声劇台本/8分目安/男女不問2人/コント会話劇/若干のホラーオチ 「ほんとの話」
台本規約
一、 配信、上演などする際、必ず作者名をクレジットとしてサムネイルやチラシ、エンドクレジット等に記入すること。
ニ、 過度なアドリブ(物語の筋書きが変わるような)をしないこと。
三、 共演者、作者、作品を尊重し、批判等をしないこと。
四、 一切の無断転載・掲載をお断りします。
五、 以上を守った上でのみ、上演することを許可します。
その他
・投稿のコメント欄に、一声かけてくださったら作者は喜んで聞きに行きますので、やる場合は教えてくださると嬉しいです。
・投げ銭や、報酬は一切作者に払う必要はありません。
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ほんとの話
〇作者:常田爽二
〇ジャンル:コント風会話劇、軽度のホラー(?)オチ
〇軽い叫びあり、少し早口なセリフあり
〇上演時間:8分程度(約2800文字)
〇登場人物:男女不問、2人
A:Bと幼なじみ。「ほんと癖」がある。
B:Aと幼なじみ。「ほんと癖」を直そうとする。
※男女不問です。女性がやる場合には一人称を直してください。
例:俺→私
─── 開演 ───
A:本当…本当の本当にごめん
B:(モノローグ)
俺の幼なじみは頭が少し弱い。
というか、強めの癖がある。
A:ほんとにっ!この通り!ごめん!
B:(モノローグ)
今までは、放置してきた…が、
俺は今日こそちゃんとコイツと向き合って、直してもらうことにしようと思う。
俺はその為なら修羅にでもなってやる。
それがコイツのためになる。
A:ほんとにっ!
B:…ちょっと
A:ごめん!ごめん!だからホントにごめんって!
B:…だから、
A:ほんとに〜…ほんとにィ〜にィ〜
B:「にィ〜にィ〜」ってなんだよ妹かってんだ
A:だからね…ほんとに、この通りっ!!本当にごめん!!
B:もういいよ
A:え、いいの?
B:おう
A:ホントに…?
B:はぁ…赦してもらうつもりで言ってなかったのか。
A:いや、それはそうだけど…
B:じゃあいいじゃん。
A:ありがとう!ほんとありがとう!!
ほんとお前はいいやつだよな!!
B:…うん
A:いや〜それにしてもさ、もうちょっと長引くと思ったんだけどな…
B:え?
A:いや〜めんどくさくなくてよかった〜みたいな!
B:………まじで言うてますのん?
A:何が?
B:えーと…気づいてない?
A:何が?
B:…いやさ…お前、俺に謝ってるときずっと
「長いな〜」とか「めんどくさいな〜」とか思ってたわけ?
A:う、うん?…そうなる?
B:おん。そうなる。
A:ち、ちちち違うから!!!そそそうじゃなくてさっ!
俺がしでかした、ギルティはこんなところに留まらないような酷いことだから、もっとこう…怒られるみたいな?長くなるかなみたいな?そーいう意味合いで…
B:はぁ…
A:ホントなんだってぇ…!信じてくれぇ
B:んー、だとしても、お前マイナスを上塗りしてるだけだからな?
A:ほんとすんませんっ
B:おう、言葉選びも気をつけろよ?
A:ほんとすまんっ
B:はぁ…もういいよ。
A:まじか?!ほんとありがとう!!
B:…あとさ、やっぱ、その…気なるんだけど
A:え?ほんとなにが?
B:そのー…「ほんと」ってやつ?
A:ほんと…?
B:ほんと。
A:え?ほんと?ほんと何の話?
B:それだよ!それぇ!!
A:え?ほんとどれ?!
B:…だーかーらー、ほんとほんとほんとほんとって毎日毎日良くも飽きずに…すごいな?お前
A:ん?ほんと何が飽きないって?
B:ほんと大売り出しセールかって言ってんの!!
A:ほんと大売り出しセ…?…え?え?なんで怒ってんの??
B:普段ならこんなに怒らんけど、
A:怒ってんじゃんほんと
B:…今日は怒るって決めた。
A:ほんと、どゆこと?
B:本当って言葉をそんな簡単に使ってさ…ホントに本当の意味、お前は理解して、使ってんのかってキレてんだよ!!
A:ほんとなに?こわー。
A:お前だって「ほんと」って使ってんじゃん…
B:本当の意味で使ってんだよ!
B:お前は意味もなくほんとほんと連呼しやがって…
A:え…?ほんといつ?
B:(モノローグ)
B:え?まさか?…と皆さんも思ったことだろう。
B:そう、コイツは自分が「ほんと」って言ってることに大概気づいていないのだ。
A:あのさ、ほんとさっきから、ほんとなんなんだよ。
B:うん…あのな、お前癖か何だかしらんけどな
…これでもかってくらい、自分の言葉という言葉に、「ほんと」って言葉を入れてるんだよ。
自分で気づいてないかもしれないけど本当の話なんだよこれ。
A:え?ほんと?
B:ソレだぁ!!はい出た、「ほんと」。
A:え、今のは「ほんと」って言ったけど?
ほんとなんでおかしいの?
B:まって、今「ほんとなんでおかしいの?」って言ったよな?
A:え?ほんと言ってないよ?
ほんとに言ったのは「なんでおかしいの?」しか言ってないよ。
B:…まて、ちょっとまて、一旦黙れ。
A:な、ほんとなんでだよ
B:一旦!…頭を整理させてくれ…。
A:別にいいけど。ほんと。
B:今のは?!
A:ん?
B:「別にいいけど」の後になんて言った?!
A:ほんとなんも?
B:うん…そうか。よしよし…
A:ほんと当たり前じゃん。何言ってんのほんと
B:今のはほんとって言ったな?
A:は?言ってねぇけど?
B:おけーおけー。
今日はとってもわかりやすいように説明してやるからよく聞け。そんで、あとで実験でも証明してやる。
A:ほんと突然どうしたよ?
B:いいから話し聞けぇ!!!!!
A:はいぃぃいっ
(小声)ほんと今日コイツどうしたんだよ?
B:仮説として、まず第一に、
お前は「ほんと」という言葉を、
言葉の強調として使いすぎた。
A:ほんとまぁ使うときはあるよ。
B:第二に、おそらく口心地のいい言葉だったこととも相まって、使いすぎて口癖になった。
A:ほんと、口心地ってなんだよ。
B:俺が作った造語だ。
口に出すと気持ちのいい発音みたいな意味だよ。今はそれはおいておくとして…
とりあえず口心地が良かった。だろ?
A:たしかに…ほんと言いやすいよ「ほんと」って。
B:おーけーおーけー。
そして第三に、言い過ぎて記憶から完全抹消される領域の癖になった。
何なら一種の強力な自己暗示なのかもしれない。
「ほんと」と意味もなく使った瞬間にだけ働くね。
A:でも、俺、ほんと覚えてるぞ?
さっき本当かどうか聞き返す「ほんと?」とか聞いたのも覚えてるし。
あ、いまのほんとも、ほんと覚えてるし。
あ、いまのほんともほんと…
B:まてってだまれっ!!
無限ループするやつだそれ!
…話をつづけるぞ。
第4に本当の意味で使った「ほんと」に限り、記憶している。
これらがお前が「ほんと中毒者」たる仮説だ。
A:仮にそれがほんとだとして、ほんとさっき言ってた実験とやらはどうすんの?
B:実験はこれからだ。
(小声)録音ボタン用意…
A:ほんと何言ってんだコイツ?
B:早まるじゃないワトソン君…ポチッとな
A:ほんと誰がワトソンだよ。
B:(モノローグ)
ここはいつものようにっこんでやりたいところだが、俺の声が入ると実験が失敗するかもしれない。
…んだから、無言を貫け!オレ!
A:え、ほんと、俺ワトソン君じゃないけど?
ほんと。…え、ほんとなんか反応しろよほんと。まじほんと何なんだお前。
なぁ?さっきから実験とかほんとおかしいからな?
ほんとに。な、ほんと聞いてる?
さっきからほんとに聞いてるか??
B:…ポチッとな。
A:は?
B:よし、実験サンプルできた。
A:ほんと実験まだやってねぇじゃん。
ほんと何?実験ってなに?
B:じゃっじゃーん!文明の利器ぃ!!
A:いやほんと突然スマホ掲げてからの、
ほんとなんですかアナタは。
B:こいつで今のお前のトークを一部始終録音してやったのよ。
A:ほんとなぜに…?
B:実験だ実験。よ
し、とりあえずこの録音データを聞け…
0:A、自分の録音された声を聞く。
A:…ふんふん…ふん…うん?
たしかにほんとに「ほんと」って使ってる…ほんと…あれ?
A:あれほんと?
あ、今も、あ、今のはほんとのほんとで…
えーと、ほんとだからほんと…あれ?
ほん…と?
B:そういうこった。
とりあえず口癖になりすぎてたんだよ。
で、この実験でお前の目を覚ませてやった。
A:ほんとになぜに?
…あ、ホントって使っちゃったよほんと。
あ、また、ほんとなんでほんとって使うんだろほんと、
あ、…
B:いいから、一旦だまれ。
永遠ほんとっていいつづけて、
壊れてるみたいで怖いから。な?
A:……
B:ま、そういうこった!
ほんとお前気をつけろよ?
本当って言葉は、大事な言葉だ。
ずっと使ってると軽くなっちまうだろ?
本当に大事なところで使えなくなっちゃうからな。
A:…お前…いや、俺は、たしかにほんとって言ってた。
けどお前気づいてないのか?
お前もほんとってずっと言い続けてるぞ?
B:え?
A:はい。録音データ。
B:(録音データ再生。Bの声が流れる。)
ま、ほんとそういうこったほんと!
ほんとお前ほんと気をつけろよほんと?
本当って言葉はほんと本当にほんと大事なほんと言葉だほんと。
ほんと、ずっとほんと使ってるとほんと軽くなっちまうだろ?
ほんと。
本当に大事なところで使えなくなっちゃうからほんとな。
A:な?
B:え、ほんと嘘だろ?…あ、ほんとだ。
ほんとってほんと使ってるよほんと。
あ、ほんと。え、俺もほんとって使って…
─── 終演 ───