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労働衛生コンサルタント試験の衛生一般の免除を受けるべきか
医師と労働衛生コンサルタント試験
産業医と労働衛生コンサルタント
この数年、多くの医師が産業医として活躍したいと考えておられる。そして、その場合に、ぜひ取得したいのが労働衛生コンサルタントの資格である。
この資格を取っておけば、産業医の要件を、一生、満たすことができるという「実利」もある。しかし、何よりも労働衛生の分野における最高とされる国家資格を取得することによって得られる社会的な信用の方が大きいだろう。
医師は「衛生一般」が免除される
コンサルタント試験は、筆記試験と口述試験の双方に受かる必要があるが、医師の場合は、一定の研修を受けることにより筆記試験の全免除を受けることができる。
また、筆記試験は、労働衛生法令、労働衛生一般、記述式試験(保健衛生区分の場合は「健康管理」である。)の3科目があるが、医師は筆記試験を受ける場合でも、労働衛生法令のみを受ければよい。すなわち、労働衛生一般と記述式試験は免除が受けられるのである。
本稿では、この免除を受けるべきかどうかについて考察する。
労働衛生一般の免除を受けることは有利か
免除を受ける意味
免除を受けることは必ずしも、試験を合格に向けて有利にするものではない。
というのは、「労働衛生一般」の免除を受けるということは、その科目は合格最低点と評価されるのと同じことだからである。すなわち、コンサルタント試験の場合は、60点と評価されるのと同じことなのだ。
従って、「労働衛生法令」が合格レベルに達していなくても、「労働衛生一般」で高い点数をとれれば合格できる可能性があるのに、「労働衛生一般」の免除を受けていると、合格の可能性はなくなるのである。
過去4年間の試験結果のアンケート
私のサイトで、過去4年間にわたり、労働安全衛生コンサルタント試験のアンケート調査を行っている。WEBサイトの読者の方に、実際に受験したときの各問題にどう答えたかの調査を行ったのである。
解答者数は2021年度には労働衛生法令143名、労働衛生一般51名であったが、2024年度まで年々増加し、2024年には労働衛生法令324名、労働衛生一般108名まで増加した。
なお、アンケート回答をされた方には、インセンティヴとして、当サイトの会員限定ページのIDとパスワードを提供している。会員限定ページには、筆記試験の正答予測と、読者の方から寄せられた口述試験の結果が載っている。回答者は、そのページをご覧になりたい方が多いだろうから、必然的に成績は良い方にバイアスがかかっていると考えるべきである。
その調査結果に基づき、免除を受けることが有利かどうかについて検討を行ってみよう。
労働衛生法令の試験結果
2021年度から2024年度までの回答者の方の、労働衛生法令の得点分布の加重平均は、医師と医師以外の方で次のような得点分布となっている。
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労働衛生法令は、15点満点である。コンサルタント試験の合格基準は原則として60%なので、9点以上が合格となる。
また、各科目の40%が足切りとなるので、5点以下の方は、他の科目がどれほど点数が良くても不合格となる。
6点から8点の方は、労働衛生法令以外の科目免除を受けていれば不合格である。しかし、科目免除を受けていなければ他の科目(労働衛生一般と健康管理)の点数によっては合格している可能性がある。
そして、6点から8点の方の割合はかなり多いのである。
労働衛生一般の得点分布
一方、労働衛生一般の得点分布は次のようになっている。ただし、2021年度のデータはサンプル数が少ないので、こちらは2022年度から2024年度までの3年間の平均をとっている。
サンプル数が少ないので、ややグラフがガタガタしているが、雰囲気は分かって頂けるだろう。
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これを見れば分かるように、医師の方がやや成績は良い。
また、労働衛生法令よりも労働衛生一般の方がかなり成績が良いのである。こちらは30点満点なので、18点以上が合格、11点以下が足切りである。
なお、合格基準の60%は、労働衛生法令の得点と労働衛生一般の得点を単純に足して、45点で除して計算する。
このグラフを見れば明らかだが、ほとんどの方は、合格レベル以上の点数を得点しているのである。
2014年の労働衛生一般の正答状況
2024年の労働衛生一般の、各問の正答率を医師とそれ以外でグラフにしてみると次のようになる。
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なお、これは 2024 年度のグラフであるが、実は、2022年度と2023年度は、医師と医師以外でここまで正答率の差は大きくはない。
ただ、概して医師の方が成績は良いようである。これは、医師の方は、免除を受けられるにもかかわらずあえて免除を受けていないグループなので、一般化はできないかもしれない。
結論(免除を受けるメリットはあるか)
ここまでの情報からは、労働衛生コンサルタント試験においては、労働衛生法令を受験するのであれば、免除は受けない方が良いということになろう。
ただし、試験は個人によって得手不得手があり、各年度の試験問題にもよるだろうから、あくまでも慎重にご判断を頂きたい。
なお、本件の詳細は、次のページのリンク先をご覧頂きたい。
また、過去問の試験問題の解説を含む、コンサルタント試験の応援サイトについては、次のページをご覧頂きたい。