まんがガタガタ道2 アシスタント時代
賞を取り増刊号でデビュー。先にも書いたがこれだけでは漫画家ではなく自称漫画家。問題は連載の話が来るか来ないかは、このデビュー作の人気順位にかかっていた。
16作品中6位。実質上位3位までは連載作家が増刊号売り上げのために描き下ろしで参加してくるので、新人の中では3位に相当する順位!
これでもダメなのよ、、、。新人の中で1位にならなければ、なかなか連載の話は回ってこない。これがジャンプの質の高い競争の中での厳しさ。どこぞの有名大学に合格するよりも難しいとまで言われる所以。次はこの増刊号に載るためのチャンスもまた、凄まじい競争率から選出されるので、次のチャンスはいつになるやら。
私がアシスタントをしていたNプロは、ものすごく優秀な先輩、後輩たちが揃っていた。特に後輩が天才肌ばかりで、画力のない私の立場はかなり肩身が狭かった。そこにこの受賞でやっと肩を並べ、、、るどころか後輩たちはどんどんと連載を決めて漫画家になっていきました。
もちろん漫画家になれなかった先輩もいます。画力は当然私よりもあり、個性的な人柄で漫画よりも本人が面白いタイプ。ただ長いアシスタント経験からアシスタント病にかかってた。
アシスタント病というのは、一つの背景を抱え込む癖がつき、何日もかけて描き込み加減が分からなくなる病気(笑)。この人は3日もかけて原稿用紙半分程度の単独背景を描き込み、カケアミが印刷したらベタになるくらい加減が分からなくなっていたようでした。一度本人の投稿用作品を見せてもらいましたが、廊下の木目が奥の方までギッシリと描き込んで、やはり奥の方はベタになってしまうくらいに。い、いや、すごいリアルなんだけど、問題の話は、、、ホラー。うん。絵柄には合うかもしれないが、、、いまひとつ。画面構成で白く出来る人と出来ない人がいるように、この人は真っ黒にしてしまう。アシスタントとしてちゃんと指示されて描く事は出来るっぽいのだが、自分の原稿だと歯止めが効かないらしい。
また私より後に入った天才肌の女性アシスタントの後輩は、先生からモブまで任されたのだが、ネームがかなりおざなりの適当に描かれたレイプシーン。男三人にやられそうになってるのを18歳そこらの女性に任せるってのもどうかと思うが、ネームに描かれてないような超絶リアルなシチュエーションのモブを描き上げてきた。これには職場の男性アシスタントは驚愕。案の定1年で退職し、漫画家として活躍しまくってました。
ざっと数えただけでも9人のスタッフが、漫画家として巣立って行きましたが、あそこの職場で育ったというより、元から上手い人たちが集まってしまったような。どん尻から漫画家になれたのは私だけかも。
私はさておき、漫画家になれる人、なれない人の区分というのが見えたような気がします。なれる人というのは漫画以外の知識が豊富。趣味が音楽だったり、映画を見ては帰りにあーだこーだと言い合って、みんなで感想を述べ合ったり、草野球やサバイバルゲームなど積極的に参加しては遊びまわったり。先に書いた女性アシスタントは、人生経験が18歳にて凄まじい。そして絶対にプロになるという気持ちがある人。
なれない人のタイプは、漫画しか読まない人。人生経験値が乏しい人。待ってればチャンスはくると信じて受け身の人。漫画家になれたらいいなぁ、、と思ってる人。
概ねですが、今まで見てきた人の区分が、このように分かれます。特に漫画家になれたらいいなぁ、と漫画の専門学校へ入り、安易な気持ちのままアシスタントになっても、ほとんどが使い物にならないのが現状です。まずアシスタント先では学校で習った事が無意味です。それぞれの職場での描き方がありますので、学校ではこう習いました、などというのは通用しません。学校で習ったのをすっかり忘れて、職場にあった描き方をするべきですし、学校で習う専門用語もまったく現場では使わない事があります。ここちょっと濃い目の流線入れて、と言うと、あ、◯◯線ですね。と返され、は?、、、という事が何度かあったり。変に頭でっかちになりすぎて、肝心の線が抜けてなかったり汚かったり、、、学校で何習ってんだとかなり疑問に感じました。
確かにそれなりの画力アップや基礎のパースなどは、学校へ行けば上達は見込めるだろうけど、テーマに沿った課題とか描いてる暇があったら、持ち込み用の原稿描いて、出版社で直に批評してもらった方が、すごい勉強になるのに、、と思ったり。
こんな事ばかり言ってると、どこの専門学校でも講師として雇ってくれないだろうけど、厳しくネームをチェックして何度も描き直すだけでも学校の意義があると思うのに。女の子もいるだろうから恋愛でも失恋でも、これがいい漫画のネタにもなるし、アルバイトもしまくったり、クラスで一番上手い奴の思考を盗むって事も(笑)。
よく作品を描くときに、何を描いていいのか分かりません、勉強してから作品を描くという生徒もいるが、そういう人は漫画家には向いてないですし目指すべきではありません。プロになる人は、これが描きたい!というアイデアが脳内に詰まっているはずです。