
思春期のメンタルヘルス 原体験ストーリー#3:米国の治療施設とは?
こんにちは、Osozakiです。
私は会社員をしながら、ボーダレスアカデミーという社会事業家のコミュニティにゆるゆると参加し、思春期のこどものメンタルヘルス課題に対する社会事業(ソーシャルビジネス)に取り組んでいるアラフォーママです。
そもそも思春期のこどものメンタルヘルス課題に関心をもった原体験(思春期の摂食障害)をお話しするシリーズ第三弾。今回からは、いよいよ米国の治療施設でのプログラムについてお話していきます。
そもそも、なぜ米国に・・・?
私と母が日本で精魂尽き果てている頃、私の姉は米国に高校留学をしていました。姉はちょうどその頃、カリフォルニア州に住む日本人とアメリカ人の牧師夫婦の家にホームステイをしていました。
その牧師夫婦が私の状態を聞き、米国のアリゾナ州には「Remuda Ranch(レミューダ・ランチ)」という摂食障害治療施設があることを突き止め、早速母と父に教えてくれました。母は、その夫婦のサポートを得ながら、(当時はネットもないので)Faxで幾度となく治療施設とやりとりし始めます。
狂気だからこそ、開ける道もある
そもそも英語が流暢ではない娘を米国に送っても治療できるのか、
言語だけでなく、食文化の違いはどうするのか、
保険が全く効かない米国での高額な治療費をどうするのか、、、
冷静にプロコンを分析できる正気の沙汰だったら、おそらくこの選択肢はなかったと思います。しかし、時には、狂気とも思える決断が、道のないところに道をつくってしまうものです。
幸運にも、普通はウェイティングリストに載って数か月~数年待ちになるはずが、奇跡的にすぐに受け入れが決まり、やり取りを始めてから1か月余りの1999年の春に私はアリゾナ州フェニックス空港に母と降り立ちました。

家の物置には、当時入院に至るまでに交わされたFaxや母の手記などが保管してありました。そこには、今までの闘病の経緯を施設に伝えるために英語でやりとりをしている母のFax、また間に入ってくださっていた牧師夫妻と両親のやりとり、そしてこの高額な治療施設の入院費用に圧倒されながらも、親戚にまでお金を借りて入院させることを決めた母の決断が書かれていました。また、親のアテンションを私が独り占めしていたがゆえに、寂しい思いをしていた姉の心身状態を気遣う母の言葉もありました。当時は知る由もありませんでしたが、私の治療のために多くの方々が裏で動いてくださり、時間や労力といった犠牲を払ってくれていたこと、またその裏で寂しい思いをしていた姉がいたこと、同時に経済的にも家族に多大な負担をかけたこと、を改めて痛感しています。摂食障害の治療につなげるために、多くの方々の想いとサポートが繋がったからこそ、今の私がここにいるのだと思うと、自分の命の使い方を考えさせられます。父を始め、すでにこの世を去ってしまった方もいますが、この治療につないでくれた一人一人に、改めて心から感謝しています。
絶対逃げられない、、砂漠の中の治療施設で
フェニックス空港には、Remuda Ranchの職員が車で迎えに来ていました。道中、「ここはサソリがいるから、絶対に夜は一人で出歩いちゃいけないよ」と笑いながら話したのを覚えています。
周りはサボテンと白人だらけ。
英語が車中で飛び交い、窓の外の景色はどんどん砂漠になっていく。。
「一体これからどうなるんだろう。。」
一抹の不安を抱え、悶々とする私と母を乗せて、
車はWickenburgというアリゾナ州の街にたどり着きました。
治療施設は、広大な牧場のような敷地にあり、いくつもの棟がありました。
「これは食堂、これは生活する部屋、これはレクルーム、、」などと職員の方が説明してくれている声がBGMのように聞こえてきます。
東京育ちの私は、「ド田舎」のこの環境に、ただただ圧倒されていたのを覚えています。

到着すると、早速入院手続き書類にひたすらサインをし、
体重測定、血液検査、尿検査など様々な検査をし、あっという間に1日が過ぎていきました。
抵抗しようにもできない(相手英語だし、、)、
逃げられない(サソリいるし、砂漠だし、、)、
という袋小路に追い詰められた状況で、私は完全降伏し治療に身をゆだねることとなります。。。
Remuda Ranchについて:Remuda Ranchは、現在は、Meadowsという企業に買収されThe Meadowsという名前でプログラムを展開しているようです。Youtubeでは、昔のRemudaの面影が残る施設の紹介ビデオがあるのでぜひご覧ください。
※この振り返りはあくまで私自身の当事者の主観であり、関連する家族やその他の方々の見方は違う場合があることをあらかじめご了承ください。