寒天の記憶
私のルーツは東北にあるため、幼少期にはよく寒天を食べた記憶がある。祖母は料理が苦手で、普段の食事を作ることをほとんどしなかったが、寒天だけは唯一作っていた。
多分、多種多様な寒天を作っていたのかと思うのだが、覚えているのは2種類だけだ。
一つ目が牛乳寒天。これはよくコンビニやスーパーなんかでも売ってるような、白くてみかんの缶詰が入っているオーソドックスなものだ。ただ、祖母の作っていた寒天は、みかんの缶詰が入っていない時もあったし、みかん以外のフルーツの缶詰が入っていたこともあった気がする。この寒天は、優しい甘さと牛乳の味がとても美味しかったので、出されるたびに喜んで食べた記憶がある。おやつの中でもかなり嬉しいものだった。
次に作っていたのが、黒糖寒天だ。名前の通り、黒糖(もしくは黒蜜)が入っててかなり甘い。この寒天は二層になっており、上部が白、下部が黒で分かれていた。恐らく、白い層はクリームか牛乳の寒天で、下の黒い層が黒糖なのだろう。私は子どもの頃、黒糖が苦手だったため、この寒天がおやつの日は結構難儀した。
寒天という文字を見るたび、これらの記憶を思い出して少しノスタルジックな気持ちになる。祖父母宅の少し埃っぽい匂い、台所のベタベタしたテーブルの感触、夏の夜の匂いが思い出される。
牛乳寒天はともかく、黒糖寒天はあまり売られているのも見ないので、今思えばレシピでも教えてもらっておけばよかった。