して、有効策がなかった。
世界の世論はついに(テロが)パリまで行っちゃって、何も出来なかったと思っているわけですよ。それを、たった半年で一気にひっくり返しちゃったわけで、実は、トルコとの間。トルコからの補給ラインってのがあるんです。補給ラインも断っちゃったんで、後方支援も断ったんで。
今、イスラム国はかなり弱体化しているんです。と、いうことはアメリカはロシアに大きな借りを作っているわけです。簡単にいうとオバマさんが世論に縛られて出来ないことは、プーチンさんが代わりにやってあげたみたいにも言われているんです。
もっと、大きな話で、これは本当に理解されないといけないんですけども、中東でのロシアの戦略的地位が遥かに高まった。S400はこのまま置いていかれるんです。S400は通常配備は、西側は絶対に許しませんから。で、何とイラクの上空を飛んでいる米軍機も脅かされるレベル。
実際に、S400はサウジアラビアが今回、購入を決めているんですよ。ってことは、そのまさに、スンニー派の代表国であるサウジまで買うと言っている。
S400とは、どういうものかというと、簡単にいうと秒速4~6キロ位の全てのミサイルを落とすことが出来る。大陸間弾道弾が落ちてくる時は、秒速6~8キロなんで、それは落とせないんですけど、それ以外のミサイルは、航空機含めて全て落とす事ができる。
これを、簡単にいうとサウジアラビアもずっとシリアを狙ってたわけです。トルコも狙ってた。サウジアラビアはトルコに対しても、もの凄い簡単にいうと抑止力が出来ちゃった。
そして、米軍まで脅かすっていう意味で、今は中東でのロシアの戦略的地位が米軍を
もう事実上超えるぐらいまでいっちゃったのは、S400が配備されている状態だと思ってください。
最後になりますけど、ウクライナ情勢でオバマ大統領がこういうことを言っちゃったんですよ。「ロシアは地域覇権国だ」要するに、ウクライナみたいな。
元々は、グローバルスーパーパワーで超大国だったが、今は超大国じゃない。単なる地域の覇権主義者だろ。って言っちゃったんで、逆に、「いや、そんなことはありませんよ。我々、中東にだって介入しますから」っていうまさにS400配備、スーホイ34までの配備をわざわざオバマ大統領がお墨付きを与えちゃったんで、堂々と、プーチンさんはやってこれたわけです。
ですから、これ最後を見ていただくと、簡単にいうと、世界の警察の役割をもうアメリカではなく、ロシアが果たしましたよという、強烈なメッセージです。そして、国内の世論で縛られたオバマさん、アメリカ大統領にはロシアが不可欠だっていうことですよね。
で、だからトランプさんが理想的なんですよ。まさに深謀遠慮っていう言葉があるように、ものすごく長く先を読んでやるプーチンさんにとっては、直情型で口で言ってどんどん動いてしまうような、オバマさんの失言も含め、そういう人がアメリカ大統領になってくれると大変都合がいい。
それは、トランプさんがその代表なんで。プーチンさんにはトランプさんが理想的なんで褒め称えているくらいに、思っていたらいいと思います。」
プーチン大統領は、世界に対する抑止力をジワリジワリと広げているわけですね。そして、経済制裁解除を虎視眈々と狙っている。まさに、策士ですね。
今回も貴重な情報ありがとうございます。博士!!
今回は、ここまで
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