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「特別な一本に出会って、もっと映画を好きになってほしい」ー ゲスト編 #07 ミヤザキタケルさん

こんにちは、小布施短編映画祭広報です!

「わたしと映画祭」ゲスト編第7弾では、ゲスト審査員のミヤザキタケルさんにお話を伺いました。今年から小布施短編映画祭に関わってくださっているミヤザキさんは、ご自身も長野県出身。「映画アドバイザー」という職業、学生時代、そして映画祭への意気込みを伺いました。

インタビュアーは、実行委員のきろとみほが務めました。

ミヤザキタケル
1986年、長野県長野市出身。
2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSO映画館での連載のほか、渋谷クロスFM・映画board・シネマズプラス・文春オンラインなどで映画を紹介。各種web・雑誌への寄稿、イベント登壇・司会、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」、映画のカメオ出演(『劇場』『窮鼠はチーズの夢を見る』etc…)など幅広く活動中。


「映画アドバイザー」という職業

きろ どうして今の「映画アドバイザー」という道を選ばれたのでしょうか?

ミヤザキさん 元々は俳優を目指していて、高校卒業後に長野の青木島から上京してきました。でも、中々芽が出ず、俳優をやめて脚本学校に通ったりもしていたのですが、29歳の時に祖父の葬式で久々に家族全員が集まる機会があったんです。その時に泣いている親の姿を見たら、ちゃんと親孝行しないといけないなと思って。丁度その頃、SNSに軽い気持ちで上げていた映画の評論のようなものが意外に反応良くて、「もしかしたらこの道でやっていけるかもしれない」と思ったんです。曲がりなりにも俳優をかじってきたこと、脚本の勉強をしてきたこと、何より、映画を人より多く観てきたことが自分の武器になるなと。そう考えて今の道を選びました。映画アドバイザーとして活動するにあたっては、まだ映画の素晴らしさに目覚めていない人に映画を好きになって貰うキッカケを作ることであったり、誰にでも伝わる言葉で届けようということを心掛けています。やれ撮影技法が○○だとか、あの作品のオマージュだとか言われでも、その時点でわからない人は心のシャッターを降ろしちゃうと思うんです。なので、極力専門用語とかは使わず、誰にでも興味を持って貰えるように映画を届けることを意識しています。

きろ 映画アドバイザーという橋渡しの役割は、「観客と作り手がつながること」を目指している映画祭と共通していますよね!映画アドバイザーとして、何を目指しているんでしょうか?

ミヤザキさん 「特別な一本に出会って、映画をもっと好きになってほしい」という気持ちがあります。半分自分のエゴというか、押し付けのような部分もあるのですが、本当に良い作品に出会えると、視野や価値観が広がるし、他人事を自分事のように捉えられる力も身に付く。自らの実人生に大きな影響をもたらしてくれると思うんです。俗にいう「映画体験」というものが、それに当たるのかなと思っています。でも、いつの頃からか、紛い物というか、金稼ぎのためのしょうもない映画が大量に混じっているから、そういった一本には中々出会いにくい。そもそも映画館に行かない人の方が多いですよね。だからこそ、僕は忖度をしませんし、心から推せる作品しか紹介してしません。そんな融通の利かないスタンスでいるから、仕事の依頼や幅が限られてきちゃうんですけどね。(笑)

みほ でも、ミヤザキさんに推してもらえた時には作り手の人たちはきっととても嬉しいですよね!ミヤザキさんがオススメする映画の共通点はあるのでしょうか?

ミヤザキさん シンプルに面白いに越したことはないですけど、仮に荒削りだったとしても、突出して響く何かが宿っていれば、それは良い作品だと思っています。莫大なお金がかかっていても、技術的な面がどんなに優れていたとしても、観ている人の心に響くとは限らないですよね。ジャンル問わず、人間ドラマだとしてもコメディーだとしても、良い作品には胸が震えるものが何かしら宿っているはずです。本物だな、本気だなと感じさせてくれる作品を、届けていきたいです。


ミヤザキさんインタビュー2

ミヤザキタケルの原点

みほ ミヤザキさん自身が「映画好き」になったきっかけは何だったんですか?

ミヤザキさん 中2の時、4歳上の兄に『鮫肌男と桃尻女』『バスケットボール・ダイアリーズ』を勧められたことが大きかったです。長野で公開される作品は限られていたので、それまで観てきた大衆向けの映画と違った世界観に衝撃を受けたのを覚えています。映画の世界はこんなにも幅広く、奥深いものであることを知りました。

みほ ミニシアター系の映画って「こんなことを映像にしていいのか」って思いますよね。今ほど規制がなかったからかもしれないですけど。

きろ 映画はどのくらい見ていましたか?

ミヤザキさん 学生の頃はレンタルショップでバイトしていたこともあり、長野の田舎に住む高校生にしては、観ていた方だと思います。ビジュアルに惹かれてポール・トーマス・アンダーソンの『パンチドランク・ラブ』を奇跡的にレンタルしていたり、授業をサボって『8 Mile』を観に行ったのも良い思い出です。今はお仕事としてマスコミ向けの試写に呼んで頂く機会が多いのですが、それも含めれば年間に新作を劇場で300本以上は観ています。

きろ ミヤザキさんにとっての「特別な1本」はあるのでしょうか?

ミヤザキさん そうですね…。その質問よく聞かれるから毎回悩んでしまうんですけど(笑)、一番好きな作品って難しいなと思っています。現時点では1位だと思っているけど、明日には変わるかもしれない。それに、昔観て微妙だなと思っていた作品が、何年も経ってから見返してみたら響いたりすることもあるじゃないですか。でも、今即答できないということは、自分はまだ本当の一本に出会えていないのかもしれないです。それを探し求めているから、今も新しい映画を見続けているのかもしれません。


きろ まだまだ今後の映画業界に期待しているということでもありますね。

ミヤザキさんインタビュー1

映画祭について思うこと

きろ 今の日本の映画祭についてどう考えていますか?


ミヤザキさん 結局、シネフィルと呼ばれるような映画好きな人たちにしか届いていないと感じています。僕も昔から映画はたくさん観てきましたけど、映画祭まで足を及ぶことはしていませんでした。大して映画に興味のない日本人にとっては、映画祭というものがそもそも無縁というか他人事。そんな中、小布施短編映画祭は、小布施という小さなエリアかもしれないですけど、周囲の人たちを巻き込んで、地域ぐるみの活動に繋げている点が素敵だなと思っています。僕も長野人だから分かるんですけど、近くで開催されていたら興味持つと思いますもん。それから、一般の方たちが審査を務める作品賞があったり、まだ映画に大して興味がない人にも映画の良さを知ってもらうキッカケを生み出そうとしている。地道な作業かもしれないけど、絶対に意味があると思っています。

みほ そう言っていただくのは嬉しいですね。最後に、小布施短編映画祭の審査員としての意気込みを教えてください!

ミヤザキさん 映画祭は、新たな才能が生まれる場所だと思っています。もしかしたら、グランプリを取るか取らないかで人生が変わってくる人もいる。今年の審査会で12作品を拝見させて頂いて、12人の人生がかかっているのだから、こちらも本気で向き合わなければならないなと感じました。だからあの日、審査に4時間近くかかりましたしね。(笑) 他の映画祭とかでも言えることですが、賞を獲ったは良いものの、結局映画では食えないから別の道へ進む人もいる。だからこそ、橋渡しとしての役割だけではなく、新たな才能を確実に世へ届けるという使命も全うしていきたいです。

ミヤザキさん、貴重なお話をありがとうございました!実行委員一同、
観客の皆さんが「特別な一本」に映画祭で出会えることを願っています。


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