まともじゃないのは君と一緒
2021年5月某日。雨。23℃。
数か月前に受けた性格診断の結果が返ってきた。ふーん、となぜかスカしながらざっと目を通す。「頭の回転が早い」、「物事の変化に機敏に反応し効率的に行動する」、「自分に対する評価や周囲の動向には敏感」、「恥ずかしがり屋でてれ性」、「好き嫌いをはっきりする」、「結果を重視して一足飛びに高い理想を求める」、などなど。当てはまらないのも多少ある気がするが、こんだけ褒められて、もう鼻の下伸び切ってるからあながち間違ってないんだろう。そりゃ否定的なことも少し書かれてたけどそんなとこには目を向けないし、これも多分性格。
これは性格なのかわかんないけど、○○診断とか、△△分析とか、□□占いとか、そういう類を結構真に受けてしまう。朝の情報番組の星座占いなんて見ようもんなら、必死で蠍座のラッキーアイテムを家中捜しまわるし。雑誌の後ろの方にある占い欄を見て、一喜一憂するし。毎年引くお御籤も、普通だったら境内に結ぶところを、大事に財布にしまって、ふとした時に何回も見て、年の瀬にはボロボロになっているのが常。だから軽い気持ちで占い師に手相見てもらうとか、水晶玉で占ってもらうとか、そんなことを平気でする女の子の気は知れない。テレビ番組とか雑誌とかお御籤とかは、占いの期限がそれぞれ1日、1ヶ月、1年で切れるけど、もうその占い師に今後の人生をすべて決められちゃう気がするもん。一種の病気。新興宗教とか訪問販売とか水素水とかには、こういう人がハマっちゃうんだろうね。今の状況なら心身ともに健康だからハマらないと思うけど、何かに縋りたくなったときは気を付けないと、とは思う。
学生時代に通いつけていた美容室に3カ月ぶりに顔を出す。一時実家に帰っていたせいで空けてしまった。久しぶりに会う鈴さん(仮名)、お団子を頭にチョコンとのせた、笑うと顔がくしゃっとなる、4つ年上の担当の美容師さんは、相も変わらず可愛い。僕はずーっと下の名前で呼んでいるのに彼女は僕の名前を呼んでくれない。が、それも可愛い。同じ話を何回も聞いてくる。けど、それも可愛い。なかなかご飯に連れて行ってくれない。けれども、それも可愛い。シャンプーの時に僕の頭を軽くマッサージしながら「頭硬いね」って言ってくる、それに「謎解きとか得意なんですけど」って返すと、「そういうことじゃなくて、凝ってるってことっ!」と突っ込んでくれる。この手垢のつきまくったくだりに毎回付き合ってくれるのも可愛い。どれも可愛い。そんなこんなで今日はカットしてパーマをあてるつもりでいたけど、1カ月前にあてたパーマが生きているようで、カットだけで済ませた。
そういえば最近ラジオで「美容室に10分前に到着しそうになったら、美容室の周りを15分ウロウロする」というメールが読まれていた。「張り切ってる感がダサい」そう。あーむっちゃ分かる。あと、これは僕だけかもだけど、美容室に入るとき、少なくとも1回は入り口を通り過ぎてガラス張りの窓から中を覗く。多いときは3,4回繰り返して、やっとこさ入店する。初めて入るトコはもちろんだけど、行きつけのトコでもなぜか、必ずやってしまう。今更何を偵察して、何を窺ってんだよっていう。仮にもトンデモナイ雰囲気の廃墟みたいなトコだったとしても予約取り消せないのは百も承知してる。偵察するなら1週間くらい前にやらなきゃ。まあ美容室の下見なんてしないんだけど。そんなことするのは、遠足前に下見をする教師か、初デート前にデートプランを通しでリハするスマートもしくは小心者の男か。文字に起こしてみて改めて思ったけど、そんなことするのは警戒心を持った草食動物だな。何にビクビク怯えているのかって?多分だけど、美容室っていう檻で飼われている陽キャだろうね。今はまだ、髪の毛を引き千切られるだけで済んでるけど、いつ首元に噛みついてくるかわかんないもん。もしかしたらパーマ液も洗髪も頭皮マッサージも、陰キャ臭を消して柔らかくして食べやすくするためだったりして。
つい先日、初めてフェスなるものに独りで参戦。友達がいないわけではない。唯一いる友達にたまたまドタキャンされただけ。だが、こういう時こそ、何か不思議なことや可笑しな事件が起こったり、人に話せる笑い話が生まれたりするもの。そう思い込むほかない、寂しさや虚しさを紛らわせるには。だって見渡せば、大学生グループ、3人組のOL、やんちゃな男の子4人組、センス抜群のカップル、老夫婦、家族連れ、とまあいろんなカテゴリーの人が楽しそうに音楽の話で盛り上がっている。たまに一人の方もいたが、フェス常連の覇気を漂わせ、周りのことなど気にも留めず、自分の世界に入り込んでいる。一方僕はというと、たまたま隣に居合わせた方と話し込んで仲良くなり、一人で来ていた女性と写真を撮り合って連絡先まで交換し、なんと元カノにばったり遭遇して連絡を再び取り合うようになり、そんなことがあったらなあと豊かな想像力で妄想を膨らませていた。
そもそもだけど、複数人でフェスに来て、全員がちゃんとロックフェスに出てくるようなバンドやアーティストを知ってて、さらに話に花を咲かせてって、そういう方たちはどんな世界線で生きてらっしゃるのか。どうやってその世界線にジャンプなさったのだろうか。前世で得を積むのか、現世で賄賂を払うのか、親の英才教育によって幼い頃からフェスに通うのか。それから気のせいか、フェスに来ている女の子、特に3人組の女の子はスタイルよくて可愛い。「サッカーやってる、もしくはやってた男子はカッコいい」現象と同じ類のヤツ。とにかくそんな人間が僕の知り合いにはいないし、カップルでフェスに行くなんていうのは、次元が3つくらい上の、まさに夢のような話である。だが、あの会場には確かにそんな人が溢れていて、間違いなく同じ空気を作っていた。別に彼彼女らに申し訳ないっていうベタな話ではなくて、ただただオカシな状況に身体が拒否反応を示して、ゲロ吐きそうっていう。
あ、もちろんフェスはアツかったし、バンドマンはやっぱり最高だった。
まとめるなら、「君と夏フェス」したいし、僕の隣(ココ)空いてますよ~、になるのかな。
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