パタゴニア×オシンテック対談~いい会社から聴いた、いい話のお裾分け~イベントレポ(パタゴニア編)
みなさんこんにちは!
書き起こし担当のかずえもんです。
2月に神戸で行われたパタゴニアさんとの対談。オンライン配信のない、50名限定の現地イベントでしたが、その内容が素晴らしかったのでエッセンスをご紹介しまーす!
イベントのタイトルもすごい。
「社会課題解決こそが経営の中心」・・・!!
全株式を非営利団体に寄付してしまったイヴォン・シュイナードさんの会社との対談ですから、勢いがあります。
登壇していただいたのは、篠健司さん。
お話は篠さんの自己紹介から始まりますー。
篠健司-1988年のパタゴニア入社。サステナビリティの仕事は20年以上やっています。
パタゴニアに入社したのは1988年。そこから10年勤務し、一度退社して、再び出戻りました。いまは環境社会部というところでブランド・レスポンシビリティを担当しています。
これは、ビジネスをやるうえで、負のインパクトを減らしながらどう運営するかを担うもの。ゼロウェイスト(廃棄物を出さない)や循環型のビジネスに主に携わっています。社外では、アウトドア業界が60社ほど加盟する、「コンサベーション・アライアンス」の幹事や、日本自然協会(尾瀬の保護活動からはじまった団体)の理事などもしていたり。そんなふうに、企業勤務と同時にサステナビリティのエリアで二十数年取り組んでいます。
環境破壊を訴えた異色の製品カタログ
パタゴニアの前身の会社は「シュイナード・イクイプメント」という登山具の会社で、1957年に創業しました。「パタゴニア」という会社になったのは1972年。当時、創業者のイヴォン・シュイナードが、スコットランドで使われるラグビーシャツがクライミングに適している、という発見をし、それを輸入することから始まりました。
パタゴニアはその後、登山道具の会社では世界初の「カタログ」を出したのですが、それは皆さんが想像するようなものとかなり違っていて、アウトドアがいかに環境破壊しているか、その現実に気づいてもらう、というものでした。
ロッククライミングをするとき、岩場には金具が撃ち込まれるのですが、そのせいで岩がひどく傷つけられます。なので、「もっとクリーンなクライミングをしよう」という呼びかけのためのカタログなんですね。
こうした価値観は、50年以上経ってもいまだに変らず、クライミングやサーファーが培ってきたミニマリズムや環境に対する考え方が、経営の根底にあります。
私達のクローゼット、そこにある服の6割は石油由来
1993年にペットボトルリサイクルのフリースを作りました。いまとなってはすっかりおなじみのペットボトルフリースですが、93年当時はまったく一般的ではありませんでした。ここ最近、世間の目が急速にペットボトル再生に向き、いまや使用済みペットボトルの素材は奪い合いになっています。なので、パタゴニアは素材を海洋プラスチックなどに転換しようとしています。
フリースが分かりやすいですが、みなさんも私も含めて、洋服の6割がプラスチック素材なんですね。だからクローゼットの中は化石由来製品ばかりなんです。しかもそれは増え続け、2030年までに73%が化繊になると言われています。
パタゴニアは製造するものの環境負荷に注目しているんですが、例えば、二酸化炭素排出量についていえば、総排出量の95%はパタゴニア社本体ではなく、取引先である製品製造のサプライチェーンやその素材の製造に起因していることがわかっています。だからそっちを取り組まなければいけないんです。
パタゴニア製品はすでに94%がリサイクル素材からできていますが。2025年までにそれを100%にするという目標を掲げています。「環境損益計算書」を開発して、ひとつひとつの製品がどのぐらいカーボンや廃棄を出し、水の使用がマイナスなのかプラスなのか、そこを測って、サプライヤーの部分(Scorp3)も自分たちの責任としてとらえています。
こういうことは、ただのイメージではなく、きちんとした認識に基づいていないといけないので、そこを分析して、そこから解決策を考えています。それが大事なんですね。
地球を救うためにビジネスを営む
パタゴニアが生産するすべての製品が地球環境に影響しています。
その認識で、私たちは、ミッションステートメントを2019年に変えました。
「故郷である地球を救うためにビジネスを営む。最高の製品を作る。不必要な悪影響を最小限に抑える。ビジネスを手段に自然を保護する。従来のやりかたにとらわれない。」
昨年、創業者シュイナードが経営権と4000億円相当の株式を非営利団体へ譲渡としたことが話題になりました。これは、この新しいミッションステートメントのために、この先もずっと会社の経営をそこに合わせて維持するためです。
私達は、地球温暖化の症状に浪費するのではなく、原因に対してできることに金を使いたいとシュイナードは言っています。もちろんその症状に対して働きかけることも大事ですが、私たちはデザイナーやマテリアル開発によって、「原因」に働きかけるように、と。
Don't buy this Jacket
いまのところコットンだけですが回収もしています。フィンランドの会社などが協力してくれて、繊維に戻すというプロジェクトも。
私達は、売上の1%の寄付をするということを続けているのですが、四年前には最も商品が売れる時期「ブラックフライデー」のタイミングで、「売り上げの100%の寄付」というのをやったんです。そうしたら想定よりも多くの売上になったんですね。
こんなふうに、メッセージが届くと売れる。どうせだったらこういうものを買おうとお客様は思う、ということなんです。
私達は製品を徹底的に使い尽くしてもらいたいので、「つぎはぎ号」という名前の車で移動修理サービスもやっています。つぎはぎ号で大学やスキー場を周り、修理のやり方を教えたりしています。
緊急に対策しなければいけないんです。アパレル業界は本当に変わる必要がある。買うことを減らしてもらい、リサイクルもする。フェアトレードで正当な対価を払い、修理して使ってもらう。そこに消費者のパワーを使ってほしいと思っています。
Not bound by convention.~家庭のエコバッグをもちよったシェアリング
日本でレジ袋が有料化になりましたが、それよりずっと前にパタゴニアではレジ袋を廃止しています。でも、やはりどうしても袋が必要な人がいるので、そういう場合には、ご家庭にたまったエコバッグを回収してシェアリングで対応しています。有料になればきっといろんなところがエコバッグを配ったり売ったりし始める、おそらく使わないたくさんのエコバッグがご家庭にあるだろうと。だから、パタゴニアが仲介になって他の人の必要性を満たす役割をしているんです。
リジェネラティブへ~農業を通じた解決~
二酸化炭素を出さないというところに注目が向かっていますが、私たちは出さないだけでなく、吸収することを促進したいと思っています。
いま企業はカーボンオフセット(炭素排出権取引で自社が排出した分のクレジットを購入することで排出をみなしゼロにすること)を使いますが、私たちにとってオフセットは最後の手段。森林のオフセットは94%以上オフセットになっていないと、ガーディアン(英国のジャーナリズム)などが指摘しています。
有力な解決策として期待できるのが農業です。Regenerative Organicといって、農地を環境再生型に変えるとこれが非常に有効な炭素吸収源になります。ローデルインスティテュートによれば、世界中の全ての農地を環境再生型に変えれば、すべての炭素を固定できるとも。
パタゴニアは、兵庫県豊岡市や千葉県匝瑳市で、営農型太陽光発電への投資をしていて、そこでも環境再生型農業に取り組んでいます。
この前、豊岡のコシヒカリで千葉の酒蔵と共同でつくった「繁土(はんど)」という日本酒もリリースしました。
ここまで社会課題に繋がるやり方があるんです。こうやって、既存のやりかたを超えることが楽しさになる。解決になるんですね。
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いやぁ、パタゴニアさん、取り組みが深くて圧巻です。
→→→このお話を受けて、次はオシンテック編へ。
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