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初めての告白
あの日、中学2年生の僕は、
お昼ご飯のパン代金のお釣りや、
近所の豆腐屋さんへお使いに行った時のお駄賃など、
コツコツと溜め込んでいた、なけなしの三千円を片手に、
近所にある、少し小洒落た感じの花屋さんに向かった。
僕の任務といえば、まさに、
バレンタインデーで手作りチョコレートをもらったお返しとして、
気の利いた花束でもプレゼントしておいて、気分を高揚させた上で、
愛の告白でもしてやろうと言う、短絡的考えを形にする事でした。
生まれて初めて入る、ちょっと小洒落た花屋さんの店内は、
たくさんのお花や、木々に囲まれ、色々な香りが混じり合ったような複雑な匂いが、まだまだ考え方にも幼さが残っている自分の姿を、少しでも大きく大人になったような錯覚を感じさせてくれた。
少し緊張しながら、それでも気持ちで負けないように、
握り締めていた三千円を手渡しながら、神部屋宗介14歳はこう言うのです。
「このお金で買えるだけの、赤いバラをください」
今になって考えると、とてもじゃないが恥ずかしくなってしまうけれども、
当時の僕としては大真面目に、ひとつ格好をつけてやろうと言う気になっていたわけだ。
その熱い思いを感じてもらったのだろうか、
黒髪ロングヘアーで邪魔にならないように一つに束ねていた、
綺麗な雰囲気の店員さんから店長へと、僕の要望が伝えられると、
二人でにこにこと微笑みながら、花を用意してくれたのです。
実際に用意していただいたのは、
8本の濃い赤のバラと、その隙間を埋めるほどのかすみ草。
「君のその真っ直ぐな心にぴったりなかすみ草をプレゼントしてあげるね」
そして黒髪ロング美女からのウィンクとともに、
手渡された花束を持って、その足で彼女の元へと向かうのです。
おませさんやなぁ・・ほんまに。
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