「ずっと物語の中にいたい。ずっと表現し続けたい。 」- ゲスト編 #03 竹内心さん
「わたしと映画祭」ゲスト編 第3弾では、竹内心さんにお越しいただきました。昨年の1月、外山文治監督と石橋夕帆監督を講師に迎えた、映像演技ワークショップに参加して以来、自己表現の探究を続ける様子を直撃しました。
インタビュアーは、石山咲(以下、さき)が務めました。
石橋監督の『左様なら』を劇場で見たときに、監督とお話しする機会があったそう。今回のワークショップに参加したのも、石橋監督のtwitterで、告知を見たのがきっかけだといいます。まずは、ワークショップの様子について話してくれました。
さき 「ワークショップの強烈な印象として残っているのが、初日の自己紹介の直後、『ロミオとジュリエット』の一人芝居だった」と参加者のみなさんからお聞きするのですが。竹内さんにとってあの始まり方はどんな印象でしたか?
竹内さん みんなが気合を入れてきた最初が、ロミジュリの長いやつっていうのはけっこうパンチありましたよね。全員、納得いけるようにできなかったと思うんです。できなかったところを最初に見せることで、この人たちに隠すことないやってなりました。
『ロミオとジュリエット』の一人芝居 ©︎植田陽
さき 竹内さんは、どんな心づもりでワークショップにのぞみましたか?
竹内さん めっちゃ重いかもしれないんですけど、これで納得できなかったらお芝居の活動をやめてもいいくらいに思ってました。ワークショップ開催が1月だっていうのもあって、今年1年どうするのかっていう覚悟を持って参加しました。
さき そうだったんですね。2泊3日を終えて、自分の中で納得はいったのでしょうか?
竹内さん 結果的に納得はできなくて、どちらかというと打ちのめされたなって思うことの方が多かったです。年上の方も多かったし、経験値の問題もあって、全然ダメダメだなって思って。でもそれと同時に、できることはできるし、できないことはできないって気付けたので、始まる前の心境とは変わりました。今までは、逃げようとして、辞めるか辞めないかって考えてた。だから、逃げずに向き合おうって思いました。
さき 「逃げずに向き合おう」と思える原動力になるような、自分の強みも見えてきた、ということでしょうか。
竹内さん 自分はずっと芝居が下手だと思って生きてきて、上手じゃないと見てもらえないと思ってました。でも、上手じゃなくても、人間的な魅力で、やっていくこともでできるんだなって思ったんです。役者としては一人前じゃなくても、落ち込むほど何もないわけじゃないなって気づいて。自分がやってきたこととか、感じてきたこととかを、もうちょっと活かせるんじゃないかなって思えるようになりました。
さき そういう思考の切り替えができたのは、どんな瞬間でしたか?
竹内さん 私は3日間ずっと、「この参加者の中で、自分はモブの一人だ」って思ってたんです。でも、最後、映像作品つくったじゃないですか。私は、外山監督のグループだったんですけど、同じ台本を5組でやってたんですね。それぞれ全部違っても、監督は別に否定もしなかった。「あ、正解とかじゃ本当になくて、演じる人によって変わるのは当たり前なんだな。」「それぞれ輝く瞬間があるんだな」って思った時ですね。今までも、正解はないと何度も言われてきたけど、「いうても正解はあるでしょ」と思ってたので、初めてそれが信じられるようになりました。
ワークショップで自分を認められるようになった竹内さん。「自分はこれっぽちしかないかもしれないけど、そんな自分をまず見てもらいたい」という思いから、映像作品をつくっているといいます。
さき どんな映像作品をつくっているんですか?
竹内さん めちゃめちゃ頭の悪い作品をつくりましたね笑 でも、自分のことは自分がわかってるじゃないですか。自分が思ってる自分で、まだ誰にも見せてないかもしれないものを見せようと思ったら、頭の悪い作品に着地しました笑
さき どんな作品なのか気になります笑 どんな一面を見せようと思ったんですか?
竹内さん 外側から見られる印象として、「クール」とか、「感情の起伏がなさそう」とか言われることが多いので。意外とファニーな面があるということを見てほしくて、コメディー作品をつくってみました。
©︎植田陽
さき ご自身も作り手の立場に立つ竹内さんは、短編映画についてどう考えていますか?
竹内さん 私は短編の方が好きです。簡潔に表す強さっていうのは、やっぱりみていて飽きないものがある。3分にしろ、10分にしろ、飽きるものは飽きるし、見られるものは見られるじゃないですか。短い時間の中で、どれだけつくるかっていうのが、私は好きですね。長いものは、それだけつくるのは大変だけど、なんでも言えちゃう。短いものの方が、受け取り側が考えさせられるし、花火みたいに残ってるって思いますね。
さき なるほど。考えさせられて印象に残っている短編作品はありますか?
竹内さん 橋本根大さんっていう監督がずっと好きなんですけど。監督が映像を学んでた学生時代からご縁があって、当時から監督はたくさん短編をつくっていたんです。『東京少女』っていう作品があって、あれを初めてみた時の、バーンって打たれた感じは忘れられないですね。
さき どんなことを考えさせられたんですか?
竹内さん 東京にいる女の子の一人語りみたいな感じなんですよ。映像と声がリンクして、どんどんパッパッパって進むような作品なんですけど、言葉の言い回しが面白い。橋本監督の作品は、ばーって話して、「え、何?」みたいのが混じってる。そういうところに惹かれますね。
©︎植田陽
人とものと光に囲まれた、情報が過多の東京とは異なり、小布施は最高だった!と振り返る竹内さん。東京では、電車の中の人の会話や、息遣いさえも気になると言います。
さき いろんなことに気がつく性格は、演技にも活かされていると思いますか?
竹内さん 無意識の中で、なるんじゃないかな。TikTokで「あったことないと思うけど、めっちゃ似てる」みたいな物真似してる人がいるけど、あれも無意識に拾ってるからだと思います。
さき 自分と違うキャラクターを演じるときは、日常で見た人を参考にして役づくりするんですか?
竹内さん 最初は、どこまで自分で自分じゃないか、みたいなことを考えるんですけど、まるっきり違う役だと、けっこうアニメのキャラクターも参考にします。
さき アニメも参考にされるんですね!セリフの言い回しとか、随分違うイメージがありますが...
竹内さん セリフの言い回しを真似したらアニメさんになっちゃうんですけど笑 アニメって、声聞いただけで、なんのキャラか分かってくるじゃないですか。それってやっぱり個性が声に出てるからだと思うんで。それに、声の調子で、そのキャラクターがどんな人なのかも表してる。こういう人間なんだっていうイメージがつきやすいから、引っ張りやすいんでしょうね。「女好き、チャラ男」だったら、ワンピースのサンジ、とか。
竹内さんが演技をする理由は2つあると言います。1つ目は、「できないことができるようになりたいから」。そして2つ目が、「ずっと物語の中に入れたらいいのにな、の延長」。
さき 物語の中にずっといたいというのは、ある種現実からの逃避を求めているのでしょうか?
竹内さん 現実じゃない世界に憧れてるのかもしれないですけど。自分だけだと1個の人生しか生きられないけど、役になることでいろんな人生を生きられる。それが楽しいっていう俳優さんやモデルさんがいますけど、それがやっぱり醍醐味かなって。もちろんその別の人生が辛くて、なんでこんなこと考えなきゃいけないんだろうって思う時もあるけど。
さき どんな物語に中に「ずっといたい」と思いますか?
竹内さん ちょいSF笑 現実世界なのに、特殊能力とか。ハリーポッターとか大好き!大人になってから、本当にサンタさんはいないんだな、って確信に変わってくるじゃないですか。それをどっかで、本当は。。。みたいのを信じたいのかな。ずっとちょっと夢を見てたい、みたいなところはあります。
©︎植田陽
さき そんな竹内さんの夢はありますか?
竹内さん 1つは、普通に結婚して、子ども産んで、お母さんとして生きてみたい。めちゃめちゃ現実的ですけど。でも、その反対側では、ずっと表現してたい。「こういうのあったら面白くない?」っていうのをずっと追ってたいですね。
さき 表現の形が様々ある中で、演技ならではの魅力とはなんでしょうか?
竹内さん 自分とか、他の人の感情とか、心の動きっていうものに気付けること。例えば誰かが「またね」っていったとしても、どの「またね」だろう?みたいなことを考えます。また会う気のある「またね」なのか、すぐ会えるけど、とりあえずの「またね」なのか、会う気のない「またね」もある。そういうことを考えられるようになります。
竹内さん、ありがとうございました!
都会の喧騒から離れて、「表現する自分」と向き合ってみませんか?
今年の映像演技ワークショップでも、誰かの気づきが生まれますように...!
竹内さんおすすめの短編作品:
『東京少女』 監督: 橋本根大
竹内さんと石橋監督が出会った作品:
『左様なら』監督: 石橋夕帆
竹内心さん プロフィール
1997年2月3日生まれ
女優・モデル
エルビスエンターテイメント所属
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?