ラピシャスの庭園(書きかけ供養)


「よし、!」
 家事も済ませたし、趣味の筋トレでもやろうかな。
 と、思いダンベルを持ち上げたその時だった――……。
「ん?」
魔法陣が突如出てきた。見間違いだと思い、目をこすったが、見間違いなんてものではなかった。
 そして、魔法陣が白い光を放ち始めた。
 私を包み込み始めた。
 こんな平凡な休日さえも邪魔される。
 なぜだろう。私はごく普通の女子社員だった。
 今日だってようやっともらった休日だった。
 見回りの目を避けて、同期と仕事をし、上司に𠮟られて過ごしていたのに。
 こんな、こんな平凡な日も、よくわからない謎の魔法陣に邪魔された。 じわり、と涙がにじんできた。
が、しかし不意に視界が晴れてきた。
「大丈夫ですか?」
 そして聞こえてくるのは優しげな青年の声。
 目線を上げると私と同じくらいの青年が居た。にこやかな微笑みを浮かべて青年は立っていた。
 彼は、私に手を差し伸べていた。
 私は彼の手を借りて、よいしょ、と立ち上がった。
「はじめまして。私はイチ。お嬢さんといる世界とは違う世界に住む住人です。突然ですが、あなたに頼みたいことがあるんです!」
 私は目を剝いた。あゝ、これから私はどうなるのだろうか。
にこやかと告げたイチさんはとても晴れやかなものだった。
 どんな依頼なのか…と固唾をのんで、次の言葉を待っていると、イチさんは言った。
「ああ!大変!大切なお客様にお茶も出さないなんて!すみません、もう少し待っていてください!」
「え?あ、はい……」。
 私は近くにあった椅子へ腰をおろした。
 ことり、と紅茶が置かれた。
 そっと、口に含むと不思議な味がした。
 恐らくなにかフルーツを茶葉にしたものだろう。
 とても美味しかった。
「それ、美味しいでしょう。プリュの実から作った茶葉なんですよ」。
 今までにこやかに接していたイチさんの瞳が開いた。
 夜空のような、綺麗な瞳だった。
 「却説、依頼ですが、とあるバケモノをもとの世界へ返してほしいのです。バケモノが最近なぜか増えてしまって……」
 イチさんは困ったように眉をハの字にした。
 イチさんは続けた。
「バケモノは鏡を通してこちらの世界にやってきます。なので、返すときも鏡を通じて返せばいいです」。
 イチさんは椅子から立ち、大きな姿見の前に行った。
 「これは私が保護したバケモノです。これを鏡に押し付けると――」
 バケモノは、白い光に包まれ、みるみるうちに小さくなっていった。
「このように、姿が小さくなるので、どのサイズでも大丈夫です」。
 にっこり、という文字が付きそうな笑みを浮かべてイチさんが言った。
 不意に、ドタドタ……と騒がしい足音がした。
 その途端、イチさんの顔が、般若のような顔になった。
 ――ちなみに、イチさんのこの顔を見たのは、この時だけだった。
 そして、ドンガラガッシャーン!という音とともに、イチさんの執務室(らしい)の扉が壊れた。
 現れたのは、銀髪の少年だった。
「イチ!お・ま・えな〜〜〜〜〜…!」と彼は、青筋を立てながら、イチさんを指差して、わなわなと震えていた。
 イチさんはそんな彼をモノともせず言った。
 「あゝ、やはりあなたでしたか。相変わらずお元気なようで。それよりもあなたのその単細胞な行動のせいで扉がまた壊れてしまいました。そろそろ改善されてはいかがですか?」
ニコニコと、ネットで、『暗黒微笑』と称されるような笑みを浮かべながら。
 銀髪の少年は、顔を真っ赤にしながら言った。
「上等だ…。やってやるぞ……!」
 銀髪の少年は、つえを取り出して言った。
 「水よ、我が的に衝撃を!ウォーターボール!」
 すると、つえから水が出てきて、数秒後には水の球になっていた。
「魔法での勝負ですか。いいですね。では、こちらも。」
 イチさんもつえを取り出して、言った。
「浄火せし火炎の精霊よ。過ぎ行く大地を紅く染め、飲み込むモノを永久の地獄に誘え。ヴァラズビューラ!」
 すると、イチさんの持つつえから溶岩流が出てきて、彼を飲み込む――否、飲み込もうとした。
 彼は、いつの間に作ったのか、水の盾のようなもので身を守っていた。
 彼は、強気な笑顔を浮かべて言った。
「手前なら、その魔法を使うだろうな。なんたって得意魔法だもんな」
 ニヤリと彼が笑った。
 どうしよう、このままでは部屋が壊れてしまう…が、私には止める力がない…、どうしようかと思慮していたときだった。
 慌てたような足音が聞こえて、女の子が入ってきた。
 いかにも、「魔法使いです!」みたいな格好をした少女が。
「イチさん!ニさん!いい加減、執務室での戦闘はやめてください〜〜〜!本部が壊れちゃいます!」
 眉をハの字にして、困ったように言っていた。
 なんだか小動物のようで可愛らしかった。
 イチさんは、ハッとしたかのように、私に二人を紹介してくれた。
「あゝ、忘れていました。こちらの暑苦しい単細胞はニです。まぁ、単細胞とでも呼んでやってください」
 ニさんは、イチさんの紹介に対して「おい」とツッコミを入れつつ、よろしくな、とあいさつをしてくれた。
「で、この女の子はサンさんです。“さん”が重複してしまってややこしいので、さぁちゃんとかサンとか呼ばれていますね。」
 彼女は、ふにゃりと笑いながら言った。
 「よろしくです〜。さぁちゃんって呼んでください!」
 「あ、そういえば、あなたの名前を聞いていませんでしたね。失礼ですがお尋ねしてもよろしいですか?」
 サンさん…、否、さぁちゃんがそう言ったことで自己紹介を忘れていたことを思い出した。
「私の名前は水野深雪です。もともといた世界では社会人をやっていました……」
 「みゆきと言うのか!よろしくな!」
 ニさんがにこりと笑った。
 さぁちゃんも、ふにゃりとほほ笑み、言った。
「よろしくお願いします」
 軽く、さぁちゃんと握手をした。やっぱりこの子は小動物みたいだな、と思った。
 ――本当にこの世界でよかった、とも少し考えた。
 イチさんは何もしなかった。後ろでにっこりと笑っていた。
 けどなぜかな。怖い、と思ってしまった。
「じゃあ、イチ俺らはみゆきに魔法判定とか諸々の処理をするからそこで待っていてくれ。」とニさんが言った。
「…わかりました。」
 にこりとイチさんがほほ笑んだ。そしていってらっしゃい、と言ってくれた。
「ニさんナイスです!イチさんがいたらあまり話せませんからね…」とさぁちゃんが言った。
「否、造作もないよ。」
 からからとニさんが笑いながら言った。
 何かあるんだろうか、少しだけ怖いと感じながら、二人について行った。
 廊下はとても暗かった。
 「なぁ、みゆき」
「はい、?」
「俺がなぜ扉を壊してまであそこへ行ったか、わかるか?」
 ――というと、態々扉を壊して、あそこへ行ったの…?どうしてそこまで…。
「俺は、イチを止めたいんだ。イチが何を考えているのかは分からねぇ。でも、この儘だと彼奴は、この世界を壊す…」
 ニさんは苦しそうに呟いた。
「私達はそれを止めたいんです。そしてそれをできるのは――みゆきさん、あなただけです。」
 みぃちゃんも、ニさんも私を見ていた。
 でも、私にはどうしても止めることができなさそうで。
 とても困ってしまった。
「……私には、そんな重大なことできないです…。でも、できる限りは…頑張ります、」
 と言った。
「うん、私達も急にこんなの言ってごめんね?じゃ、魔法、一緒に見つけましょうか。」
 にこり、とさぁちゃんが笑った。


今回はここまでです?いかがでしたか?書きかけなので見づらいかもしれません…💦すいません!

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