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ケース買いが当たり前だったあのころの話

私は子供の頃団地に住んでいた。5階建てエレベーターなしの、アレだ。
我が家はど真ん中の3階だった。
両親が酒飲みで、食事は適当でもいいけど NO BEER NO LIFEな人達だったので、ケース買だった。
当時は量販店なんてないし、コンビニもないし、車も持ってなかったので、ビールを飲みたかったら、徒歩か自転車でビールを買いにゆくか、酒屋さんに配達してもらうかしかない。 しかも、瓶が当たり前の時代なので、徒歩や自転車で買いに行くのはちょっと面倒。それで酒屋さんに頼むことになる。
毎日飲んでいたので、毎週末には酒屋さんのお兄さんが、団地の3階まで運んでくれていた。
今考えると、酒屋さん本当にありがとう、な話なんだけど。

子供である兄と私は便乗してジュース類を頼むことができた。私は甘い炭酸飲料が苦手で、たまにバヤリースオレンジを、兄は炭酸好きでコーラとか、三ツ矢サイダーとか、なにやら頼んでいた。当然だけど、全部瓶入だ。

たしか私が高校生位のときに、突然兄が「ジンジャーエールはないの?ウィルキンソンの。ラベルの色が濃いやつ。薄いのはだめ」とこまかな注文をつけた。
同じブランドのジンジャーエールに違いがあるんだ?というもの驚きだったけど、飲んでみてもっと驚いた。
たしかにこの、ラベルの濃い方のジンジャーエールは美味い!これは大発見だった。
だけど、店で売っているのを見たことがない。どこでどうやって兄はこの
美味いジンジャーエールを知ったのか?答えは割と簡単で、バーなんかには
置いて有ったんだね。

それからは私にとってもこのジンジャーエールは特別になった。この「色の濃いラベルの方のジンジャーエールが美味い」というのを知っている同級生はいなかったから、大学生になって飲酒も解禁になった頃には、ドヤ顔で友人に教えまくった。

あの波打ったようなダークグリーンのボトルデザインもお気に入りだったけど、ラベルの濃淡は本当に微妙。たまに酒屋さんが間違えてラベルの薄い方を混ぜて来ちゃうことがあったけど、味、全然ちがうんだよね。

大人になってから、甘くない味なし炭酸水がとっても身近になって、
20代の頃は気取ってペリエとか飲んでいた。やっぱり基本炭酸は甘くない方が私は好きだ。夏場は特に1l入の炭酸水は欠かせない。

だけど、

時々「ウィルキンソンの瓶入ジンジャーエール、ラベルの濃い瓶のやつ」に
再会する。
あるときはたまたま入ったイタリアンレストランで。
あるときは輸入食品を沢山売っているお店の片隅で。

そういう時は嬉しくなって、頼んでしまう。買ってしまう。

今度見つけたらまた買おう。
今は父も母も兄も皆居なくなってしまったけど
仏壇に供えた数本のビールの横に
ジンジャーエールを一本こっそり置いて置こう。
兄はこっそり置くのが気に入ってくれるとおもう。

#炭酸が好き

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