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「まつおか」の歴史 ~ こってり仕立て #3

「まつおか」の歩み、早くも第三回目となりました。
前回、一号店オープンまでをお伝えしましたが、企業の歴史としてはまだまだ序盤。今回もどうぞお付き合いくださいませ。

↑ 第一回、二回はこちらからどうぞ!

「弁当を買って帰る」が日常に無かった1990年代

「お惣菜のまつおか」一号店・三越栄店は、店構えのインパクトと、親しみやすい味わいの手作りお惣菜が大いに受け、連日賑わいを見せました。

社長:お惣菜屋なら、お弁当も並べたいね。というわけで、板橋に作ってもらった。買いやすい値段がいいよねって、その日に使える材料で全部手作りしてくれてね、500円弁当っていうのを始めてみた。手作りだから一日20食限定ね。

今で言うワンコイン弁当。しかもそれが、全部その日に手作りですと!?なんてこった、絶対買う。ですが、当時はお弁当といえば、外で働く人が家で作って持っていくもの、という考え方が主流で、商品としてお弁当が販売されていること自体が少なかったそうです。

社長:売れると思ってなかったから、20食あれば十分って思ってたんだけど、まぁすっごく人気でね、あっという間に売れちゃうの!女の人も買ってくれてね、当時は主婦が外で弁当を買うなんて、あまりない事だったから、驚いた!

500円弁当の中身はと言えば、お肉やお魚のメインは少し、その代わり様々な野菜のおかずが賑やかに詰まったものでした。

社長:お野菜中心っていうのは女性に好まれるし、何より、自分でお弁当作るのに朝から何種類も作ってられないでしょ。でも「まつおか」には手間がかかる煮物がいくつも入ったお弁当がある。おかずの内容が売れた理由だったかなって思う。


女性的・男性的な弁当。その心は

ほんとだ。お野菜多め。

その頃、あるフードコーディネーターの先生が、ご自身の著書で「まつおか」のお弁当について触れ、野菜中心のおかずが何種類も詰まった「まつおか」のお弁当を ″女性的な弁当″ 、対してコンビニ等の、お肉の主菜が中心で、お野菜は添えた程度のお弁当を ″男性的な弁当″ と表現された事がありました。

社長:まさにそうだなぁと思ったし、そう言ってもらったことは嬉しかった。
その辺りから、周りでもお弁当を始めるお店が増えてきてね。あと板橋が居ないと500円弁当が作れなかったから、新しいお弁当考えてみようって思って。

そこで考え出したのが「気まぐれ弁当」なる、新しいまつおかの名物でした。


新たな名物「気まぐれ弁当」

菜めし弁当ですってよ、奥様!

社長:売り場のお惣菜がお野菜中心だから、それをその場で詰めたらどうかなと。お弁当の容器にご飯だけ詰めておいて、後は販売員が好きに詰めて完成させる。決まりなんて作らなかったからどれもバラバラ。人によってはぎっしり詰めちゃったりね。でもそれが面白い

「こうでなくちゃならない」という凝り固まった考え方をしない、松岡社長のスピリッツが映し出されたかのような、ニュースタイル・ベントーボックス。あれこれ比べながら選ぶ楽しさも手伝って「気まぐれ弁当」はたちまち人気商品となりました。

そしてその頃から、お弁当の売れ方に変化が現れ始めました。

新竹の子弁当~!くぅ~!(川平慈英風)

社長:まず平日。お一人分を買う方が多いけれど、昼夜問わず一日中ずっと売れるようになった
あと、土日に売れる数が劇的に増えたね。日曜の夕方、お出掛け帰りであろうご家族が人数分のお弁当を買っていかれるの。すごい量のお弁当を「よいしょっ」ってお渡しする事が多くなった。

調べてみると、1990年代後半から、お弁当等のいわゆる「中食」市場がぐんと伸びていました。バブル崩壊後の不況が大きく影響し、お金のかかる「外食」の機会が減った事が主な原因、とされていますが、核家族化・高齢化・女性の社会進出・生活の24時間化、などなど様々なことが絡んでいるのでしょう。

消費税3% → 5%になった頃かぁ

大きく、生活スタイルが変化し始めた時代であり、その新スタイルに「中食」が欠かせなくなった。と言えそうです。
「気まぐれ弁当」はそんな時代背景にもばっちりハマっていたんですね。

社長:とにかく人気だったんだけど、今はもう「気まぐれ弁当」は販売できなくなっちゃったんだよね。

なんですとーーー!そういや見たことないです!なんでやー!


「気まぐれ弁当」の今

女性が群がっている

そうなのです。2013年に「食品表示法」が公布され、食品表示に係る規定が一元化されました。それに伴い、原材料、アレルギー表示に関しての色々が整備されました。その場で詰めて売るという「気まぐれ弁当」のアドリブ販売法では対応が難しく、惜しまれつつも販売終了となりました。その後は、おかずの内容もあらかじめ決め、完成まで厨房で行ったお弁当に切り替えることに。

終了は残念ですが、アレルギーをお持ちの方や、食品全体の安全の為にとっても大切なことですから「気まぐれ弁当」は心の中で大切にしていこう、、。

……むむっ。ちょっとまてよ。
今はアレがあるではないか。「気まぐれスピリッツ」を受け継ぐ商品が。

三越名古屋栄店にて。彩りよく組み合わされた美しき配分。さすが一号店。

これダ!「お惣菜詰め合わせ」
「まつおか」の味を色々試せる人気商品です。売り場のお惣菜を販売スタッフがセレクトして詰めていますので、個々によって、その日によって内容は様々です。

JR名古屋タカシマヤ店。「これがうめぇんだ!」と信念めいたものを感じる茶色セレクション。
詰めた人と気が合いそう。

※ 一部店舗の「お惣菜詰め合わせ」は、何パターンかの固定された内容を気まぐれローテーションで販売しています。特に関西エリアの「まつおか」ではその方式を取っている所が多いです。



実は、ご飯とおかずを予め詰め合わせた「お弁当」「量り売りお惣菜」では微妙に表記方法が異なるため、気まぐれ弁当は現在こんな風に姿を変えていたのでした。

ただ、百貨店さんの方針に従っていますので、店舗によっては販売を控えている所もあります。是非お近くの店舗にて聞いてみてくださいませ。


斬新なアイデアと、お客様の目線を忘れないお店&商品作りで「まつおか」の評判は徐々に広まっていき、全国から声がかかり始めますーーー。

「まつおか」全国展開の道のりはどんなだったのか。松岡社長はどう舵取りしていったのか。
気になる続きは、第四話にて。

時代の流れに伴う生活スタイルの変化 ー そこに寄り添い形を変えていた私たちの「食生活」。ちょっと為になる今回でございました。
深堀りするっておもしろいなー!


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