不憫なタコ 二の二 〜全三幕〜(2015/04/19)
第二幕 不憫なタコ 後半
僕らのうちに来て二週間、タコンヌはのびのびと家中を歩き回った。その間お兄さんは心配して何度も会いに来てくれていた。タコンヌは僕にもだいぶ懐いていたけれど、お兄さんが来ると途端に甘えてしがみついちゃったりして、とても可愛らしかった。
ドングリングリンを吸盤に付けて飛ばす遊びをしたり、天井によじ登り体を風船みたいにして降りてくる落下傘ごっこもよくやっていた。おしょくじくんの頭の上ではすやすやと眠り、はじめは怖がっていたたる美ともあやとりとかして、だいぶみんなとも仲良くなっていた。
タコンヌはキュポンキュポンと相変わらず吸盤の音を立てて歩くけれど、次第にふわ~と浮くようになっていった。キュポンキュポンキュポンキュポンふわ~キュポンキュポンキュポンキュポンふわふわ~。だんだん滞空時間が長くなったタコンヌは、時たま空を見上げるようになっていったんだ。
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しばらく続いた雨が止んだ次の日の朝。雲一つない澄み切った空。一番早く目が覚めて気分爽快なはずの僕の気持ちは、なぜか少しだけもやもやとしていた。
洗濯物を干すために窓を開けると、タコンヌが突然ふわふわ~と空に向かって飛び出した。危ないから戻っておいでと声をかけたけど、タコンヌは聞こえていないのか高いところまで上がっていってしまった。
すぐにおしょくじくんとたる美を起こして外まで追いかけたけど、タコンヌはずっとずっと高くまで行ってしまったので、すぐに小さな点にしか見えなくなっていた。やっと追いついた川岸でしばらくみていると、向こうの空から雲のようなものがザワザワと押し寄せてきた。
おしょくじくんが、あれが飛行タコだよ。と教えてくれた。
(第三幕につづく)
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