正二十面体の14番目の星型 創作記録その1
昨年、「正二十面体の14番目の星型」という作品を折り紙で作りました。おそらく、折り紙でこれを作ったのは私が初めてなのではないかと思いますが、創作する過程が面白かったので、創作記録を書いておこうと思います。
星型多面体とは
そもそも、この多面体は何かというと、正二十面体の星型多面体の一つです。星型多面体とは、正五角形から星型を作る操作と似たようなことを多面体で行ったものです。つまり、多面体の面を拡張し、他の面から拡張された面と交わる線を新たな辺として作った多面体です。
このような操作でできる星型多面体は1種類ではなく、複数個考えられます。
ちなみに、正多面体の場合での星形多面体の数をwikipediaから引っ張ってきます。
正四面体や正方形は面を広げても、元の隣り合った面以外に交わる面がないので、新たに星形多面体を作り出すことはできません(自身が唯一の星型多面体)。
正八面体は、新たに1種類の星型を作り出すことができ、ダ・ヴィンチの星と呼ばれているそうです。星形多面体は元の多面体もその一種と数えることが多いので、この場合は2種類ということになります。
正十二面体の星形多面体は、4種類です。元の正十二面体以外は、それぞれ小星型十二面体、大十二面体、大星型十二面体という名前がついています。これらは星型正多面体やケプラー・ポアンソの多面体と呼ばれるものの一種です。ここでは話が逸れるので割愛しますが、折り紙では比較的簡単に作ることができます(以前作りました)。
さて、正十二面体の星型多面体ですが、なんと59種類もあります。面の数が多いからいろんなパターンが考えられるということでしょうか?
そのうちのいくつかは既に名前がついていますが、ほとんどは名前が付いていません。
折り紙で星型多面体を作ることの難しさ
以前から星型多面体を折り紙で作ってみたいと考えていたので、過去にも何個か作っています。
最初は、ケプラー・ポアンソ多面体と呼ばれる、星型多角形を使った多面体を折り紙で作りました。これは全部で4種類であることが知られています。このうち、小星型十二面体、大十二面体、大星型十二面体は正十二面体の星型です。この3つの多面体を構成する面は、$${\dfrac{\pi}{5}}$$の倍数角からなる三角形で構成されています。黄金比$${\varphi=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$をうまく使えば比較的簡単な方法で近似を使わずにユニットを作ることができます。
一方で、残りの一つの大二十面体は、正十二面体の星型59種類のうちの一つです。これもユニットを創作したのですが、かなり苦戦しました。創作当時の記憶が薄れてきているのですが、機会があればこちらも創作記録を書きたいと思います。
大二十面体の創作が難しかったのは、端的にいうといろんな種類の角度が入り混ざっているからです。正十二面体の星型の場合は、黄金比さえ作図できればよかったのですが、正二十面体の場合は黄金比$${\varphi=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$に加え、正三角形に由来する$${\dfrac{\pi}{3}}$$とその倍数角が出現するため、同時に$${\sqrt{3}}$$を使った比率を作図する必要があります。したがって、作図したいユニットの中に、$${\sqrt{3}}$$と$${\sqrt{5}}$$とその積$${\sqrt{15}}$$が入り乱れることになります。$${\sqrt{3}}$$と$${\sqrt{5}}$$それぞれ単体の作図は簡単で、$${\sqrt{15}}$$も単体ならできなくはないですが、これらが足し合わされた比率がそこらじゅうに出てくることが、なかなか厄介なのです(もう少し言うと、$${\sqrt{2}}$$も出現することがあります)。
実は、この厄介さは大十二面体だけでなく、正十二面体の星型のほとんどに共通する性質です。
ただ、私の場合は大十二面体の組み立てに成功したので、ある程度自信が付いていました。そこで、他の星形多面体にもチャレンジしようと思い、何か面白そうな多面体はないかとwikipediaの画像を眺めていたところ、目についたのが14番目の星型と呼ばれる多面体でした。
これは、正十二面体の各面に渦を巻いているような穴が空いており、なかなかスタイリッシュな多面体です。これを作ろうと思ったのは、単純に見た目で決めたのですが、これがなかなか大変な多面体でした。
(その2に続く)