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ナマケモノなんかじゃない 四 (全七話)(2015/07/05)


第四話 閉園間際の動物園

これ、なんか塗ってある。とおしょくじくんが指し示したところは、たしかにツヤツヤした部分とサラサラした部分に分かれていた。なんだろう、なんかの塗料かな。

でも見ただけではさっぱりわからないし、こねくり回していると女の子が涙目になってきてしまったので、あきらめて返すことにした。

女の子がお家に入るのを見送って、僕たちもお家に帰ることにしたのだけれど、帰り際にちらっと見えた石ころが、なんだかキラキラしているように見えたんだ。

次の日。とうとう七夕が来てしまった。石ころ以来、なんの進展もない聞き込みに疲れ果ててしまい、僕たちは駅前の喫茶店でお茶をちびちび飲んでいた。すでに時は夕方の五時をまわり、もやっとした気分でソファに座っていると、突然おしょくじくんが動物園に行きたいと言い出した。

急いで喫茶店を出て、閉園間際の動物園に入場させてもらった。羽衣町の動物園は動物の数の割にやけにだだっ広い。だから、ナマケモノの檻に着くまでに大体の動物たちは寝床に帰っていったのだけど、ナマケモノたちはまだ木にぶら下がったままだった。

噂のナマケモノは君たちなの? 何か知らない? と、僕の問いかけをドングリングリンに伝えてもらったけど、彼らからは何の返答ももらえなかった。

「もう閉園時間ですよ。」と、おじいさんが声をかけてきた。顔を見ると、動物園の園長さんだった。僕はなんだか悲しくなって、七不思議と石ころの話を園長さんに話した。

「それは色々走り回って大変だったね。残念ながらナマケモノは走ったりしないよ。でも、七夕は願い事をする日だから、願ったら何か見られるかもしれないよ。」と、僕たちの頭の後ろを指差した。

ナマケモノの檻の裏手には、岩場を模した大きな段差があって、そこにはたくさんの短冊が吊るされた大きな笹が飾られていた。(第五話に続く)

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#イラスト #物語 #ナマケモノなんかじゃない

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