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【Sable】ゲーム感想:一度きりでも、最大でもない選択をしよう

宇宙船の残骸と古代の遺物が眠る広大な砂漠や美しい風景を目にしながら、グライディングというセーブルの通過儀礼のために忘れられない最高の旅へと出かけよう。

クリア+実績コンプ。ざっくり30時間。SteamDeckでのプレイも良好。
新しい街についたらとりあえず手当たり次第NPCに話しかけてしまう方に非常におすすめ。なんなら手に入れたアイテムの説明文まで読んじゃう方、向いています。ぜひプレイしてほしい。



いかにも砂漠の市場。お買い物もできる。

プレイするか迷っている方のためのチェックリスト

【あるもの】

美しい風景、環境音混じりの美しい音楽、豊富なサブクエスト、ほどよい謎解き(時にはごり押し可能)、収集要素、マップ埋め、ファストトラベル、高所登り、着替え、釣り!

【ないもの】

戦闘、ステルス、落下ダメージ、落雷ダメージ(落雷エリアはあり)、料理、クリア後要素、日本語の詳細な攻略サイト

【あるけど回避が難しいもの】

虫(リアルではない。メインビジュアルから予想できる程度の描き込みと動き)

  • カブトムシ→サブクエストなので回避可能、数パターン。中には巨大なやつも出てくる。

  • ナメクジっぽいもの→収集要素。クエストで訪れる場所にはほぼ必ずいるのでプレイ中最低一匹は見つけてしまう。

  • 蝶、トンボ→収集要素。たまに見かける。

  • 芋虫っぽいもの→サブクエストなので回避可能。見た目はともかく「虫が上から落ちてくる」シチュエーションが苦手な方はつらいかも。

【あるけど(収集要素を諦めれば)容易に回避できるもの】

気持ち悪いダンジョン(内臓+精神的恐怖系・1箇所)

大好きな場所、ハコア地方の「水晶が原」。昼夜問わず雷鳴轟く。これは昼。
水晶が原の夜は黄金色。

私みたいな人への宣伝

私はブレスオブザワイルドがオールタイムベストに入るほど好きで、とりわけ作中の・サブクエスト・シーカータワー登り・祠に執心してクリアまで大遅延を起こしたタイプのプレイヤーであるためこの「Sable」とは幸福な衝突を起こした。もっと早く知りたかった。前世の友だったかもしれない。

好きポイント:生きた人物描写と、ローカライズの品質

だいすきなおばあちゃん

ムービーからも伺える魅力的な世界観、それを支える詩的な言い回しは勿論その世界を生きる人々の決して夢心地ではない、現実に根ざした生の会話や振る舞い。
原語版の魅力を生かした日本語翻訳の品質がよい!違和感なくなめらかに読み下せる。誤字脱字や誤訳もほぼなし。すばらしい。

NPCの振る舞いの作りこみも細やかで目に楽しいのでふと足をとめて街を眺めまわすのも一興。走り回る子供、近寄るとだらけた体勢をシャンと戻す衛兵など。かわいらしい。

高所専門技術職「登り手」、足を怪我したためよく見ると片足をかばって立っている

ただし作中世界の細かい固有単語に関する辞書機能はないので世界観をじっくり味わうにはすこしシコリが残るかもしれない。アトム司祭とは?顔の門はどうしていつも同じデザインなの?マスク作家って結局何なの?――何もわからん。文脈と心で理解しよう。

好きポイント:セーブルの将来におけるプレイヤーの(よい意味での)無力さ

本作はざっくりいうと「砂漠を旅して、あまたのものと触れ合って、将来を考える」ストーリーではあるが主人公のセーブルは独白や選択肢から結構くっきりと人柄が汲み取れるため、いわゆるプレイヤーが自分の分身として感情移入させられる空白は乏しい。どちらかというと「セーブルと共に旅をして彼女の行く末を見守る」スタンスになると思う。

ただ安心してほしい。セーブルは思慮深く善良でユーモアを備えた将来有望な若者であり、逮捕できない被疑者に出鼻をくじかれる倫理観を持ち、ときには郷愁にかられ、クソガキに苛立ち、カブトムシのフンを集めろと言われてげんなりするただの少女でもある。プレイヤーの分身ではないが、きっと魅力的な同行者になる。少なくとも私はシナリオ半ばから何かとセーブルに意見を求める同伴おばちゃんの心になっていた。セーブルさんこのバイクパーツどう思う?赤×灰色の染料はあんまり好みじゃない?そっか…。

重ねて、彼女の将来を決めるとはいえストーリー内に進路指導的な説教の感は希薄なので安心してほしい。

進路決定の気力を削いでくる大人もいる

その他もろもろ

ストーリーの進め方

各地でクエストをこなして報酬に「○○のバッジ」(○○=職業名)を手に入れる
 →バッジを3つ集めてマスク作家を訪れる
 →○○のマスクを手に入れる、の繰り返し。

クエストは並行や保留可能、バッジも複数所持できるので多種のバッジをのんびり集めればよい。旅を終え、部族のキャンプに戻り、儀式の神殿内で「最終的にどのマスクをかぶって生きていくか」を選択することでエンディングになる。つまり旅しているうちはどんなマスクをかぶっても自由ということ。あした何着て生きていく?

衛兵ごっこ。中央がセーブル。左右は本職の方。
同じ職のNPCにも立ち姿、体格の書き分けがある。

今作のシナリオの技量を味わいたいならとにかくサブクエストを踏破するのおすすめ。

登り大好きな私は当初は高所登りの専門家「登り手のマスク」と気球暮らしの地理調査業「測量士のマスク」のどちらか狙いだったが、測量士はともかく登り手のバッジを得られるサブクエストは場所がちょっとマイナー(私調べ)でスッと辿り着けず、結果的に他職業のクエストからこなすことになった。が、結果的にこれが非常によかった。いわゆる一般モブも魅力的なのだが、クエストにかかわるNPCは輪をかけて癖が強く魅力にあふれた人々ばかり。これは実際に訪問して味わってほしい。本作のトロの部分だと思う。

  • セーブルをやさしく送り出すおばあちゃん、ジャディ

  • 職を辞して二度目の旅に出た衛兵、エリザベット

あたりはさあ みんな 好きになるよ…。
個人的には水晶採りのトータ、シン船長もかなりヘキ。

「Sable」の本質を言い当てたようなエリザベットのセリフ。すき。
トータさん。厳かで清廉、茶目っ気もある。

システム面

操作性は各所のレビューなどでたびたび言及されているので必要であれば参照してほしい。
たまにカクつくし、カメラは荒ぶるし、オブジェクトはたまに消えるし…ではあるがプレイに支障をきたすレベルではないので私個人としてはさほどの減点要素ではなかった。インディーズだしこんなものでしょう。
(マスク作家から新しいマスクを得た後、カメラが突然天井にパンするのは仕様なのだろうか…あそこのアングルだけ気になった。どの街でも毎度同じ動きだったが…)

補遺:Sableのようなゲームを探している方へ

Steamコミュニティに「Sableを気に入っている7歳の娘におすすめできる作品上げていくスレ」がある。
・戦闘なし・クエストの時間制限なし・一文が短めとかの条件にピンときたら見てみるといいかも。

Chants of Sennaar、A Short Hikeなど既プレイ作品が結構出ていてうれしい。

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