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人生最後のごはんに、何を食べたい?


私はノルウェーで、旦那と友人二人の四人でシェアハウスをしている。
その友人の一人に、ベトナム系の男性がいる。彼の口癖は、「料理は人生を楽しくする」。その口癖通り彼は料理が得意で、よく魔法みたいに美味しい料理を振る舞ってくれる。

私はというと、ささっと簡単に作れるものを作る程度で、彼ほど料理にかける情熱はない。が、切ったり焼いたり、煮たり揚げたり2,3時間かけて本格的に料理していく彼をみて、私も最近たまに料理に時間をかけるようになった。もちろんこの先彼に料理で勝つことは一生ないが、師匠がいるうちに学べるものは学んでおきたい。

そんなルームメイトとの生活もしばらく離れてしまう。

私と旦那はもうすぐイタリアに二か月、その後日本に二か月滞在する。友人二人もノルウェーの首都オスロやロンドンに行ってしまうので、次会えるのは半年後に。

よく友人が料理を振る舞ってくれるので、昨日は私が料理を作ることにした。
料理好きの彼が前に日本に旅行した話をしていて、「丸亀製麺で食べた天ぷらの乗ったうどんが忘れられない」と言っていたのを思い出した。料理好きの人に料理を振る舞うのは少し気が引けるが、そこまで日本食を好きになってくれたら、「天ぷらうどん」作るしかない。日本料理を代表する「天ぷら」だが、思えば実際に自分で作ったことはほとんどない。

ルームメイトのもう一つの口癖が「料理は時間をかけるのが大事」。せっかちな私はいつも測ったり詳しく調べたりせず、だいたいで料理してしまうのだけれども、さすがに今回はちゃんとすることにした。

まずはクックパッドでレシピを調べて、食材をチェック。しいたけやカボチャなどの食材は普通のスーパーには売っていないので、アジアンショップを渡り歩いてやっと手に入れた。

次にてんぷら粉だが、市販で売ってはいるけど高いので、安い小麦粉とコーンスターチで自分で配合することにした。てんぷら粉は軽い触感に仕上げるためにグルテン(タンパク質)が8%以下でなくてはいけない。
私の買った小麦粉(タンパク質12%)と、コーンスターチ(0.01%)でどうやって8%にすればいいか、中学でこんな数学の問題をやったような気もしたが考えれば考えるほどわからなくなって理工学出身の旦那に計算してもらい、結果小麦粉2対コーンスターチ1の割合で、てんぷら粉を完成させることができた。てんぷら粉を作るだけでもこんなに大変だなんて知らなかった。

うどん作りは旦那がやってくれて、私は大量に切った野菜をどんどんとてんぷら衣をつけて揚げていく。丸亀製麺で働く人はこんな作業をこなしているのかと思うと、頭が下がる思いになった。

6時から始めた調理は、いつの間にか3時間経っていた。
完成を辛抱強く待ち望んで待ってくれたルームメイトとヘトヘトに疲れ果てた私と主人。
テーブルいっぱいに並べられた天ぷらを、うどんと一緒にしゃべるのも忘れてもくもく食べていった。

料理好きのルームメイトが言った。「これが人生最後のごはんだとしても最高だ」。それを聞いて私の旦那が「これで最後は早い(笑)」とつっこみを入れたら、すかさず彼は「いや、本気で、明日何があるかなんてわからないじゃん。今、美味しいものを食べられるって幸せなことだよ」と言った。もう一人の友人が「たしかに、人生最後のごはんがコンビニのホットドッグだったら、後悔するよね(笑)」といってそのまま話は流れたが、私の中ではあの時の彼の言葉がずっと心に響いていた。

この四人での暮らした半年間は長いようで短くて、いろんなことがあったけど彼らとの食事を通して「今この瞬間を楽しむ」大切さを学んだ気がした。

美味しいものを作り、味わう、そしてその時間を誰かと共有すること。

忙しくなるとついつい忘れがちだけど、ずっと忘れずに大切にしたい習慣だ。(写真に料理好きの彼の足が映っているけどお気になさらず)

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