漫才の《パターン》
私が note を始めた理由は, この記事を書きたかったからと言っても過言ではありません.
自分の中でふんわりとある漫才の《パターン》を, キチンと文章の形でアウトプットして整理しておきたかったんですよね.
以下でまとめているのは, あくまで私の自分勝手な分類です.
絶対的な正解ではないため, ご参考までに.
注意
最後に総括しますが, 全ての漫才が『これは××漫才!』となる訳ではありません.
あくまで一つの要素であり, その要素の乗算でネタは成り立っています.
基本は大喜利
私の記事でも何度か話してはいますが, ネタの基本は大喜利です.
『こんな××は嫌だ』
『××はそんなこと言わない』
『もし××に××がいたら』
上記のお題の××にシチュエーションなり何なりを入れて, 自分達が考えた面白い解答をまとめ, それを繋ぎ合わせて流れにするのがネタ作りです.
1. ショートコント漫才
一番分かりやすいパターンです.
『じゃあ俺××やるからお前××やって』を皮切りに, 役になりきってシチュエーションボケをします.
役に出たり入ったりしてツッコミます.
メリット
・テンポが出やすい.
・ネタを量産しやすい.
デメリット
・単調になりがちで, 起伏がない.
・他の人とカブりやすく, 差別化が図りにくい.
対策
・合間に本人同士の会話を入れることで, しゃべくりと合いの子にする.
・大喜利とは別の軸(伏線やキャラ等)を付けて, 深みを出す.
NONSTYLEさんが2008年 M-1 を取ったのもこの形です.
テンポは出るものの単調になりがちなショートコント漫才を, 井上さんのキャラやネタの構成で深みを出していました.
2. コント漫才
以前の記事で紹介した《漫才コント》とややこしいですが, 悪しからず.
《漫才コント》という大枠の中に, コント漫才やショートコント漫才があると考えてください.
ショートコント漫才との相違点ですが, こちらは役から出ません.
基本的にはシチュエーションの中の住民としてツッコみます.
ショートコント漫才は断続的, コント漫は持続的と捉えてください.
メリット
・世界観に浸ってもらえる分, ショートコント漫才よりも大きな笑いが期待出来る.
・物語的に伏線を散りばめても違和感がなく, 後半で笑いを回収出来る.
デメリット
・流れが重要なため, 台詞を飛ばしたときの軌道修正が難しい.
・ショートコント漫才と違い, ボケと物語の繋ぎ目を滑らかにしなければならず, ネタを練る力が求められる.
対策
・練習あるのみ.
・ネタを大量に書き, ネタを作る力を身に付ける.
和牛さんはこのパターンが多い印象です.
和牛さんがスゴいのは, 何と言ってもネタの圧倒的な完成度.
水田さんや川西さんの《ニン》に合っているし, 見ていて全然違和感がない構成.
見る度に「すげぇ……」と息を呑んでしまいます.
スーパーマラドーナさんもどちらかと言うとこのパターンですかね.
3. プレゼン漫才
これはカフカさんという(今は)芸人さんがブログでお話していたパターンです.
カフカさんのブログも面白いので是非見てください.
この記事もカフカさんに刺激されて書きました.
http://heshiotanishi.hatenablog.jp
これは話し手がプレゼン形式で話を進め, 聞き手がそれにリアクションするパターンです.
ただし, これには更に2パターンあります.
① ナイツ型
話し手側がボケます.
《ヤホー漫才》と呼ばれるナイツさんの漫才は, 塙さんが言い間違いをしながら話を進めて, それに対して土屋さんがツッコむパターンです.
言い間違いボケは, ネタの中に大量に配置出来ます.
松本人志さんが M-1 でナイツさんに対し, 「お前ら4分間で何個ボケんねん」と言い, 塙さんが「37個くらいです」と返したのは有名な話です.
前までは塙さんが土屋さんの方を見ずに一方的に話をしていましたが, 近年では塙さんが土屋さんに台本にないことを言って土屋さんがツッコむ, みたいなのを見ます.
要はアドリブですね.
この掛け合いにより漫才っぽさが生まれ,「更に進化するのか……」と驚くばかりです.
ナイツ塙さんの著書「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」についても今度記事を書くつもりです.
② オードリー型
聞き手側がボケます.
《ズレ漫才》と呼ばれるオードリーさんの漫才は, 若林さんが話を進めて, それに対して春日さんがズレたツッコみをして若林さんが更にツッコむパターンです.
これはお互いがツッコんでる訳ですから, テンポが非常に良いです.
また, オードリーさんのズレ漫才はとにかくアクシデントに強いです.
若林さんのアドリブ力と春日さんの《ニン》があってでしょうが,『ネタを噛む』なんてことで M-1 で大爆笑をかっさらうのは後にも先にもオードリーさんだけかと.
《しゃべくり漫才》と《ラジオ》は同じです.
どちらも会話の中で笑わせる訳ですからね.
オードリーさんは10年以上もの間, 土曜のオールナイトニッポンを任されていますが, それは結局会話が面白いからです.
若林さんは爆笑問題さんに憧れているため, どんなに忙しくなっても定期的に漫才ライブをしています.
これがやっぱり面白いんですよね.
話を戻します.
このパターン,『言い間違いボケ』や『ズレたツッコミ』に変わる何かさえ見つけられれば, まだまだ鉱脈はあります.
メリット
・テンポが出やすい.
・プレゼンにより観客を巻き込めるため, 大きな笑いが出やすい.
・キャラを仕込みやすい. (ナイツ塙さん, オードリー春日さん, etc...)
デメリット
・ネタやキャラの作り込みが必要.
・面白いプレゼンをする力が求められる.
・キャラに頼った漫才になりがちなため, シチュエーションを活かした大喜利的なボケが中々出来ない.
対策
・ネタを作り込む.
・キャラに頼り切らずに, ネタの大喜利の部分でも勝負する.
・話し手も聞き手も両方ボケだったり, 途中でボケとツッコミが入れ替わったりと, 別のパターンを試行錯誤する.
4. キャラ設定漫才
《しゃべくり漫才》は本人役の演技と以前の記事でお話しましたが, これは本人以外の役で《しゃべくり漫才》をするパターンです.
メリット
・テンポの良い《しゃべくり漫才》が作れる.
・分かりやすいキャラのため, テレビや平場でも通用出来る.
① オードリー春日さん
→ 何でも出来る, 不可能はない.
(キャラを押し通すタイプ)
② EXITさん
→ チャラ男だけど本当は……
(キャラの裏をイジられるタイプ)
デメリット
・自分自身にあったキャラを見つける必要がある.
・ネタの作り込みが難しい.
対策
・君自身の目で確かめよう!
チュートリアルさんの《妄想漫才》はこれに当たります.
徳井さんが『BBQに異常に興味を示す男』や『自転車のチリンチリンに猛烈に反応する男』を, 自分に掛け合わせて演じています.
5. 大喜利漫才
大喜利をポンポンするパターンです.
役に入らない(ショート)コント漫才と捉えても構いません.
霜降り明星さんは, せいやさんを動きのあるフリップとしたこのパターンで2018年 M-1 を制覇しました.
メリット
・テンポが出やすい.
・ネタを量産しやすい.
デメリット
・単調になりがちで, 起伏がない.
・他の人とカブりやすく, 差別化が図りにくい.
対策
・大喜利とは別の軸(伏線やキャラ等)を付けて, 深みを出す.
笑い飯さんもショートコント漫才に分類出来ると思いますが, Wボケにより圧倒的なスピード感が出ています.
第7世代で言うと, コウテイさんやナイチンゲールダンスさんもこの形の漫才をやっています.
① コウテイ
一見イロモノっぽくはありますが, ネタ中の動きのある大喜利がハマります.
霜降りを正統派とした, こちらは破天荒です.
② ナイチンゲールダンス
色々なパターンの漫才をしていますが,先日見たライブではこのパターンをやっていたため紹介します.
パッケージ的には霜降りと殆ど同じですが, 違いはヤスさんのツッコミです.
霜降りは粗品さんがドン!とツッコミ終わりますが, ナイチンゲールダンスはヤスさんがツッコミ終わった後, 最終的に大ボケをかまして締めます.
ツッコミであるはずのヤスさんが最終的にボケを全部持って行き, 笑いをかっさらっていくのが非常に痛快でした.
6. 喧嘩漫才
《しゃべくり漫才》の王道パターンです.
2人の会話が段々とヒートアップしていくことで, 自然と尻上がりに笑いが増幅していきます.
メリット
・テンポ感が抜群.
・自分自身の熱量でお客さんも巻き込め, 大きな笑いに繋がる.
・見ていて痛快.
・会話がヒートアップしていくため, 自然と尻上がりになる.
デメリット
・自分達のことを理解して, それぞれの《ニン》に合ったネタを書かなければ説得力が生まれない.
・練習してる感が出てはいけない.
対策
・自分達で考えてみよう!
ブラックマヨネーズさんの喧嘩漫才は天下一品, 2005年 M-1 は文句なしの優勝でした.
最近で言うと, ミキさんもこれに当たります.
喧嘩漫才とは書きましたが, 正しくは暴走漫才の中の喧嘩漫才かもしれません.
2人の意見が相反して会話が進むのが喧嘩漫才(ex. ブラマヨさん)ですが, 片方だけが暴走するパターン(ex. チュートさん)もあります.
ネタはこれらのパターンの乗算
上述したパターンには, それぞれメリットとデメリットがあります.
様々なパターンを組み合わせることで, そのデメリットを打ち消すことで, 隙のないネタを作ることが出来ます.
① NONSTYLE
ショートコント漫才 × キャラ設定漫才
② オードリー
プレゼン漫才 × キャラ設定漫才
③チュートリアル
暴走漫才 × キャラ設定漫才
終わりに
大まかなネタのパターンを書き連ねましたが, 勿論これが全てではないと思います.
何故ネタを分類するのか?別にそんなことしなくても良くないか?と思う方もいるでしょうが, キチンと理由があります.
それに関しては今度書くつもりの《紳竜の研究》に関する記事で説明するつもりです.
あと何度か記事を書きましたが, これスゴい疲れますね.
今回もそうでしたが, 毎度後半になると適当になってしまいます.
今後の課題だなー.
最後に今日紹介したネタのパターンをまとめて終わりとします.
夢でお逢いしましょう, アディオス.
《漫才コント》
・ショートコント漫才
・コント漫才
《しゃべくり漫才》
・プレゼン漫才
・キャラ設定漫才
・大喜利漫才
・喧嘩漫才(暴走漫才)