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ナマケモノなんかじゃない 五 (全七話)(2015/07/06)


第五話 石ころの正体

動物園からの帰り道、結局今年も見られないのかなぁと、肩を落としながら歩いていると、たる美が突然「あ!短冊がキラキラしてる!」と、叫んだ。

後ろを振り返ってみると、さっき見た短冊が風を受けてひらひらと揺れながら光っていた。ああ、あれは蓄光の折り紙で、光を昼間にためると夜でも光る…と、言いかけたところで、おしょくじくんがお家とは違う方向に走り出した。

着いた先は女の子のお家だった。無理を言って女の子にまた石ころを出してもらうと、石ころは弱いけれど、きれいな光を放っていた。光の入らない宝箱にずっとしまっていたから、今まで光らなかったんだね。と、おしょくじくんが言った。蓄光塗料、これが光る石ころの正体だったんだ。

たる美が「ねえねえ、たる美気付いちゃった。」と、手を引っ張ってきた。「さっきの笹の飾ってある場所、崖みたい。」と、動物園内の地図を広げている。そうか、この場所は人口の岩場だけど、形も崖のように見えるし、山も見渡せる。

ここに行けば真相を知っている人がいて、ナマケモノの噂がわかるかも。そうだ! 絶対そうだ! と、僕たちは喜んだ。でも喜びもつかの間、閉園後の動物園になんて入れるわけがない。そうしてまた唸っていると、たる美が「裏口知ってる。」と、連れて行ってくれた。春の動物園かくれんぼ大会で見つけたんだそうな。

数時間後、好奇心には勝てない僕たちは、たる美の案内でジャングルのようにたくさんの木に覆われた裏口から動物園内に入ることに成功した。(なぜだか鍵は開いたままだったんだけどね)崖をよじ登ると、想像していた通り、一人の人間が待っていた。(六話に続く)

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#イラスト #物語 #ナマケモノなんかじゃない

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