UXデザインの一番小さなはじめ方
UXデザインの日常的なトレーニング方法をご紹介します。
「UXデザイナーになるために、どんなことか始めたら良いのですか?」
「最初の仕事がもらえなくて、なかなか実績が詰めないのですが...」
最近こんな相談を受けることがあったので、アドバイスしてみたことをまとめてみます。
結論からお話すると、「日常の多くはUXをデザインできる」ので、ちょっとした気の持ちようからすぐに実践をはじめることが出来ます。
日常の全てはUXデザインの実践の場である
基本的には、日常の全てのタスクはUXデザインの要素を含んでいると思っています。
何かしら、あなたのアウトプットによって人間の体験に影響を与える仕事は全てがUXデザインです。
UX白書によると、【実践としてのUX】をこう要約しています。
•デザインのプロセスにおいて、 関心事の中心をユ ーザ ーとすること
•タ ーゲットユ ーザ ー層にとって重要なデザイン的側面は何か特定すること
•プロセスの繰り返しによりデザインを開発していくこと、 そこにユーザーの参加を促すこと
•デザインを評価するために、 ユーザ ー固有の要素に関するエビデンスを収集すること
これはつまり、「相手(ユーザー)」を知り・分析し、行動を促すための体験設計やアウトプットをする、またはそのプロセスをUXと呼ぶ。ということだと思っています。
■「ウェブサイト」というアウトプットでユーザーに「コンバージョン」を促すデザイナー
の姿はイメージが湧きやすいと思いますが、
広義では
■「セールストーク」というアウトプットで顧客に「購買」を促す営業マン
■「勤怠制度の説明」というアウトプットで社員に「勤怠の打刻」を促す人事担当
等も、相手のユーザーが存在し、それを分析可能で、そこに対して「相手(ユーザー)」を見て言葉や行動など何かしらのアウトプットを設計しているのであれば、UXをデザインをしていると言えます。
さらに極論を言うと
あなたが言葉を発して相手に何か行動を促す所作は全てUXデザイン出来るということです。
「そこのお醤油とってもらえますか?」と言って実際にお醤油をとってもらう所作も、極論ではUXデザインの一部と捉えてUXデザインのプロセスを実践することも可能なのです。
図:敬語で頼む?枕詞はつける?そもそも頼める?
レバレッジをかける
日々の所作がUXデザインなのだとしたら、日々の所作の中で何を達成できればUXデザインが上達したといえるのでしょうか。
様々な考え方があると思いますが、
ひとつの指標は、その所作に「レバレッジ」をかけることだと思っています。
レバレッジとはいわゆる「てこの原理」です。てこを使えば軽い力で重い荷物を動かせるように、小さなコストで大きな結果を出せるようになることを目指すのです。
UXデザインにおいては一人で100時間机上で考えた抜いたアウトプットが必ずしも優れたアウトプットでは無いことに注意してください。
レバレッジをかけるために、相手というユーザーを知り、試行錯誤するプロセスそのものがUXデザインのレッスンになります。
図:小さな力で、より大きなモノを動かすのがレバレッジの聞いたUX
まずは「言葉」に気をかける
日常の中で一番小さなアウトプットは「言葉」です。
レバレッジを意識するためにも、、身の回りにある言葉に気を配ってみてください。
たとえばnoteの下書き保存ボタンを押すと以下のような言葉が表示されます。
「執筆がすすんだだら軽く休憩してみましょう」という一言で、記事を書いているユーザーは「あ、休憩とってみよう」と行動を変えるかもしれません。
この言葉によって、記事を書くモチベーションが維持されたり、noteというメディアに良い感情を抱く人が増えるかもしれません。
もしこの表示が一日1000人に表示され、その中の100人が喜んでくれたとしたら。
たった一行の言葉で1日100人の感情に良い影響を与えていることになります。
だとすると、これはとてもレバレッジの効いたアウトプットかもしれません。
日常に溢れる言葉たち
例えばメールやSlackなどメッセージツールで送るひとつひとつの言葉に気をかけてみましょう。
例えばチームメンバーに懇親会の出欠を確認するメッセージを送るとします。
このメッセージに課題をあげるとしたら
①「返信ください」と言われてもどう返信したら良いかパッと浮かばない、次に取るべきアクションがイメージしにくい。
②「人数を確認しています」というのはあなた視点であって相手視点ではないので、何を質問されているのか分かりづらい。
という課題が思い浮かびます。
これを改善するとしたら以下のような言葉になるかもしれません。
①次に取るべきアクションを明確&簡易にしてみました。
②自分のタスクではなく、相手のタスクに言い換えました。
このように、ただのチャット一つとってもUXを意識したライティングを実践することが可能です。
相手を分析してみる
このメッセージを受け取る人たちの状態を明確にイメージしてみましょう。
相手を知るためには
・話を聞く
・観察する
・行動をたどる
などの実際のリアルなデータを元に、仮説を立て分析することです。
果たしてあなたはどんな相手に「言葉」をかけ、相手にその言葉をどう捉えられるのでしょうか?
言葉はコミュニケーションツールです、殆どの場合受け取る相手がいます。
この受け取る「相手」に心をはせることがUXデザインには必須のマインドセットなのです。
試して学ぶ
相手を想像して言葉をかけてみた結果、思わしくなかった場合はどうしたら良いでしょう?
安心してください、この失敗であなたは学びを得たのです。
うまく行かなかったとしたら、
・相手に対して見逃していた情報はなかったでしょうか?
・相手に対してのアウトプットは適切に機能していたでしょうか?
等という問いかけを自分にかけることによって、失敗を学びに変換できます。
そして今回は言葉にフォーカスしましたが、アウトプットの手段はあなたの想像するより遥かにたくさんの手段があります。
少しPCから目を話して周りを見渡してみても、「紙」「声」「図」など様々にあなたが駆使できる「プロトタイピングツール」があふれています。
学びを元に、またチャレンジしたら良いのです。
この改善のサイクルこそがあなたがUXデザインのスキルを向上させる要です。
探してみて他にも
世界は「言葉」にあふれています。
今回は懇親会の出欠確認を例に上げましたが。
「セールスの営業資料」
「会議の議事録」
「手洗いの推奨」
「ゴミのマナー啓蒙」
など身の回りにあふれる様々なモノが「相手」に届くさまをデザインすることで数多くの体験に影響を与えることが出来ます。
もしかしたら朝の「あいさつ」のUXを改善するだけで、ちょっとした社内の人気者になれるかもしれません。
頼み方の「言葉」次第で、いろんな大物だって動かせちゃうかもしれません。
もっと知りたい方はUXライティングを勉強するところから始めると、日々の日常にUXデザインのプロセスを活かしやすいでしょう。
UXは教養になる
UXデザインのスキルはこれから多くの部分が「教養」として当たり前のものになっていくと思います。
かつてロジカルシンキングが、ビジネスマンに必須の思考法としてもてはやされた時期がありましたが、同じような一般教養としての人間中心なモノづくりはこれから当たり前のものになっていくでしょう。
一般化するからこそ、そこには能力の高低差が生まれ、専門家にはより一層深い思考を求められることでしょう。
だからこそ、日常の中で日々研鑽を積んでおくことが、一歩先のUXデザイナーとして重要なトレーニングなのです。
<PR>もっと知りたい・話したい
UXデザインの考え方は一部の職種の特別なものでは無く、広く教養になっていくものだと思います。
一方で、これからのUXの専門家には、もっと他の領域に自然な形で染み出していって欲しい!という想いを、自信がハードウェアや小売に染み出た経験から語ります。
ぜひこちらもご参加ください。