ICL(眼内コンタクトレンズ)手術を後追いで受けた自転車乗り兼たまに現場系の人の話
2020年の春、自転車ロングライド業界のTwitterに激震が走りました。大スターにしてスーパーアイドルのふぃりりん殿下がICL手術を受けたnoteを公開したからです。その記事はこちら。
ふぃりりん殿下を見たことをきっかけに、私もICL手術を受けるに至りましたので、合わせて読める記録を残そうかなと思いました。事前情報を見ても、なお戸惑いは多少ありましたので。
ふぃりりん殿下ひな形でまとめるとこんな感じです。
●なんで視力矯正の手術を受けようと思ったか?
⇒2連続で眼鏡作りに失敗。眼鏡の光学的な限界とコンタクトが苦手なのと、ICLの実績が10年経ったから。あと職場で現場予備役みたいなポジションにいて、現場に出るなら24時間待機かつ防毒マスク付けるときは眼鏡NG。現場職の人でレーシックやICLを受けた人は皆成功、自動二輪乗りもいたので、自転車にも影響なさそうと思ったから。
●なんでICL?
⇒角膜の形状ゆえに、レーシックは一切不可能であったから。
●どこで?
⇒品川近視クリニック東京院(有楽町駅至近)。扱い症例が多く、家から近い。ふぃりりん殿下の受診した新宿近視クリニックとは細部で異なりました。
清潔な設備に、幅広い年齢層で男女ともに患者がいるようでした。いかにも見た目に気を使っている方から、いかにも運動してますという方まで。あとは連れの方と日本語以外で話す方や、人種的に東アジアでない方もいましたね。
■まずは適応検査予約
電話予約の冒頭で「適応検査の予約をしたいのですが」と言いました。実はこの時点で、「手術を受ける」又は「検査代金数万円を支払いつつ手術回避」の二択を自分に強いることになりました。
少なくとも品川近視クリニックでは、検査代金は手術代金から引かれるため「実質」無料という構図です。手術回避した場合、検査代金を支払わなければならないのです。2-3時間かけ数万円の検査をしたことは、クリニックでの最終決断の際、私の背中を強力にプッシュしました。
※ちなみに「とりあえず手術可能かどうかの検査だけでも」という場合、簡易検査の予約を取ることが可能だったようです。覚えたての言葉を軽率に使ってはいけませんね。
品川近視クリニックではICL前検査は1回目と2回目に分割されています。それぞれ2-3時間かかりますが、同日に行うことも可能です。私は午後の早い時間に検査を始めたので、ICL決断後、そのまま2回目検査を実施できました。
ICL前検査では、瞳孔を開く目薬を使用します。これが厄介で、数時間は眩しさと視界のぼやけに悩むことになります。検査の疲れもあり、検査終了後は直帰及び早寝でした。有楽町なら交通会館で北海道のソフトクリームでも食べるかあ、なんて思って予約した頃の能天気さは彼方へと吹き飛んでいます。
■検査結果――適合検査ガチャSR――
私の場合、角膜の厚さが不均一、それ以外は異常なし。結果、レーシック不可、ICLは可能でした。年齢はアラサーですので、20代から50歳くらいまでという制限もクリア。
ちなみに、手術全てNGな遺伝子不適合の確率は、0.1%。単発ガチャでSSRを引く確率、というと案外あるように思えます。角膜問題はそれよりは頻度が高いそうなので、SRというところでしょうか。
ICL手術は近視と乱視を矯正できますが、レーシックとの併用も可能です。例えば視力の追加矯正(近視の戻り対策)、最強度近視及び最強度乱視対策でレーシックを併用する可能性があります。私はレーシック不可ですので、ピュアなICLしかできないということです。
■手術方法の決断
ひとくちにレーシック又はICLと言っても、実は色々とプランがあり、代金も角膜の削り方も全然違うそうです。レーシックだと老眼まで合わせてカバー可能なものもあるようです。相談の結果、私の選んだのは…
「両眼、近視のみ矯正、後房型ホールICL、カタリス手術、レーシックなし」
つまり乱視矯正のない最もポピュラーなICLなのですが、手術方法を高精度で術後経過の良い手法(フェムトセカンドレーザーを用いるカタリス手術)にグレードアップしています。具体的又は数字でどの程度利益があるという説明はできないうえ、術後の制限事項も変わらないのですが、ドクターが術後の良さを熱く推していたのでお願いすることにしました。
そのお値段、両眼で窓口負担70.7万円(保険外診療)。本来ならカタリスにセットで付いてくるレーシック無料権を削減したため、これでもカタリスICLとしてはだいぶお安くなっております。
ちなみにレーシックもICLも医療費控除の対象になるので、確定申告をすれば節税により負担を軽減できます。金歯だって医療費控除の対象になるのと同じことです。医療費控除の節税金額は、その年の所得が確定しないとわからないため、なんとも言えませんが。
■手術前まで
検査後のレンズ取り寄せに1か月以上かかる、といわれることもあるICL手術ですが、品川近視クリニックが大手だからか、ありふれた近視強度だからか、中3日で届きましたと連絡が。
手術前3日間は、ふぃりりん殿下とほぼ同じでしたが、目薬は1日5回でした。術前3日前から前日までは、目薬を使用、洗顔洗髪可。飲酒と運動は特に制限されませんでしたが自発的にやめました。
手術当日は、洗顔洗髪の最後のチャンスとばかりに朝シャワーを決め、持ち物の確認をして過ごします。ただし、首から上につけるものは化粧水と乳液以外は全部不可、アイホールは化粧水と乳液も不可です。
クリニック到着後はひたすら目薬と目薬浸透待ちの連続であることはふぃりりん殿下と同じです。ただ、品川近視クリニックは割引や金額確定等は全て検査来院時にすませておけるため、手術日会計はスムーズの一言。来院から20分後に手術待合入りのため、荷物はスマホも含め全てロッカーへ。羽織物とマスクと目薬だけ持っていいとのことでした。来院から2時間後に手術室入りでした。
■手術そのもの(ICLカタリスの場合)
手術そのものは30分から40分くらい。指示どおりに、ベッドに寝て、眼の周りを色々固定され、光を見つめる。それくらいです。点眼麻酔で痛みもなく、全ておまかせ。後から考えると、近視を抱えていたことも、手術をしたことも夢のよう。目薬と手術カタログとクレジット履歴が現実であることを思い出させてくれますが。
この写真は、同種のカタリス設備を持つ医療法人社団インフィニティメディカル 近藤眼科本院様がウェブで公開しているものを引用しました。
https://ilasik-official.jp/search_clinic/619/
カタリスICLの場合、メスで眼球に穴を開ける行為が機械化及びレーザー化され、ICL挿入の前に右眼、左眼とも先に処置されます。つまり右眼カタリス→左眼カタリス→右眼ICL挿入→左眼ICL挿入の順。まずはカタリスから。
頭や眼のまわりを固定されたあと、ベッドが派手に回転して大きな機械の下に滑り込みます。動けないので整備手伝いで自動車の下に潜ったときより怖い。暗い中に三次元測定用の赤い光がいくつか見えるのでそれを凝視、小さな光が妙に動いているなあと思うことしばし。その後、ドクターやスタッフ同士が合図をしあい、視界の端を緑の光が走ります。これを両眼1回ずつ計2回。この時点では色々と大掛かりだし、寒いし、とにかく怖かったです。あと手術中にwindowsポップアップウィンドウっぽい効果音が何度かあり、エラーみたいで怖い。(エラーではないそうです)
続いてICL挿入。違うベッドへ移動してまた固定、また片眼ずつ眼の周りを固定されて今度は顕微鏡の下へ。白い光をみつめているうちに、目薬が穏やかにスプレーされ視界が液体でゆらぐようになります。冷たい感触に耐えながら白い光を見ていると、ある時ふっと光や液面のゆらぎの輪郭がはっきりとよく見えるようになりました。まだ幼くて近視に悩んでいなかったころ、海水浴で水中から太陽を見上げた思い出が蘇ります。ああ、私はもう近視に悩まなくていいんだ。その希望で、残っている手術プロセスを乗り切れました。
■手術後制限事項
クリニックで休憩45分、検査と説明15分。当日手術後は1時間ごとに目薬3種類と抗菌剤飲み薬。翌日からは目薬3種類は1日5回に緩和です。
説明のあった制限事項は下記のとおり
1 飲酒は1週間NG
2 たばこは手術日のみNG
3 お化粧は1週間NG
ただし化粧水、乳液及び日焼け止めは3日目以降アイホール以外なら可
まつげエクステは1か月NG
4 入浴、洗髪、洗顔は1週間NG
ただし美容院の仰向け洗髪は翌日から可、肩から下シャワーは手術日も可
顔は濡れタオルで清拭する程度は手術日も可
5 テレビ、読書、PC及びメールは疲れない程度なら手術日から可
6 運転は手術日、翌日、翌々日はNG
7 お仕事は翌日からデスクワークは可。重いものを持つのは1週間NG
8 プール等激しいスポーツは1か月NG
9 1週間は度なし保護メガネを着用、睡眠時は保護用眼帯を着用
手術後検査は翌日、1週間後、1か月後、半年後、1年後、以降1年ごと。どんな検査を行い、どう対処するかは眼の状況次第です。3か月後検査をしない方針なのは新宿と違いますね。
■手術後経過
手術直後は、ふぃりりん殿下や他の方と違い、ドライアイは全く感じませんでした。ただしコンタクトを長時間つけたような頭痛や、瞳孔を開く目薬による眩しさはそれなりに。翌日にはだいぶ軽くなりますが。(8月24日追記:手術後3日目で頭痛はそこまで気にならない程度に大きく軽減しています。)
ハローらしきものは見えています。よく夜間の自動車ヘッドライトが苦手項目に挙げられますが、部屋のライトだろうが、太陽だろうが、光源を直視すると光の輪が見えます。ホールICLはレーシックに比べ、ハロー及びグレアの生じにくい手術手法ではあるのですが、構造上ある程度の光の輪は出現するそうです。(なんとなく、手術前でも暗闇の中の光源ってにじむような気がしていたので、手術でどう影響がでているかわかりません。)
幸い、私の場合は視界の上端に入る程度なら光の輪は発生せず不快ではありません。手術後翌日現在、ハローは少しずつ気にならなくなってきています。ただ夏の陽なたはまだ少し苦手ですね。直射日光を日傘で防いでも、地面が眩しいです。手術前でもサングラスかけていたシチュエーションでは、ありますけれど。今後に期待しつつ、保護メガネが外れたら御徒町のオードビーで自転車とカジュアル兼用の度なし調光サングラス買います。
光学的には、裸眼片眼0.1以下(左眼メガネは-3.75Dで、0.7より少し見える程度)だった視力が、翌日には片眼で1.5安定して見えます。加えて、少しコントラストが上がって景色が彩りよく見えるような気もします。眼鏡のレンズは拭いても案外汚いというべきか、ICL手術の力というべきかは難しいところ。ちなみにICLではコントラスト感度の向上が感じられることがある一方、レーシックではコントラスト感度が低下したように感じられることがあるそうです。
眼鏡は中世から人類の友なのだ、眼鏡こそが安定なのだ、という意見や、ワンデーコンタクトと眼鏡の併用こそ最優という意見も大いにわかりますが、ICLの見え方を体感すると、私はやってよかったと思います。
一生付き合うものですので、手術前に悩み、手術後も悩むとは思います。手術するにせよしないにせよ、人間は生きていれば白内障や緑内障のリスクはあります。職業、恋愛、進路と似たような、あるいは花粉症とも似たような、人生に付き物の悩み。
ほんと人生って悩みが多いから、せめてこの良くなった眼で、絶景でも見たいですね。佐渡のZ坂から見下ろす佐渡ブルーの海岸線とか、夕暮れの佐渡ロングライドゴールとか、初秋の長岡の広々とした水田地帯や山古志の棚田、弥彦山に沈む夕日や、弥彦山から眺める夕日とか。あと糸魚川にも行きたいな。夢のような、新潟県の自転車の旅よ再び。
こんなところで、ひとまずの締めとします。
今後追記していきますが、例によって白目部分に出血があります。
術後2時間程度。
手術翌日起床後。写真がオートでしか撮れなくて恐縮ですが、少し良くなっています。
手術後3日目起床後。さらに良くなり、写真の右側の目は少し充血気味かという見た目まで落ち着いています。(むしろ肌の角栓が目立つな……)
手術1周間経過後。若干充血しているかも?というところまで良くなりました。
■手術後、職場復帰をしてみて
手術後は溜まっていた代休、年次有給休暇の消化に努めたため、1週間のうち勤務したのは1日だけ。その後も休み休みという感じで2週間と少しが経過しました。
2週間経過しても未だに影響はあるとも、未だに改善が続いているとも言えます。視力は安定しているのですが、頭痛や疲労感が軽減するのはまだ続いています。
手術そのものの影響より、休みを増やした影響で出勤日の仕事が増えていることの方が大きい気もします。仕事がある日のGarmin Vivosmartのbody batteryの減り方がすごい(これは概ね前からではある)
自転車乗りや現場稼業予備役としては、1週間ベッドの上で自粛しまくりだったため、筋力も落ちまくっているのが大きいですね。筋力低下というより、自粛グセからの根性低下とも言いますが(思いっきり力をかけると眼圧の関係でまずい)
あとオードビーの度なし調光サングラスの納期が2週間と結構長いのも痛い。とはいえ自動車運転免許の視力回復手続きを勧められるのが1週間後なので、手術翌日とかに決め打てるか、と言えば難しいのですが。
とりあえず当記事はここまで。今後検査で大きな動きがあれば、また記事にします。
■お約束
・私は何ら医療関係の資格を持たない一般人です。ご自身の眼の悩みはご自身で専門の医療機関へご相談ください。
・私はこの記事の執筆にあたり、品川近視クリニックから受けた説明や資料、その他医院がネットで公開している情報を参考にしていますが、医療従事者のチェックは受けていません。また眼の状態は人により異なります。ご自身の眼の悩みはご自身で専門の医療機関へご相談ください。
・この記事は個人的な感想であり、PRではありません。
私はこの記事の執筆にあたり、品川近視クリニックをはじめとしたあらゆる医療機関、医療機器メーカー等の医療関係者からいかなる種類の利益も供与されていません。
またこの記事に記した手術に関連する医療機関や医療機器メーカー等の組織に、親族、友人及び知人が勤務している事実はありません。
・この記事に記した手術に際して、私は品川近視クリニックから丁寧な検査と説明を受け、手術同意書を取り交わしています。