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ナマケモノなんかじゃない 七 (全七話)(2015/07/07)


第七話 ナマケモノなんかじゃない

「さてと、冗談はさておき、君たちはもう帰りなさい。」と、園長さんは真面目な顔でそう言った。

え! と僕たちは鳩に豆鉄砲な顔つきで園長さんを見つめ返した。冗談?

「ここは特等席でね、毎年七夕の夜には、あの光をここで眺めているんだ。お話は僕の先代の園長から聞いたことだから、あてにはならないよ。先代は作り話が大好きだったからね。」

じゃあ、あの光は? との問いかけにも、「さあね、町おこしの一環じゃないのかな。」と、お茶を濁したような答えが返ってきただけだった。

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いやっ、もうなんなのよ。狐につままれた感じ! と僕たちはぶーぶー言いながらお家に帰った。ナマケナイモノなんて本当はいなかったのか。

僕はとてもガッカリしてしまって部屋の隅っこでしょんぼりしていると、おしょくじくんが社会科の教科書を引っ張り出してきて僕にあるページを見せてくれた。そこには、産業についての地域別生産量が記されていた。

塗料の生産量、東京都M市羽衣町が三十年間全国一位。(2015年調べ。)
そんなにたくさんの量を生産できる、大きな塗料工場なんて羽衣町で見たことある? と、おしょくじくんはニヤニヤしている。そして、あの園長さん嘘つきだなぁ。と、言っていた。

次の日、僕たちはだだっ広い動物園に行き、ナマケモノの檻の前で、

「なまけものなんかじゃない、働き者の君たちを僕らは応援しているから!」

と、大きな声で言った。

周りの人達は変な顔でこちらを見ていたけれど、木にぶら下がったナマケモノたちは、一斉にこちらを向いてニヤリと笑った、ように見えた。

おわり

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#イラスト #物語 #ナマケモノなんかじゃない

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