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イブキちゃんの聖書入門#37 「ノアの箱舟は本当にあったの?④ ネフィリム(後編)」

"さて、人が大地の面に増え始め、娘たちが彼らに生まれたとき、
神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、それぞれ自分が選んだ者を妻とした。
そこで、主は言われた。「わたしの霊は、人のうちに永久にとどまることはない。人は肉にすぎないからだ。だから、人の齢は百二十年にしよう。」
神の子らが人の娘たちのところに入り、彼らに子ができたそのころ、またその後も、ネフィリムが地にいた。彼らは昔からの勇士であり、名のある者たちであった。
主は、地上に人の悪が増大し、その心に図ることがみな、いつも悪に傾くのをご覧になった。
それで主は、地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた。
そして主は言われた。「わたしが創造した人を地の面から消し去ろう。人をはじめ、家畜や這うもの、空の鳥に至るまで。わたしは、これらを造ったことを悔やむ。」
しかし、ノアは主の心にかなっていた。"
創世記 6章1~8節

★悪魔の履歴書

⭐︎前回で、「ネフィリムとは悪霊と人間の女性との間に生まれたハーフ、超人である」というお話をしました。

まさに驚くべきことですが、霊的な存在であるはずの悪魔、悪霊は、この目に見える地上世界に対して、人間の女性と結婚し、子供を孕ませることが出来るまでに干渉する力を有しているのです。

ネフィリムの存在は、全世界の生物が消え去ってしまう大洪水の裁きを引き起こす要因となっていました。
それ程の「規格外の悪」が、ネフィリム誕生にあったのです。

ネフィリムは、神のご計画を破綻させようとする悪魔の邪悪な策略そのものを体現した姿であるのです。

そのことを詳しく述べさせて頂く前に、「悪魔」とその配下である「悪霊」の存在について、簡単に触れてみたいと思います。

⭐︎「悪魔」とは、旧約聖書の原語であるヘブライ語では「サタン」、七十人訳聖書や新約聖書の原語であるギリシャ語では「サタナス」と呼ばれ、「敵対する者・反抗する者」という意味があります。

他にも悪魔(サタン)を指し示す呼称やタイトルは聖書の中に数多く登場し、例えば、「ディアボロス」(中傷する者・不正に訴えて来る者)、「ベリアル」(無価値な者)、「ベルゼブル」(「バアル・ゼブール」(宮殿の主)からの派生・蠅の主)、「アポリュオン」(破壊者)などがあります。

悪魔を「ルシファー」と呼ぶ伝統が一部のキリスト教教会にはあり、一般的にも「悪魔=ルシファー」という認識は広がっているように思えますが、旧約聖書にも新約聖書にも、悪魔を「ルシファー」と呼んでいる記述はありません。
恐らく17世紀に発行された欽定訳聖書で、イザヤ書14章12節に登場する堕天する前の悪魔を示す「明けの明星」(ヘブライ語で「ヘレル」)を、ラテン語の「ルシファー」と訳したことが起源かと思われます。

⭐︎よくファンタジー物のフィクション作品で、神と悪魔が対等の力を持っているかのように描写されることもありますが、しかし悪魔はあくまで神によって造られた被造物に過ぎず、神と悪魔の間には圧倒的な開きがあり、悪魔はどのように足掻いても神に太刀打ちすることは出来ません。

「悪魔は神によって造られた」と言うと、「神は悪を創造されたのですか」という問いが来ることもありますが、神は完全な愛と正義の神であり、悪を創られることはありません。
悪魔はある時に神に反逆した為に「悪魔」となったのであり、神によって創造された原初の時点では、悪魔は「良い天使」であったのです。

しかも「ケルブ」(複数形は「ケルビム」)と呼ばれる最高位の天使で、その「ケルビム」の中でも、神への賛美を司るリーダー格的存在であったことが聖書の記述から伺えます。

"「人の子よ。ツロの王について哀歌を唱えて、彼に言え。神である主はこう言われる。あなたは全きものの典型であった。知恵に満ち、美の極みであった。 あなたは神の園、エデンにいて、あらゆる宝石に取り囲まれていた。赤めのう、トパーズ、ダイヤモンド、緑柱石、縞めのう、碧玉、サファイア、トルコ石、エメラルド。あなたのタンバリンと笛は金で作られ、これらはあなたが創造された日に整えられた。 わたしは、油注がれた守護者ケルビムとしてあなたを任命した。あなたは神の聖なる山にいて、火の石の間を歩いていた。 あなたの行いは、あなたが創造された日から、あなたに不正が見出されるまでは、完全だった。"
エゼキエル書 28章12~15節

つまり、悪魔は初めは「とんでもなく位が高い良い天使」であったのです。
天使の中の「代表取締役」のような存在だったのです。

その彼が、神に対して罪を犯した為に、そのケルビム長の座から追放されることになり、「悪魔」となりました。
その罪とは高慢の罪です。
ケルビム長だった悪魔は、自分の能力、地位、美しさに酔いしれ、「自分こそ神のような存在になろう」と思い違いをし、神に取って代わろうと神に対して反逆を企てました。

"おまえは心の中で言った。『私は天に上ろう。神の星々のはるか上に私の王座を上げ、北の果てにある会合の山で座に着こう。
密雲の頂に上り、いと高き方のようになろう。』"
イザヤ書 14章13~14節

この野望の実現の為に、悪魔は他の天使を説得して回り、結果として天使全体の3分の1が悪魔の側に付いてしまいました。
その悪魔に与した3分の1の天使達が、悪魔と一緒に堕天(悪の性質が固定される)し、悪霊(堕天使)となってしまったのです。

悪魔、悪霊は我々人間のように悔い改めの機会、救いのプログラムは与えられておらず、徹頭徹尾、神に反逆する邪悪な存在です。

悪魔、悪霊の頭の中には「いかに神の計画を破綻させるか、神を嘘つき呼ばわりするか、神の栄光を汚すか」しかありません。

その目的達成の為に、悪魔、悪霊は一致団結し、悪魔はその配下である悪霊どもを使役するのです。

★「悪い知らせ」

⭐︎かつてはケルビムの長であった悪魔が堕落して間もなく、神は「ご自身のかたち」に似せた存在、人間を創造されました。
悪魔から見ても、明らかに、人間は御使い(悪魔、悪霊を含む天使の全て)よりも能力が劣っている存在でしたが、しかし、明らかに、どういう訳か、人間は神の特別な愛の対象でした。

悪魔は人間を破壊することに決めました。

破壊する、と言っても悪魔は物理的に直接、アダムとイヴを抹殺するのではありません。
それは神が決してお許しにならないことです。
悪魔も神の許可の範囲を超えた勝手な悪行は行えないのです。

悪魔は人間を自分のような「堕落した存在」に陥れようと、蛇の体を使って先ずはイヴを誘惑しました。
「あなたは神が取って食べることを禁じた『善悪の知識の木の実』を食べると、あなたは神のようになれる」と。

"さて蛇は、神である主が造られた野の生き物のうちで、ほかのどれよりも賢かった。蛇は女に言った。「園の木のどれからも食べてはならないと、神は本当に言われたのですか。」
女は蛇に言った。「私たちは園の木の実を食べてもよいのです。
しかし、園の中央にある木の実については、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ』と神は仰せられました。」
すると、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。
それを食べるそのとき、目が開かれて、あなたがたが神のようになって善悪を知る者となることを、神は知っているのです。」"
創世記 3章1~5節

悪魔のこの策略は成功しました。

神の最高傑作である人間、アダムとイヴは、悪魔が犯した同じ罪をその手で犯し、悪魔のように神から離れた堕落した存在となり、また彼らに続く全人類、被造世界全体も悪魔の支配下に取り込まれてしまいました。

⭐︎しかし悪魔の歓喜はそこまでです。

神は罪を犯してしまったアダムとイヴに対して、すぐさま「救済の御手」を差し伸ばされました。

それは「やがて女(イヴ)の子孫として、蛇(悪魔)の頭を踏み砕く救い主が誕生する」という預言です。

"わたし(神)は敵意を、おまえ(蛇:悪魔)と女の間に、おまえの子孫と女の子孫の間に置く。彼はおまえの頭を打ち、おまえは彼のかかとを打つ。」"
創世記 3章15節

神学的に、この箇所は「原福音」と呼ばれています。
福音(良き知らせ)の元となる最初の預言であるからです。

しかし、これは悪魔にとっては「悪き知らせ」です。
「やがて自分は確実に神の裁きを受ける、完全に神に敗北する」という「死刑宣告」であるからです。

この時を境に、悪魔の「神の栄光を傷つける」という大目標に、新たな明確な指針が生まれました。

それは「女の子孫の誕生を阻む」というものです。

人間の女から子孫が生まれてこなければ、救い主は誕生しない、神のご計画は破綻し、自分は神との勝負に勝てる、と悪魔は考えたのでした。

★ いとも容易く行われるあり得ない悪行

⭐︎悪魔は暫く人間が地上で増え広がるのを静観していました。

多くの美しい女性たちが生まれ、なるほど、確かにこの中から神が預言された「救い主」がいつか誕生するのだろう、と悪魔は見定め、配下の悪霊(堕天使)たちの一部を人間世界に送り込みました。

人間世界に送り込まれた堕天使たちは、若い男の姿を取り、それぞれが気に入った人間の女性と性的な関係を持つようになったのです。

"さて、人が大地の面に増え始め、娘たちが彼らに生まれたとき、
神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、それぞれ自分が選んだ者を妻とした。"
創世記 6章1~2節

前回にもご説明した通り、「神の子ら」とはヘブライ語で「ベネイ・ハ・エロイム」(בְנֵי־הָאֱלֹהִים)であり、ユダヤ教の伝統では一貫して、良い天使、悪い天使(悪霊:堕天使)の両方を含めて、「御使い」を意味しています。
(新約聖書に入って、「神の子ら」「神の子ども」の意味も拡大し、クリスチャンのことを指すケースも生まれて来ました)。

「人の娘たちが美しいのを見て」とは、肉欲、性的欲望に囚われてしまうことに全く躊躇いがない背徳的なニュアンスがあり、堕天使には最早、神のきよさに従おうとする高潔さが微塵もないことを示しています。

かくして、ネフィリムと呼ばれる「堕天使と人間の女性とのハーフ、超人」が多数、この地上に誕生することになりました。
「女の子孫」が現れる可能性を完全に排除しようとする悪魔の悪意が具現化したのです。

⭐︎これが「ノアの大洪水」が引き起こされる要因となった「規格外の悪」の全貌です。

神は被造世界の動植物、その全てを、「種類ごと」に、秩序正しく、美しく、区別して造られ、種類ごとに「越えてはならない明確な境界線(バウンダリー)」を設けられました。

被造物である悪魔が創造者である神のようには決してなれないのと同じように、人間は動物のようにはなれないし、また男が女のように、女が男のようになることは出来ません。
(もし無理矢理その境界線を越えようとするならば、設計者である神の創造の秩序に反することになり、様々な悲劇的な問題、障害をその身に受けることになります)。

御使い(天使)と人間の間にも、同様に「決して越えてはならない神の境界線」が引かれています。

しかしここでは、「神のご計画の破壊」の為に、堕天使と人間の女性が結婚し、超人が生まれるという、神の秩序、境界線を踏みにじるようなとてつもなくおぞましいことが行われたのです。

神はこの二重の悪を一掃する為、ご自身が立てられた人類救済計画を守られる為に、地球規模の全世界的な大洪水を起こされました。
ノアの一家から、再び人類の歴史をスタートさせ、「女の子孫」へ繋がる血脈を守られたのです。

⭐︎神は常にきよい正しいお方で、全ての悪に対して正当な裁きを下されるお方です。

ネフィリムの「父親」となった堕天使たちにも相応の報いが与えられています。

彼らは今、「よみ」(シオール)にある「暗闇の縄目」と形容される地獄(タータラス)に閉じ込められています。
「タータラス」は仮釈放なしの監獄であり、将来は直接、最終的な地獄である「火の池」に投げ入れられる運命なのです。

"神は、罪を犯した御使いたちを放置せず、地獄(タータラス)に投げ入れ、暗闇の縄目につないで、さばきの日まで閉じ込められました。
また、かつての世界を放置せず、不敬虔な者たちの世界に洪水をもたらし、義を宣べ伝えたノアたち八人を保護されました。"
ペテロの手紙 第二 2章4~5節

(↓こちらも参照)

⭐︎また彼らは「自分の領分を守らずに自分のいるべき所を捨てた御使いたち」と新約聖書のユダの手紙で呼ばれています。

"またイエスは、自分の領分を守らずに自分のいるべき所を捨てた御使いたちを、大いなる日のさばきのために、永遠の鎖につないで暗闇の下に閉じ込められました。"
ユダの手紙 1章6節

「良い天使」は「自分の領分」を心得ています。

「良い天使」は神のルール、創造の秩序に従って、結婚はしませんし、ましてや人間の女性と性的な関係を結ぼうなどとは決してしません。

しかし悪魔、堕天使は、意図的に「自分の領分」を越えて来ます。
彼らはいとも容易く、その神が定められた秩序の垣根を越えて、思うがままの行為を実行しようとするのです。

しかも、そのような身勝手な振る舞いを「いかにも良いこと」かのように、人間世界に対して吹聴し、かつて悪魔がイヴを誘惑したように、多くの人間たちを彼ら悪魔、悪霊と同じ道を辿るように、仲間に引き込むかのように画策して来るのです。

実に聖書が語る罪の本質とは、「神の定めた境界線(バウンダリー)を侵犯すること」であり、あらゆる罪は悪魔の願望が反映されたものであると言えます。

今のこの世界は「この世の神」と呼ばれる悪魔の支配下にある状態で、悪魔的価値観が「悪魔的」だとは悟らせないように、「ヒューマニズム」や「リベラル」の衣をまとって幅を利かせています。

創造主と被造物、生物と無生物、人間と動物、自国と他国、自己と他者、男と女…etc
神が決められたあらゆる境界線(バウンダリー)を混乱させ、あやふやにさせ、あまつさえ、そのような境界線、もっと言えば絶対的な善悪の基準があること自体が悪かのような錯覚を、悪魔はあの手この手で人間に刷り込んで来ています。

この悪魔が作り出す偽りに溢れた世の中にあって、唯一、神の最高傑作である人類が守るべき基準、境界線を教え、真実を語る聖書を、そして何よりも罪からの救いを提供している聖書を、1人でも多くの方が受け取り、読まれることを期待しております。

⭐︎次回は、悪が蔓延る時代にあって唯一の「救いの道」を伝道し続けた信仰者としてのノアの姿にフォーカスしてみたいと思います。

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