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ナマケモノなんかじゃない 一 (全七話)(2015/07/02)


第一話 羽衣町七不思議

羽衣町の七不思議のひとつに「ナマケモノの光」というものがある。

一年に一度の七夕の夜。雲が晴れて月が見えた時にだけ、大量の流れ星のようなものが真っ暗闇を駆け抜ける。それがナマケモノの仕業だというのだ。

当たり前のことだけど、ナマケモノはゆっくりとしか動けない。だから、その話をはじめて聞いたときは全く信じることができなかった。一度おしょくじくんと一緒に動物園の開園から閉園までの間ずーっとナマケモノの檻の前で彼らを見ていたのだけれど、彼らはずっと眠っていたままで、まばたきすらしてくれなかった。(本当はちょっとだけ頭を掻いていたみたいだったけど)

でも、七夕の夜は動物園のナマケモノの檻がすっかり空になっていたり、山のふもとでナマケモノの足跡のようなものが見つかったり、児童館の子供達が書いたナマケモノ宛の手紙が消えていたりと、そんなうわさ話を聞いてから、だんだん本当のような気がしてきたんだ。

昨年と一昨年の七夕の夜は、途中から雨が降ってきてしまって何も見ることはできなかった。今年は雨に邪魔されないよう、たる美が大量のてるてる坊主を作ってくれている。その間、僕とおしょくじくんでナマケモノ追跡計画を練っていると、ドングリングリンがベランダの窓を開けてひょいと入ってきた。(第二話に続く https://note.com/oshokujikun/n/n3194586650d5)

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#イラスト #物語 #ナマケモノなんかじゃない

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