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イブキちゃんの聖書入門#87 「聖書的終末論⑦第二神殿崩壊の預言(後編)」

"イエスが宮を出て行かれると、弟子たちが近寄って来て、イエスに向かって宮の建物を指し示した。
すると、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたはこれらの物すべてを見ているのですか。まことに、あなたがたに言います。ここで、どの石も崩されずに、ほかの石の上に残ることは決してありません。」"
マタイの福音書 24章1~2節

☆前回までで、「神のご計画の中心は常にイスラエル民族であり、聖書的終末論を考える際に、2,000年前に犯した当時のユダヤ人のメシア拒否の罪と、それに続く紀元70年のエルサレム陥落という出来事から出発する必要がある」という主旨のことを書きました。

新約聖書にはイエス・キリストの地上生涯における働きを記した4つの福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)が残されていますが、「ヨハネの福音書」以外の3つの福音書で、キリストが弟子たちに対して語った「エルサレム陥落(第二神殿崩壊)」から始まる「終末時代に何が起こるのか」の預言が収められています。

冒頭でご紹介した聖書箇所は、その「エルサレム陥落(第二神殿崩壊)」に関する預言です。

☆さて、ではその当時のユダヤ教の宗教的拠り所であった「第二神殿」とはどのような神殿だったのでしょうか。

場所的には現在のエルサレム旧市街にある「神殿の丘」に建てられていました。
(金色に光るイスラム教のモスク(礼拝所)、いわゆる「岩のドーム」が目印となっている場所です)。

「第二」と呼ぶぐらいなので「第一」があったことは想像に難しくないと思います。

「第一神殿」は今から約3,000年前の紀元前10世紀に「ダビデ像」で有名なダビデ王の息子、ソロモン王によって建造されました。

よって「第一神殿」は「ソロモン神殿」とも呼ばれています。

「第一神殿」が建てられた当時のイスラエルは大繁栄を享受している時で、神殿も非常に豪華な見栄えのある煌びやかなものとなっていました。

聖書の記述によれば、神殿内部に至るまで純金で覆われた金ぴかの建物であったようです。

"ソロモンは神殿の内側を純金でおおい、内殿の前に金の鎖を渡し、これに金をかぶせた。
神殿全体を隅々まで金でおおい、内殿に関わる祭壇も全体を金でおおった。"
列王記 第一 6章21~22節

☆しかしその「第一神殿」は紀元前6世紀に起こったバビロン帝国の侵攻によって破壊され、当時のユダヤ人がバビロンへと捕囚されている期間、約70年間に渡り荒廃されたままとなりました。

ペルシャ帝国がバビロン帝国を滅ぼし、捕囚されていたユダヤ人たちがエルサレムに帰還することが許されると、徐々に神殿の再建が始まり、紀元前515年に再建工事は完了しました。

それが「第二神殿」です。

しかしその再建された「第二神殿」は「第一神殿」に比べるとあまりにみすぼらしく、かつての神殿の姿を覚えていた老人たちは涙した、と聖書には記されています。

"しかし、祭司、レビ人、一族のかしらたちのうち、以前の宮を見たことのある多くの老人たちは、目の前でこの宮の基が据えられたとき、大声をあげて泣いた。一方、ほかの多くの人々は喜びにあふれて声を張り上げた。"
エズラ記 3章12節

☆その「第二神殿」建立から約500年後、イエスが降誕する約20年程前に、ヘロデ大王という人物が「第二神殿」の大掛かりな拡張、改修工事に着手し始めます。

ヘロデ大王とは、エルサレムを含め当時のユダヤ人の地を支配していたローマ帝国から認定を受けてユダヤの王となった人物で、血統的にはユダヤ人とイドマヤ人(ユダヤ人から見れば異邦人)の混血です。
(建前的にはユダヤ教にも改宗しています)。

ヘロデは非常に残虐な人物でユダヤ人たちからの評判も最悪であったのですが、建築事業には強いこだわりがあったらしく、歴史的に価値のある多くの建造物を世に残しています。

「第二神殿」の拡張工事も、ユダヤ教への熱心さや、為政者としてユダヤ人たちの関心を買う為というよりも、ヘロデ大王個人の趣味の一環として行った側面が強いかと思います。

ヘロデ大王はイエスが幼子の時に死にましたが、その死後も「第二神殿」の拡張工事は続けられ、着工から実に約80年後の紀元64年にようやく完成します。

つまり、イエスが「第二神殿崩壊」の預言を語った時は、神殿はまだ改修の最中であり、その後も約30年以上も工事は続くことになる、ということです。

☆もう既に死去していたとは言え、ヘロデ大王が着手した「第二神殿」の拡張、改修には、彼の見栄やプライド、物質主義的価値観が鏡写しとなっていたようでした。

現在のエルサレムにある「嘆きの壁」で知られる西壁は、そのヘロデ大王が増改築した「第二神殿」(ヘロデの神殿)の西側擁壁の一部なのですが、その下部に積まれた石から察するに、イエスの弟子たちが見て驚いた神殿の石は、その一つの長さが4~5メートル、高さは1メートル、重さは8~10トンはあったであろうと推察されます。

当時の建築技術でよくそのような巨大な石を積み上げたものだ、と現代人でも感心してしまいますが、その様子をリアルタイムで見ていたイエスの弟子たちの驚き、感動は殊更であったでしょう。

しかし、イエスは告げます。

「あなたがたはこれらの物すべてを見ているのですか。まことに、あなたがたに言います。ここで、どの石も崩されずに、ほかの石の上に残ることは決してありません」

と。

つまり神殿は崩壊し、積まれた巨石も積まれたままに残されることはない、と。

☆そのイエスの預言通りに、紀元70年にローマ帝国軍によってエルサレムは陥落し、「第二神殿」は崩壊しました。

「ヘロデの神殿」と呼ばれ、80年以上の増改築の果てに立派になった「第二神殿」は、その完成から僅か6年で崩れ去ってしまったのです。

ローマ帝国軍の将軍ティトゥスは兵士たちに「神殿は破壊しないように」と命じたとされます。

しかし一人の兵士が松明を神殿に投げ込み、神殿は炎に包まれてしまいました。

燃え広がった炎は神殿内部を覆っていた金を溶かし、その溶けた金は石と石の隙間に流れ込み、後日、冷えて固まった金を取り出す為にローマ兵たちは石を取り除けた、とされています。

エルサレムを落とされ、神殿を失ったユダヤ人は世界離散することとなり、ここにイエス世代のユダヤ人たちが犯した「メシア拒否」の罪の刈り取りがなされたのでした。

☆イエスは非常に悲しい気持ちで、この「第二神殿崩壊」の預言を語ったと思います。

聖書の神は、善い者であれ悪い者であれ、人が滅ぶのを喜ぶ神ではありません。

今のこの時代、ユダヤ人、異邦人関係なく、神は全ての人に、罪による滅びからの唯一の解決である「イエス・キリストの福音」を提供しています。

全ての滅び行く者を哀れむイエス・キリストの思いを感じ取り、またその愛ときよさに満ちた言葉に耳を傾ける人は幸いです。

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